見せかけの家族

お母さんには、恐らく、家族に味方がいなかった。

小さい頃から私は望まれていなかった。
父は自営業。しかも男手が必要な建築業。
息子を欲していたことは想像に容易い。

でも、父の元には息子は生まれなかった。

姉、私、と続いて女所帯。

姉は腹違い。

そうすると、なぜ女なのか、なぜ2人目を産めないのか、いざこざがあったかないかはさておき、心の中で考えてはいたのだろう。

赤ん坊は、時に、残酷なまでに大人の心情を察してしまう。

わたしが、現世の空気を吸った時から今まで、ずっと寂しくて、誰かにこちらを見て欲しくてそればかり思っている。

原因を考えてみたら、その頃のことに辿り着いた。

真相は分からない。
昔の父の考えなど、知る由もない。

何故なら、今は腹違いの息子がいる。

わたしたちキョウダイは、それぞれ10歳づつ歳が違う。

父の中で、昔のことは美化されているように思う。
人のことを蔑ろにしたことは、もうとっくに忘れ美しい物語となっているであろう。

わたしは、望まれて、認められない存在であり、それを産んだ母も同様なのだと思う。

あくまでも、わたしの中の考えだから真相は分からないが、それでもわたしはそう思ってしまう。

これ以上、可愛そうな人間が産まれなければいいなぁ。産まれた時から望まれて、認めてもらえる、そんな環境ばかりになればいいのになぁ。

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