祐川尚素

介護事業経営のコンサルタントです(1998年~) シナジーワーク・プランニングセンター…

祐川尚素

介護事業経営のコンサルタントです(1998年~) シナジーワーク・プランニングセンター代表取締役 http://www.synergy-work.co.jp/

マガジン

  • 介護事業経営コンサルタントの介護雑記

    介護事業経営コンサルタントを25年超やっておりますが、自分が入りたいと思う施設は本当に少ないです。施設の職員に聞いても自分の働いている施設に将来入りたいと答える職員はほとんどいないでしょう。  より善い介護施設を「如何に創るか」という課題に取り組む前に、日本の劣悪な介護施設の現状を分析し、その原因を構造的に把握することが先決問題だと思います。  介護施設の悲惨な現状の背景、原因等を構造的に把握するということは、マキャヴェリ の名言、「天国へ行く最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである。」に通じることだと思っています。

  • 介護施設について考える

    自分の両親、親族がお世話になっている介護施設。いつかは、自分もお世話になるかも知れない介護施設。  超高齢化社会に生きる者にとって、介護施設について考えておくことは大切なことだと思います。

  • 虐待論ー高齢者介護施設におけるー

    高齢者介護施設において何故虐待が起こるのでしょうか?  虐待は職員の教育不足の結果なのか、それとも、職員の倫理観の欠如によるものなのか?  abuse/虐待の概念整理、虐待の構造的理解、背景理解が必要と思われます。

  • 徒然なるままに

    文字通り、徒然なるままに書いたものです。

  • 外国人労働が提起すること

    日本の少子高齢化、人口減少により生産年老人口が激減している中で、外国人労働者に期待がかけられています。この外国人労働者を通して世界の日本の立ち位置、日本の課題が透けて見えてくるのではないでしょうか?

最近の記事

介護施設のバザールとクラブ 介護施設の課題Ⅴ

 介護施設には障がい老人たちと介護職員等の職員たちがおります。  この施設空間で織りなされる人間関係、社会関係がどのようになっているのか興味のあるところです。 1.「公-私」/「バザール‐クラブ」の区別(1)入居者にとっての施設空間   入居者にとって、介護施設は基本的には共同生活の場です。  この共同生活空間はある意味、かしこまった公的な空間ですが、この公的空間だけでは入居者は息苦しくなってしまうのではないでしょうか。  介護施設での私的な空間は個室が考えられますが、

    • 実録ルポ「介護の裏」

         甚野博則(ノンフィクションライター)さんの『実録ルポ介護の裏』(2024.05.17 文春新書)を一部抜粋した記事がYAHOOニュースに掲載されています。 1.虐待のあれこれ 東村山の首都圏で最大級の規模(156室)を誇るサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)での虐待事案を中心に介護施設での虐待の実態を紹介しています。  上記のサ高住では施設長の指示の下で虐待があったといいます。  記事で紹介されている虐待は次のようなものです。 夜間、部屋から出られないようにド

      • 虐待の責任は?  虐待論Ⅴ-4

        1.構造としての虐待 abuse/虐待は、虐待した職員の道徳観の欠如や易怒性などの性格の問題や専門性の欠如等の個人的な要因によって起因するものではなく、もっと複雑かつ構造的な要因で発生するのだと思います。  例えば、介護における関係の非対称性(権力性、抑圧性、暴力性)、パノプティコン的権力、パターナリズム、職場で語られるボキャブラリーや言葉遣いなどの言語環境、文化的環境、エビデンス重視の科学的思考(対象化・客体化・数値化)、業務日課至上主義にみられる効率化信仰、組織の閉鎖

        • 虐待は個人的問題か?構造問題か?

           毎日新聞の気になった記事です。  介護現場での虐待の背景や原因、そして防止方法についての記事です。  毎日新聞政治プレミアの取材に林和歌子(城西国際大学福祉総合学部教授)さんが応じたといいます。  ようするに、虐待に至る因果関係は次のような図式になるということでしょう。 人材不足 → 仕事量増大 → 過労・ストレス増大 → 自らのコントロールを失う → 虐待  上記の因果関係にさらに、教育不足が強調されています。  人手不足の結果として技術や知識不足となるとのことで

        介護施設のバザールとクラブ 介護施設の課題Ⅴ

        マガジン

        • 介護施設について考える
          15本
        • 介護事業経営コンサルタントの介護雑記
          48本
        • 徒然なるままに
          28本
        • 虐待論ー高齢者介護施設におけるー
          17本
        • 外国人労働が提起すること
          17本
        • 介護サービスの品質とは?
          3本

        記事

          マッチョな親爺の作法

           珍しくNHKの朝ドラを見ています。今回の朝ドラは面白いです。  『虎に翼』はマッチョな大日本帝国の日本男子の価値観を垣間見ることができますが、その価値観が復権しつつあるような気もして怖くなります。  でも、女性差別は日本だけではなく世界的な問題ですよね。  有料記事なので・・・全部は読めませんが・・・この記事は面白そうですね。  マッチョな親爺を考える際のキーワードが色々とあるようです。  なんか、自分のことを言われているようですが・・・「ある、ある」ですね。 (1)

          マッチョな親爺の作法

          日本は優しいか?

           去年、2023年6月に成立した出入国管理及び難民認定法(入管法)で「監理措置制度」や「3回以上難民申請をしている人の強制送還」「制止等の措置」が導入されました。  そして今年の入管法改正では「永住権の取消」が国会で審議され可決されようとしています。  安田菜津紀さんの『入管法はどう変わるのか(高橋済さんインタビュー)』を是非ご一読いただきたいと思います。    6月10日から施行される改正入管法には要注意です。  「制止等の措置」(改定入管法55条51Ⅱ)では、たとえ

          日本は優しいか?

          尊厳の喪失は見える!ー介護施設サービスの品質3

          1.見える「非‐人間化」(1)人間は見た目に弱い  ナチスのホロコーストではユダヤ人は抑留所からアウシュヴィッツに汽車で連行される際に、家畜用の貨物列車数両に男女がすし詰め状態で詰め込まれ、4日間に渡る旅で人々は糞尿にまみれ、汚れていったと言います。  ナチスは意図的にユダヤ人を糞尿まみれにしたのだと思います。糞尿にまみれた者は人間扱いされなくなります。  糞尿にまみれた者たちは、見た目から、もはや「非‐人間化」してしまっているので尊厳も人権も蔑ろにされていくのです。  

          尊厳の喪失は見える!ー介護施設サービスの品質3

          虐待防止教育について-虐待論Ⅴ-3

          1.虐待防止対策のあれこれ 虐待事件が発生した場合、その事件を受けて多くの介護施設が虐待防止対策を改めて講ずる、表明することになることでしょう。その際に虐待防止対策として挙げられるのは、おおよそ以下のようなことではないでしょうか? ① 職員に対して虐待防止教育を徹底する。 ② 職員間の円滑なコミュニケーション環境の醸成(風通しの良い組織) ③ 監視カメラを設置し、虐待防止抑止力を高める  ③の虐待防止のために監視カメラやモニターを設置するのは、言ってみれば取敢えず、劇薬

          虐待防止教育について-虐待論Ⅴ-3

          人権教育で虐待は防げるのか 虐待論Ⅴ-2

           abuse/虐待を考えるとき朱喜哲(哲学者)さんの哲学はとても参考になります。  朱喜哲さんの次の著作を基にabuse/虐待をいかに防止するのかについて考えてみたいと思います。  『<公 正>を乗りこなす』太郎次郎社エディタス  『偶然性・アイロニー・連帯』100分de名著  『人類の会話のための哲学』よはく舎 1.人権教育 介護の教科書によく「人間の尊厳を守る」とか「人権を尊重する」とか書かれております。  また、よく虐待の原因は教育不足だとも言われます。虐待事件が発覚

          人権教育で虐待は防げるのか 虐待論Ⅴ-2

          人間の尊厳と介護 -虐待論Ⅴ‐1

          1.尊厳は価値を超越する  介護の世界でよく言われる「人間の尊厳」について、「そんなの当たり前」と思考停止せずに、一度立止まって、じっくりと考えてみることも大切だと思います。  人間の尊厳について考えるとき、よくイマヌエル・カント(Immanuel Kant:ドイツの哲学者)[1]の目的の定式が参考になると言われます。この定式は次のようなものです。  カントは、人間が互いの人格を目的として尊重しあう社会を理想として、それを「目的の王国」 と呼んだといいます。  「

          人間の尊厳と介護 -虐待論Ⅴ‐1

          介護の資格は介護品質を保証できるか?-介護施設サービスの品質 2

           念のため、最初に言っておきますが、私は資格は無駄だとか、不要だとか言っているのではありません。 1.資格よりも相互関係が大切 介護職員が自信をもつため、また社会的に認められるためには介護に係る有資格者となることが一つの条件かも知れません。たぶん、資格なしにはなかなか自信を持てないし、社会的評価も得られないかもしれません。  介護に係る基礎的な資格には介護職員初任者研修修了、介護福祉士実務者研修修了、そして介護福祉士がありますが、なんといっても国家資格である介護福祉士が最も

          介護の資格は介護品質を保証できるか?-介護施設サービスの品質 2

          老人ホームの夜逃げ!? 老人ホームが突然閉鎖され入居者は?

          1.まるで夜逃げ! こんなことって、あるのでしょうか?  兵庫県尼崎市の有料老人ホーム(住宅型らしい)が倒産し、入居者にも家族にも何も説明せずに、突然、入居者を他の施設に転居させたといいます。入居者は、着の身着のままで、ほとんどの荷物は老人ホームに残ったままだったといいます。  この施設の入居者(23名)を他の施設(6~7施設)が緊急避難的を受け入れたとのことです。  ビジネスとして有料老人ホームを経営するということは、儲けるためですが、儲けれないとなれば、速やかに撤退

          老人ホームの夜逃げ!? 老人ホームが突然閉鎖され入居者は?

          永住権剥奪法に反対する若い世代

           永住許可取消し反対連絡会の深澄美琴さん(仮名)の次の指摘はとても鋭いと思います。  今回の入管難民法改悪は外国人にとってだけの問題ではなく、日本人も含めた、基本的人権の問題、優性思想の問題、経済至上主義の問題、レイシズムの問題だという指摘ではないでしょうか。  永住許可取消し反対連絡会は『永住許可を取り消す法改悪に反対する声明文』を発表していますが、この声明文では今回の入管難民法改正法案は「直球のレイシズムと優生思想」だと断じています。  論点がとても整理されていて、わ

          永住権剥奪法に反対する若い世代

          反対です「永住権剥奪法案」!

           今、国会で審議されている改正入管法は永住資格剥奪を盛り込んだもので、とても容認できる代物ではありません。  この改悪案の本音はようするに・・・ 「日本は労働力が足りないから、給料安いけれど、仕事きついけれど、日本で働いてもいいよ!でも、あなたたち外国人には安定した立場は与えません。なんかあったら、いつでも追い出しますから!殺生与奪権は我々日本政府、入管が持っていますから、そこんとこ宜しく!」・・・ということでしょう。  永住資格取消制度の創設に反対する色々な弁護士会が反対声

          反対です「永住権剥奪法案」!

          ISOは介護品質を保証するのか?-介護施設サービスの品質 1

           よく、「介護サービスの品質向上」という掛け声を聞きますが、この介護サービスの品質について、じっくりと考えてみる必要があると思います。  じっくりと考えるといことは、何かの外部指標等に囚われたり、軽々に飛びついたりせずに、介護サービス利用者の視点を踏まえながら考えるということだと思います。 1.ISOとは 先ほど、外部指標に囚われずに、と記しましたが、外部指標、外部機関の評価ということで言えば、真っ先に頭に浮かぶのはISOではないでしょうか?  ISOとはInterna

          ISOは介護品質を保証するのか?-介護施設サービスの品質 1

          排外感情を蔓延させる改正入管法 ー永住在留資格の剥奪法案

           今国会では育成就労制度と永住資格の取消を抱き合わせた改正入管難民法を審議中です。  国際的に人身売買だとして非難されている技能実習制度の看板を掛け替えた育成就労制度の導入と、故意に税金や社会保険料を滞納した外国人の永住者在留資格を取り上げる、過酷な罰則制度を導入するとのことです。    外国人永住資格者は89万人程度で在留外国人の27%を占めています。  そもそも、「故意」をどのように判定するのでしょうか?   ネット上では・・・ 「永住権剥奪は当たり前!」 「日本は永住

          排外感情を蔓延させる改正入管法 ー永住在留資格の剥奪法案