暗闇を裂く音色
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電気が走る音がして、コンセントから火花が散った。
演奏家のマサトは、ステージでの最後のリハーサルを終えたばかりだった。
彼のヴァイオリンは、まるで生きているかのように、感情を込めた旋律を奏でていた。
しかし、その日は何かが違った。
彼の心は、どこか遠くを彷徨っていた。
ステージの裏では、マネージャーが急いで電気技師を呼んでいた。
コンセントのショートが原因で、明日のコンサートが中止になるかもしれないという不安があった。
マサトはそれを知らずただ自分の世界に没頭していた。
そして、コンサートの夜。
会場は満員で、期待に胸を膨らませる観客でいっぱいだった。
マサトはステージに上がり、息を吸い込んだ。彼の指が弦に触れると、音楽が空気を揺らし始めた。
しかし、曲のクライマックスに差し掛かった瞬間、突然、会場が暗闇に包まれた。
コンセントの問題が再発したのだ。
観客からは驚きの声が上がり、ざわめきが広がった。
しかし、マサトは動じなかった。
彼は目を閉じ、暗闇の中でヴァイオリンを奏で続けた。
その音は、まるで光を放つかのように、暗闇を切り裂いていった。
こんなどんでん返しがあるのかとマネージャーは驚いた。
突然、会場には幻想的な光が満ち、マサトの周りには幻影が現れた。
彼の音楽が生み出した光景だった。
観客は息をのみ、その美しさに魅了された。
マサトの演奏は、ただのコンサートを超えた忘れられない体験を全員に提供したのだ。
編集後記
今回は加筆修正がほぼ無かったので楽でした。
とりあえず6月末までやったら音声版を作って投稿しますね。
作品のネタ集めの費用に使わせていただきます