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インターネット芸人の極意①。「どれだけ他人にあげても数が減らないもの」をたくさん配ろう。


つい先日、「完全自殺マニュアル」著者の鶴見済と話をした。毎度お世話になっているSPA!系の取材だったのだが、あらためて「これは、やはり大切なことかもしれない」と感じさせられるものが多くあった。


ぼく個人の思想として、というよりも、覆し得ない事実として、「だれでも強く望めば、必ず望んだ姿になれる」などとは到底、主張できないなろう系は多くの人間を強く惹きつけるが、幼きころにロックマンエグゼ4から学んだ、「ダークチップはいちど使えば引き返せない」をベンチマークに、意識的に手を出さないよう気をつけている。大きな魅力には、大きな代償がともなう。

ただ、言えることはある。望んだ姿になることはできなくとも、望まない姿になることから逃れることは多少なりとも可能であるはずだ。ひとつの解だけを正解とする問いよりも、ひとつの解だけを不正解とする問いのほうが、ずっと笑顔の数は多い。はずである。

そこで、今回は「望まない姿になることから逃れるために、僕たちが出来ること」を、「インターネット芸人の極意」と称して、書いてみる。そして、これから連載していくぞ、という気概を称したのが①という表記である。あくまで気概を称しているだけなので、連載するかは定かではない。そもそも②は思い付かないかもしれないし、11個目を思い付いたときに「オシャレぶって1を丸で囲むんじゃなかった」と頭を抱えているかもしれない。タイトルだけで「あたかも続いてくかのように悟らせる」のも、ひとつのインターネット芸人テクニックである(?)。

さて、さっそく本題に移っていく。序文でも触れたが、先日に鶴見さんと話をする機会があった。鶴見さんは、なんと現在55歳。インターネット芸人界でいえば、おそらく最高齢レベルの長老的シンボルである。

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そんな鶴見さんは、実際に「0円」をテーマにさまざまな活動を続けているようだ。そこにかけてきた時間というのは、なによりも説得力がある。

そんな鶴見さんの活動は、なにか外から見ていると強い思想を感じる。不必要にお金を介さず、大社会から距離をとって生きることで目の前の小社会から安息を手に入れる、というような思想である。どこか共鳴するところがある。


やはりそういった思想に基づく活動を長く(とにかく鶴見さんは長く)続けていると、まわりにも「そういった思想のひと」が集まってくる。いわば、あいまいな人類群だ。彼らもまた、それぞれの形で「あいまい」に生きている。

そのなかで顕著な動きとして面白いのは、「マッチング」である。世の中で行われているマッチングで、「あいまいでないもの」を例にあげるなら、それはキャッシュだろう。キャッシュのために働き、手に入れたキャッシュで欲しいものを手に入れる。「あいまいでない」世界は、キャッシュは誰しもが欲しいというものだという前提でまわる。常にキャッシュを介すマッチングである。

だが、「あいまい」な世界では、マッチングはより直接的に行われる。彼らは「あいまい」なので、残念ながらキャッシュとは相性が悪い。そんな「キャッシュと相性が悪い人たち」が集まると、なにが始まるのか。余り物の贈与大会がはじまる。

まずは、じぶんには不要なものを与える。余らせてしまってはすぐに腐ってしまう類の食料であったり、到底いまの体型では着ることができなくなってしまった服。趣味ではじめたがすぐに飽きてしまい使わなくなったゴルフセット。とにかく、そういった「じぶんが持っていても価値がないもの」を、少しでも「それが欲しい」という人のもとに渡す。ここで受け取るのは、「あいまい」な世界におけるキャッシュ、「徳」である。

「徳」というと、なんとなく宗教くさいというか、説教くさいと感じる人も多いかもしれない。が、これは非常に合理的な概念である。なにが合理的なのか分かりやすくするために言い換えるなら、相手に「一生涯、返済不可能な借金を一方的に貸す」ことができるのだ。

どれだけ持ち主にとっては価値がないものでも、それに価値を感じるひとに「タダであげる」ことで、受け手は「ありがてえなあ〜」をする。じぶんはなにも対価を渡していないのに、この人はじぶんに与えてくれた。いつか、じぶんもこの人に同じことをしなくては。大多数の人間にこう考えさせるのが「徳」の力である。

さて、そんな強大な力を持つ「徳」をさらに効率的に稼ぐ方法について考える。これが今回の主題である。つまり、今回の目的は「徳を積むこと」で、それを「どうすれば最高効率でおこなうことができるのか」について書いていくことになる。

さっそく答えから書いてしまう。インターネット芸人の極意①は、「いくらプレゼントしても減らないものをあげまくって、無限の徳に"換金"する」ことだ。

「徳」とは、あいまいなマッチングを完了させたときに断末魔的に現れるものであるわけだが、マッチングにおいて「減らないもの」を提供することで、無限にマッチングを完了させられる、つまり、「徳」が無限に積めるという結果になる。

ひとつ前には「いらなくなったものをあげる」ことについて書いたが、今回の話はそれとは性質的に異なる。あまりピンと来ていない人のために、いくつか例をあげていく。


・自宅

家にだれかを泊める。毎日だれかを泊めても家は減らない。ただ使っていない、ちょっとした空間で他人に寝てもらうだけである。実際に鶴見さんの界隈では頻繁に行われているようだ。お金を取ってしまうと民泊になってしまうので、許可がなければ厳密にはNGだが、0円で「人間関係」「面白い話」「徳」を稼ぐことは許される。稼いだ「徳」は確定申告の必要もない。非課税であり、規制も不可能。ある日、じぶんが泊めた人がいつか露頭に迷ったときにはじぶんを泊めてくれるかもしれない。

・持ちネタ

面白いエピソードを話す。特技をみせる。これは間違いなく減らない。インターネット芸人が行なっているのは、これ。多くの人は知らないが、面白いはなし。多くの人には語れないが、その人間には語れること。例えば、ぼくが語っても薄っぺらいが、鶴見さんが語るからこそ重みを持つ主張もある。そして、これらは減らないうえに、自動的に伝搬していく。ツイッターにいちど書くだけで、YouTubeでいちど話すだけで、どんどん「徳」が自動的に積まれていく。また、上記の「家」を与えてくれる人とマッチングがしやすくもなる。興味を持たれることで、すべてのマッチングにおいてのファストパスを手に入れることができる。これは「面白い話を仕入れる」とセットの概念なので、そこから設計すると、カンタンに「徳長者」になれる。

・無限に手に入るもの

これは「減らない」というよりも、「減らないように見える」ものだ。例えば、飲食店をやっていると、「残飯」は無限に出てくる。プロ奢ラレヤーをやっていると、「奢りにきた人の話」が無限に出てくる。なにかをやっていると、常に出てきてしまう廃棄物。それをただ捨てるのではなく、価値にしてプレゼントする。その人が特殊なことをやっていればいるだけ「特殊な余り物」が無限に出てくることになり、それにおおかた比例して「徳」を積むことができる。

だいたいイメージができただろうか。インターネット芸人とは、つまるところ「お金をもらう代わりに、徳を積む人たち」と言える。もちろん、インターネット芸人として成熟すると、徳から溢れたお金も入ってくるのだが、これは本質的ではない。金銭的に報酬はあくまでオマケであり、「YouTuberになってお金稼ぎたい!」的な思想とは一線をかす。本質的に価値があるのは、「多くの人間に対して、たくさんの徳を積み続けている」という事実である。


ここまでで大方は話が終わった。ここから先は、オマケというか、番外編というか、ちょいオフレコというか、あまり言いたくない話というか、そんなことを少し書いておく。あと、めちゃくちゃ実用的で、だれでもすぐに実行できる素晴らしいアイデアも書いておく。

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