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本を本棚に並べ終える前に

 「持ってきた本を本棚に並べ終えたら、またお会いしましょう」と颯爽と2023年を締めてから、早くも3ヶ月が経ってしまった。本棚はまだ全然片付いていない。本が溢れかえっている。本棚が片付くのを待っていたら2024年の大晦日を迎えてしまいそうだったので、私は意を決してパソコンのワープロソフトを立ち上げたのだった。
 言い訳がましい言い訳をすると、ってそれは純度100%の言い訳なのだけれど、今年の冬は寒かった。何が暖冬だ、朝起きたら部屋の気温が5度になっているじゃないか。と私は腹立たしい思いだった。引越し前は部屋が15度になると寒い寒いと思っていたのに、今では15度あったら「今日はえらく暖かいな」と感じる。あれ、もしかして寒い冬なのではなくて、単純に新居が寒いだけなのではないか。
 メインの本棚が置いてある部屋は和室で、L字型に連なった3部屋、そこにエアコンは1台、しかもLの頂点にある。ここが寒くて、和室なのでスリッパを脱ぐと指先が痛いほど冷たくなる。年末の時点では、よし成人の日の3連休で頑張ろうと意気込んでいた記憶があるのだが、寒さに音を上げてじっくり春が訪れるのを待つ作戦に切り替えた。足の冷えで体を壊してはいけない。引っ越しの疲れもあるだろう。茶の間のコタツでテレビを見るというのは、怠惰なように見えて実は深慮遠謀に満ちた狙いがあるのだった。
 コタツでは手持ち無沙汰なので毎日のように菓子を食べる。スナック菓子、チョコレート菓子、せんべい、グミ。体重は増えるわ、運動不足にはなるわ、春までに体が壊れそうだ。
 何にしてもL字型和室連合が寒いのはたしかで、これはもう暖かくなるのを待つしかないと思ったのだった。実際、2月に急に最高気温が20度ぐらいになったとき、本棚の部屋は快適だった。畳に横になって本を広げるという、まさにこの世の春を謳歌して、このまま春になるのかしらん、ウグイスも鳴いているし、と思ったのも束の間、また寒くなって、3月中旬の風が強い日には雪が降って吹雪になった。そうしてまた茶の間のコタツに攻めの撤退を果たし、テレビのスイッチを入れるのだった。
 テレビは引っ越し前と比べてかなり見るようになった。前はスポーツを除くと3番組ぐらいしか見るものがなかったのが、新居でBSが映ることが分かって3倍ぐらいに増えた。わが人生は現代人には珍しくBSが映る機会にほとんど恵まれない人生だったので、今回の引越しを機にBSショックが訪れている。一週間の番組表を見て、あれも録画、これも録画とするのが楽しい。聞けば引っ越しの直前まではNHKだけで2系統(4K除く)あったというではないか。もう少し1系統にするのを先延ばしにしてほしかった。
 いずれにしても録画の消化が間に合わないから、また今日もコタツに入って録画の消化に勤しむ。あれ、これだと録画の消化に追われて、暖かくなっても茶の間に張り付けになってしまうのではないだろうか。それはいけない。次の3連休には片付け終えよう、と固く誓ってカレンダーを見ると、次の3連休はゴールデンウィーク。暑くてやる気が削がれていたら嫌だなあ。

海を見に行った日は暖かかった

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