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#4 口唇口蓋裂治療記 No.1「口唇口蓋裂と共に19年」

はじめに

今回からシリーズ編です。
Twitter(現X)でも少し触れていましたが,私自身「口唇口蓋裂症」という病気と共に今日まで生きてきました。今日までに6度の手術を経験し,その経験というのは人生の中でも限りなく大きいものであると考えています。今回から数編にわたって,私が今まで行ってきた治療や得た経験についてを,時系列順に並べてお伝えします。

今回は,口唇口蓋裂そのものについて,並びに私自身に出現していた症状についてを,次回は,主に幼児期に行った2回の手術についてお伝えする予定です(#5)。

口唇口蓋裂症とは

この病気はその名の通り,唇と口蓋(口腔内の天井の部分)が裂けた状態(厳密には,子宮内で本来癒合すべき部分が癒合せずにそのままの状態)で生まれてくるものです。日本においては,概ね500〜600人に1人の割合(パーセンテージではおよそ0.2%)で出現する,先天性の症例としてはそこまで珍しい部類のものではありません。「大体学校に1人はこの病気を持って生まれてきた人がいる」くらいの感覚です。同類の症例に「口唇裂症」「口蓋裂症」があります。「口唇口蓋裂症」はそれら2つの単独症の合併症と言えるでしょう。
さらに,口唇口蓋裂をもつ方の中には,割合としてはおよそ3〜5人に1人,20〜30%の確率で,合併症として手指に異常が発生したり,心臓をはじめとする臓器類に異常が生じることもあります。私の場合は,それら他の症例はなく,口唇口蓋裂のみの単独症例でした。

主な症状(私の経験談より)

まず,口唇裂により見た目上の問題が発生します。私は口唇口蓋裂の中でも「右側完全口唇口蓋裂」という部類に入りますので,右側の唇が裂けていました。その裂は鼻の中にまで達し,生まれてから1度目の手術(3ヵ月)までは右の鼻の穴はなく,口腔内と一体化していました(この影響により,ほぼ完治した今でも極めて僅かに鼻に紆曲しています(外見上はほとんど分かりませんが))。唇の形が通常と異なることで,哺乳や発音,摂食に問題が生じるため,幼い頃には言語を正しい発音で習得するための訓練等を行っていました。
また,口蓋裂により上顎裂(上顎骨の欠損)が生じ,歯が正常な位置に生えないなどの問題が発生します。また,上顎の成長が鈍くなり,いわゆる上顎よりも下顎が大きい「受け口」の状態になります。詳しいことは次回以降にお伝えしますが,特に私は口蓋裂に関連した症状が大きく出現したため,治療はかなり大変でした。
さらには,口腔内と鼻腔内が交通した状態となるため,中耳炎などの耳に関わる症例を引き起こすことや,軟口蓋の動きが鈍くなることにより生じる「鼻咽腔閉鎖機能不全症」が出現することもあります。私の場合は,ごく軽微ながらも中耳炎・鼻咽腔閉鎖機能不全症が共に出現していました(後者に関しては,現在でも0.1%くらい症状が出ています)。

(次回予告)

次回より,私自身が受けてきた手術,治療について数編に分けてお伝えする予定です。次回は,1度目(3ヶ月時),2度目(1歳6ヶ月時)の手術についてをメインにお伝えしますが,私自身この頃の記憶は当然ですがほとんどありませんので,内容の充実性に欠ける可能性があることをご容赦ください。
#5(11/12更新)

今回の最後に

口唇口蓋裂症は前述の通り,比較的高い確率で発生する症例です。多くの症状が発生し,中には合併症も生じることがあります。そして,かなり長い期間を治療に要しますが,治療を重ねることで,基本的には「治る病気」,それが口唇口蓋裂です。
ですが,口唇口蓋裂に関する体験記や治療記というのは,インターネット上にはそこまで数がないように思います。そこで,少しでも同じような悩みを持っておられる方の助けに,それらの方に届くことを願って,今回のシリーズを執筆しようと考えました。

次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。


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