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インフルエンサーの嘘松と、それを取り巻くしょうもない公権力の話

今日は中国のインターネットで起きた騒動の話です。

話の主役は、RED(小紅書)やTikTok(抖音)などで合計で数千万人ものフォロワーを抱えていた、「猫一杯mao yi bei」というインフルエンサーの女性です。

火種になったのは、彼女が2月に投稿したある動画です。それはパリで撮影されたもので、現地のレストランの店員に、中国の小学校のテキスト(冬休みの宿題ドリルのようなもの)を渡された、というところから始まります。

テキストには「泰朗qing lang」という名前が書いてあり、「猫一杯」さんはこの「泰朗」くんにテキストを中国に持って帰って返してあげよう、と面白おかしく呼びかける動画を発表します。この一連の流れが大きく拡散され、メディアもこぞって取り上げました。

その後、「泰朗のおじ」を名乗る男性がとあるライブプラットフォームに出現し、「甥」が通っているという学校の名前を言います。しかし、ここでネット民の有志が調査したところ、全国にいくつかある同名の学校に「泰朗」という名前の生徒は在籍していないということがわかります。このあたりで、「もとから全部創作だったのでは?」という声が大きくなります。

そうこうするうちに、大元となった「猫一杯」さんは「『泰朗』くんの母親と連絡が取れた」と発表しました。そして「先方の意向」でこの件についてはもう扱わないとし、疑惑を残したままこの件は一旦幕を閉じました。

しかし、ここ最近になってなぜか警察が動き出し、この件をデマと認定しました。「猫一杯」さんは処罰を受けるとともに、「泰朗」の件はすべて創作であったという謝罪動画を各プラットフォームに投稿しました。

その後、各プラットフォームは「猫一杯」さんのアカウントを「多くの人々やメディアを誤解に導き、社会に悪影響を与えた」ということで凍結させました。数千万人にのぼったフォロワーたちは、一瞬にして無に帰すことになりました。

「猫一杯」さんはプロモーション動画の撮影(いわゆる案件動画)やSNSアカウントを通したアパレルの販売なども行っており、たいそう儲かっていたようですが、注目を集めるための創作、いわゆる嘘松によって、すべてを失ってしまったことになります。

その周辺で動いていた人やお金も含めて、大変な影響が出たと言えるでしょう。

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簡単にまとめてしまえば「インフルエンサーがインプレッション稼ぎの嘘松をやらかし、それが予想以上に大きくなったうえにバレちゃって、最終的に何もかもあぼーん(古い)した」という、ただそれだけの話です。

ただ、個人的にはそれで済ませちゃっていいのかな? という気も少ししています。

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