雨奈川ひるる | 短編小説

こんにちは、2022年11月11日から小説家デビュー。毎日1200字程度の短編小説を投…

雨奈川ひるる | 短編小説

こんにちは、2022年11月11日から小説家デビュー。毎日1200字程度の短編小説を投稿しています。ちょっとした時間に、さっと読める物語をお届けします。こんな恋愛したい、こんな日常を過ごしたいなど、心温まる小説を投稿しています。いつもの日常に、少しの非日常をお届けします。

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  • 短編小説 「昼下がりの君へ〜」

    滅びた国で楽しく暮らすダンとジュンのお話し。

  • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ

    夢の中で喋るウサギとの不思議な出会いの物語です。

  • 短編小説|タコとイカの大冒険

    タコのタンクとイカのインクが主役の驚きと感動溢れる冒険小説をご紹介します。海底世界の絢爛とした背景に描かれた彼らの挑戦と友情は、読む者を深海の魔法に引き込みます。絆を深めながら未知の領域を切り開いていく二人のストーリーは、あなたの心を確実に掴むでしょう。

  • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ

  • 小説 「少年シリーズ」

    書いた小説の頑張る少年の話をまとめました。

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短編小説 「昼下がりの君へ」

コトッ、昼食のタンパクサンドを食べ終え、庭でくつろいでいると、芝生に金属製の球体カプセルが降ってきた。見上げるといつもの赤い空が見え、飽きもせず太陽が輝いていた。僕が産まれる前は空は青かったらしい、とはいえ、金属が落ちてくるのは珍しいことだった。 こういう時は、ダンの出番だ。ダンは僕の友達、そして、僕の家族。ダンは家の二階全フロアを自分の部屋として使っていた。僕の部屋は一階のこの庭に出入りしやすいダイニングだった。狭くはない、絵を描ける32インチのテーブルが置けているから。

    • 短編小説 「0と1」

      僕は0。何もない、存在しない、意味のない0。そんな僕の世界は無色で無音、ただの虚無だった。ある日、そんな虚無に唯一の変化が訪れた。 「こんにちは、私は1」突然、彼女が現れた1。僕にとって初めての存在感のある数字。彼女の輝きが僕の無色の世界に光を差し込んだ。 「1……?」僕は戸惑いながらも、彼女の存在に目を奪われた。彼女がいるだけで、僕の世界は変わり始めた。彼女はまるで僕にとっての希望のようだった。 「君は0ね。あなたがいることで、私も存在を持つことができるの」1は優しく

      • 短編小説 「最終改札」

        六月の夜風が蒸し暑く、駅のホームに立っているだけで額にじわりと汗が滲んできた。今日も一日仕事を終え、ようやく帰路につく私はボロボロになった心と体を引きずりながら、電車を降りて改札へと向かっていた。重い鞄の中には、パソコンと資料で、気が重い。 「あと少しで家だ……」そう自分に言い聞かせながら、改札の前に立ち、Suicaを取り出した。だが、改札機にかざした瞬間、「ピッ」という軽快な音は鳴らず、代わりに「残高不足」の赤い表示が目の前に浮かび上がった。 「あれ?」思わず足を止めて

        • 短編小説 「縁台のスイカ」

          六月のとある夕方、私は実家の縁台に座って、母がスーパーで買ってきた季節はずれのスイカを頬張っていた。母は「半額だったから」と言って誇らしげに微笑んだが、そのスイカはまるで夏を待ちきれずに出てきたようだった。 縁台に座ると、足元には緑の庭が広がっている。まだ涼しい風が心地よく、梅雨の湿気を含んだ空気が肌にまとわりつく。庭の奥には古びた倉庫があり、その周りには紫陽花が咲き乱れていた。六月の紫陽花は紫色に輝いて、庭全体に彩りを添えている。 「ユカコ、スイカの種、庭に飛ばしてもい

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        短編小説 「昼下がりの君へ」

        マガジン

        • 短編小説 「昼下がりの君へ〜」
          4本
        • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ
          3本
        • 短編小説|タコとイカの大冒険
          3本
        • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ
          2本
        • 小説 「少年シリーズ」
          5本
        • 小説「この世界にごきげんよう」
          3本

        記事

          短編小説 「ニートが風邪をひいた日」

          風邪をひくなんて、ニートでも普通の人間と同じなんだな、と僕は実家の部屋のベッドでうずくまりながら思った。僕はユウジ、27歳、一年前に証券会社を退職してからニートとして暮らしていた。両親が出かけている間、僕は一人でこの六畳半の部屋で風邪と戦っていた。 「くしゅん!」と、鼻をすすりながらティッシュを手に取る。ティッシュの山が部屋の隅に積み上がっているのを見ると、自分がどれだけくしゃみをしたかがわかる。外に出ないニートでも風邪をひくなんて、不公平だと思いながら、ふと天井を見上げる

          短編小説 「ニートが風邪をひいた日」

          短編小説 「妄想の向こう」

          僕の名前はユニス。庭で空を見上げるのが好きだ。僕の庭は小さく、特別なものは何もない。ただ、赤い空を眺めるための特等席があるだけだ。今日も僕は、その特等席で一日を過ごすことに決めた。 朝日が昇る頃、庭に出てみると、空がまるで燃えるような赤に染まっていた。雲ひとつないその空は、どこか神秘的で、僕の心を落ち着かせてくれる。 「こんな空の下で何が起こっているんだろう?」僕はつぶやきながら、ゆっくりと庭の草を撫でた。赤い空はいつも僕に様々な妄想を抱かせる。今日はどんな冒険が待ってい

          短編小説 「妄想の向こう」

          短編小説 「マルセルとフィラー」

          核戦争後の荒れ果てた地球。その冷たい風が吹き荒ぶ中、マルセルとフィラーは火星から戻ってきた。彼らは地球の生き残りであり、かつての家や街がすべて廃墟と化したこの地で、新たな生活を始めることを決意した。 マルセルは核戦争前に庭で拾った「自由のステッキ」を握りしめ、降り立った場所に小さな一階建ての家と小さな庭を作り上げた。その家は、戦争前の平和な日々を彷彿とさせる場所だった。フィラーと二人で過ごすこの家は、彼らにとって新たな希望と自由の象徴だった。 「マルセル、今度はチューリッ

          短編小説 「マルセルとフィラー」

          短編小説 「キノコ」

          「ガンター、山の向こうにキノコが見えるよ」マルーセは空を指差しながら言った。彼女の指差す方向に広がる鮮やかなオレンジ色のキノコが美しく咲いていた。 「希望のキノコさ」ガンターはマルーセの頭を優しく撫で、小さな体をふんわり抱きしめた。マルーセはキノコを見つめながらガンターの袖を強く握りしめ、ガンターは窓の外のキノコを眺めながら、ゆっくりとカーテンを閉じた。 12週間後、ガンターはバス1台の広さの庭でマルーセと自分の洗濯物を干しながら、庭の花壇で遊ぶマルーセを微笑ましく見てい

          短編小説 「キノコ」

          短編小説 「父親になった日」

          僕も父親になりたい。「I Am Sam」という映画を観てそう思った。 科学者リオーナに「父親になりたい」と話した。ブロンドの長い髪のリオーナは、いつものようにため息をついて、メガネ越しに僕の目を見つめた。テーブルのコーヒーをひと口飲んで鼻から小さなため息をついて、キムテックで口を拭いた。視線が僕から離れて下に向いた。 「シート、あなたに無理よ」いつもの答えだった。女の子とデートしたいと言った時も同じ答えだった。友達と遊びたいと言った時もそうだった。「そんなことより、ゲーム

          短編小説 「父親になった日」

          短編小説 「昼下がりの君へ〜赤い空の下、ダンとジュン」

          前回のお話↓昼食のタンパクサンドを食べ終え、庭でくつろぎながら、いつもの赤い空を眺めていると小さな黒い影が見えた。なんだろう、今回はなんだろう胸がうるさくなってきた。空を覗き込みながらそれが落ちてくるのを待った。昨日は「バンクボム」その前は「メモリーボム」今回のボムはなんだろう。プレゼントをもらうときはこんな感じなのかな。 次第に影はだんだん大きくなって、それともに静かになっていった。あれはダンの荷物だ。コンピューターでアニメのフィギュアやグッズを頼んだんだ。 「ダ〜ン!

          短編小説 「昼下がりの君へ〜赤い空の下、ダンとジュン」

          短編小説 「白いTシャツ」

          僕の名前はシロt、白いTシャツとして洋服生産ラインで生まれた。最初は真っ白で、何もかもが新鮮だった。僕たち白いTシャツは、皆同じ姿で並んでいた。その中で、僕はどんなプリントがされるのかワクワクしていた。 生産ラインが動き始めると、次々とシャツたちがプリントされていく。シャツの真ん中にキャラクターの絵柄が次々と現れ、僕たちはその運命を受け入れていった。プリントされた後、僕たちは新しい姿に生まれ変わり、人気のキャラクターTシャツか、不人気の売れ残りが決まっていく。 僕の前にい

          短編小説 「白いTシャツ」

          短編小説 「白と黒の逆転」

          白黒王国はオセロの国民で溢れる世界。白いコマと黒いコマが対立しながらも共存しているこの国で、僕、シロズリーは白いコマとして毎日を楽しんでいた。友達と一緒に遊びながら、笑い声が絶えない日々を過ごしていた。 白いコマたちはいつも明るく元気で、自分たちの立場を誇りに思っていた。しかし、その一方で、黒いコマたちは毎日落ち込み、白いコマたちにバカにされていた。黒いコマたちは暗い存在と見なされ、必要ないものだと蔑まれていた。 ある日、僕たち白いコマのグループは広場に集まり、黒いコマた

          短編小説 「白と黒の逆転」

          短編小説 「チョコチップクッキー」

          スウィーツ王国は、お菓子でできた不思議な国。クッキーやキャンディ、チョコレートといった甘いお菓子たちが住民として暮らしていた。僕の名前はヤメズリー。バタークッキーとして誕生してからまだ3日しか経っていないけれど、もうピース崖に向かう列に並んでいる。 ピース崖はスウィーツ王国の伝統的な場所で、古くなったり、役目を終えたりしたお菓子たちが新たな姿に生まれ変わるために訪れる場所だ。僕はまだ新しいクッキーだけれど、自分の姿にちょっと不満がある。次はチョコチップクッキーになりたいな、

          短編小説 「チョコチップクッキー」

          短編小説 「ホープ」

          カザンカザン王国は、3つの活火山に囲まれた美しい国だ。その国は、常に火山活動に警戒しながらも豊かな生活を営む人々によって築かれた。僕はホープ、ココロが傷ついた者に希望を売る仕事をしている。僕の役目は、困難な状況にある人々に笑顔と勇気を届けることだ。 これまでに3つの火山が噴火を起こすことはあったが、幸運にも致命的な被害は避けられてきた。人々は火山の力を恐れつつも、その恩恵を受け取りながら日々を過ごしていた。しかし、そんな平和な日常が突然崩れ去る日が訪れた。 その日は、いつ

          短編小説 「ホープ」

          短編小説 「わらび餅のきな粉」

          わらび王国の片隅で、僕はキナコという名前で知られている。きな粉として生きることを夢見て、明るく振る舞う毎日だ。けれども、わらび餅の生産ラインに乗せられた時、僕の運命は大きく揺れ動いた。 わらび餅の生産ラインから逃げ出す計画を立てたのは、ある日のことだった。仲間たちは次々とわらび餅にかけられていく。それがきな粉の運命だと言われても、僕にはどうしても受け入れられなかった。自分自身の意志で生きたいと願っていたからだ。 夜明け前の薄明かりの中、僕は密かに生産ラインを抜け出し、わら

          短編小説 「わらび餅のきな粉」

          短編小説 「いつもの日々」

          アラームが鳴り響いた。 午前6時、目覚ましの音に半ば無意識に手を伸ばし、アラームを止めた。暗い部屋の中で、ベッドから重い体を引きずり起こした。外はまだ薄暗く、重たい気持ちがさらにのしかかる。私の名前は山本。会社員でありながら、家に閉じ込められているような気分だ。 私は父と二人暮らし。父は厳格で抑圧的な人物で、私の人生を事細かに管理している。就職先も父が決めたものであり、私の意見など一切聞かない。そんな父の元で、私はまるで操り人形のように日々を過ごしていた。 キッチンに向

          短編小説 「いつもの日々」