しかられ

オタクアカウントの文字書き練習帳

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最近の記事

幸福

「くりの木」というラーメン屋が埼玉に何店舗かある。 若干僻地というかアクセスのよくない場所にあり、あまり車で来る以外には向いていない。けれどそれを補って余りあるほどにラーメンは魅力的である。 写真はつけ麺のものだが、ラーメンも同じようなスープとなっている。 そしてご覧の通り、真っ黒なスープ……ではない。救ってみると白濁したスープ、それが大量の油膜と大量の魚粉に覆われているのだ。 真黒く覆われたそれは冬であっても全く湯気を立てず、静かに揺蕩っている。一瞥すると冷たささえ感じ

    • 思考のタイプについて

      ビジュアル・シンカーの脳: 「絵」で考える人々の世界という本の話を聞いたので散文的にメモを書く 世界には大きく分けて言語、図、絵画的に(またはその部分を優位として)物事を記憶・処理するように分かれるというはなし。 よく言うところに小説を読んで場面が再生されるとか音声が再生されるとかいうけれど、それも類する話なのかもしれない。 私はゴリゴリ言語で考えるタイプであるので、言語化の能力については評価されがちである。 一方で脳内で図形を回転させたりといったことはほとんどできない 言語

      • 日記(3月16日)

        今日はいくつかの本を買った。 あまりも日々の生活がルーティーン化されていて日記を書く筆を折ろうと思っていた自分にとっては格好のネタである。 ただ別に、本は買っても読まなければ恰好の良いインテリアである。会社から首を言い渡された際には溜めてある本を一気に読んでやろうと思っていたのだけれど、幸運なことにまだその機会は訪れていない。 なので今回はサッと読んでしまった漫画の『コワい話は≠くだけで。』の話をしたいと思う。 簡単に説明すると実話怪談(という体とする)を取材して、漫画にす

        • 日記(3月13日)

          点眼型洗眼薬というものを買った。 眼にこれをしこたま入れて、入った汚れごと洗い流してしまおうというものである。容器に液を溜めてその中でパチパチとまばたきをする方式より衛生的だということで少し話題になった。 しかし使い方を見た時にどうしても気になるのは、眼に入れた液体はそのままボダボダと垂れ流しになるのでティッシュなどで受け止めてください、とある点である。 これと同じように思ったものは鼻うがいだ、鼻に液体を入れてボダボダと垂れ流すのが正しい使い方である。 しょうがないとはいえ、

          日記(3月12日)

          ふとあることから、昔にあったことを思い出した。 細かいことは省略するが、自分がSOUL'd OUTのCDを親にねだった所、sold outとは売り切れという意味であってそういうCDがあるわけではないのだ、と言われた、という話である。 読む限り大喜利面白ツイートのような感じだけれど、実際にあった話なのでこの後に大きなオチがある訳ではなく、別にウチが物凄く貧乏であったから言い訳に上手いことを言われたという話でもない。 これは自分が幼く英語を良く知らず、また親も知らないアーティスト

          日記(3月12日)

          日記(3月10日)

          今日は一日ゲームの生配信を見て過ごした。 こういう日って、本人にとっては充実というか、準備して迎える日なのだけれど日記を書くというような感じではない。 日記と呼んでいるものは今で言う所のエッセイのようなもので、昔に言う日記本来の意図としてはやはり公開するようなものではないのだろう。もし逆に、本来の意味としての日記が面白エッセイになっている人がいるとしたら、それはそれで異常な気がしてしまう。キャッチ―なフレーズ、くすりとするユーモア、共感する要素を持つ日記を死蔵して生き続けると

          日記(3月10日)

          日記(3月9日)

          昼食にお好み焼きを食べた。 セルフで焼く形ではなく、店員さんが焼いてくれるのを席で見ているのだが、親の仇のように卵を潰していた。 それはきっと彼が業務の中で会得したスキルなのだろうけど、ガツガツガツガツ、ぐるん、ガツガツガツガツ、ぐるん、ガツガツガツガツ、ぐるんという工程を、敢えて言うのであれば執拗に6,7回繰り返した。 幸運にも昼食時で席は満席であったけれど、これが閉店間際に入って眼の前で行われる場合、結構怖い気がする。 半分暗くなった店内、ガツガツガツガツ、ぐるん、BGM

          日記(3月9日)

          日記(3月8日)

          私はあまり身体が丈夫ではないと思っている。 年に何度かある寒暖差が激しいとき、必ずと言って良い程体調を崩す。鼻が垂れ、寒気があり、なんだかダルい、年収が低いように感じて将来が不安になり、年金はいつ貰えるのだろうかと思う。 時期的には花粉症と言っても良いのかもしれないけれど、2日ほどすれば治ってしまうのであまりそうは言い難く、体調が良くなる頃に病院に行く気は殊更には起こらない。 今日はそんな降雪と春が交差する、私にとってあまり相性がいいとは言えない日だ。前世はひょっとすると変温

          日記(3月8日)

          日記(3月7日)

          花を買う女子高生を見た。 一応の注釈をするのであれば、何かの隠語ではない。 珍しいような気がして少し考えてみたけれど、隣に立っているホワイト・デーのポップは少し先な気がするし、そもそも彼女らは貰う側というのが妥当だろう。 であるならば、何の用途であろうかと考えて、最終的に卒業のシーズンのなにかであろうと算段をつけた。3月9日なんていう歌もあった気がするので大きく外してはいないように思う。 別に花を買うのに理由なんてなくてもいいのだけれど、きっと何かの理由があるに違いないと考え

          日記(3月7日)

          日記(3月5日)

          隣の席に夫婦が座り、男性は奥さんに武勇伝を話しているようだった。曰くご飯をいっぱい食べてお店が困っていたというようなのものであったが内容は棚の上に置いておき、武勇伝というのは妙に嫌われている。 しかし、「武勇伝が嫌われる」というのは本質ではないように思う。 多くの武勇伝に付随するのは「面白くなさ」であり、面白ければおおよその問題は解消されるのだ。 飲み会が催され、場が煮詰まり、段々と話も盛り下がって個人の歓談が始まる中「昔俺はな…」から始まる話芸のなんと華のないことだろう。こ

          日記(3月4日)

          今日はとんかつを食べた。 待つ間、出された湯呑を眺める。湯呑はツルンとした白いもので、中のお茶は底で綺麗に濁っている。 湯呑が空になる頃、店は活気を帯びてきたけれど、未だに私の前にカツは現れなかった。背後をカラカラと配膳カートが通り過ぎる度に、もしかしたら 自分の物かもしれないと思う。ハンカチ落としでハンカチを待つ子供のような心持ちだった。 思うにハンカチ落としというゲームにはある種の罪が含まれているように感じる。落とされるものは首を垂れて裁決を待たなければならず、落とされた

          日記(3月4日)

          日記(3月3日)

          電車できれいにセッティングされた髪型の男の人を見た。 両脇はものの見事に刈り上げられ、残った頭頂部の髪はヘラや泡立て器を駆使したかのように見事に固められていた。 それは2対8くらいに選り分けてから、8の方の先端だけをジェラートの髭のようにくるりと摘み上げて、そういう形であるのが当然だというような位置で収まっていた。 流れの中には散りばめたバニラのように、金髪が混じって主張している。 それを見た時私は、彼に整髪されていない状態があるのか疑問に思った。 どっぷりと日が暮れ、入浴も

          日記(3月3日)

          【掌編】おむすびの結び目

          「今日の講義はテキストの27ページ、おむすびの結び目についてです。論理のテキストを開いてください」と教授は第一声、教室によく通る声で話し始めた。周りから紙ずれの音が聞こえたので、それに合わせてテキストを開く。軽く目を通してみたけれど、そこにはほどけない結び方だとか、間違えて結んでしまった時のために使う「ひぞ」という道具の使い方について書かれていた。ひぞ?  改めてテキストの表紙を確認すると「現代社会の論理構造」と、中央にどっしりとしたフォントでタイトルが書かれている。そして2

          【掌編】おむすびの結び目

          日記:2022/9/26記

          ・昨日あげた内容、結局同じ流れになってしまった 同じ流れにはならないハズだったのだけれど、どうしても構成上後ろに回した方が良い文面に感じてどんどん入れ替えていったら過去に書いたものと同じような流れになった。 これは自分の好みの問題なのだろうか、もしかしたら構成上後ろに回したものも言い回し次第でどうにかなるのかもしれないので、今後推敲し直す時に考え直そうと思う ・文章自体がもう少し書かれたがっているように見える なんだか面倒くさくなってしまって文章が潰れてしまっているように見

          日記:2022/9/26記

          【掌編】ギョポノ

           どこか遠くで雷の音が響いている。音はビルの間で反響して、果てしなく遠くのどこか知らない世界で響いているように聞こえた。雨は乾いた部分を恨んでいるかのように、まんべんなく地面を塗りつぶしていく。鞄を掲げて走っても、バーに入るころにはスーツは水族館のアシカみたいに濡れてしまっていた。  バーに入るとマスターの顔は仕方がないと慰めているようにも見えたし、どうして天気予報を見なかったんだ、と私を責めているようにも見えた。私は努めて申し訳無さそうに滴を払ってから席に座った。  マスタ

          【掌編】ギョポノ

          【掌編】真摯な意見の収拾について

          夕暮れ時、仕事を終えた僕が駅の近くにある商店街を歩いていた時のこと、アーケードの入り口の近くに『忌憚なき意見をお聞かせください』と書かれたプレートを持って立っている男が見えた。男はハンチング帽を被って、短パンをサスペンダーでしっかりと釣り上げていて、その目は誰かを見逃すまいとして商店街を通る人たちの顔をじっと見つめている。手に持っているプレートは角の部分が針金で括り付けられていて、針金は塩ビのパイプを蛇が獲物を絞め殺すときのようにグルグルととぐろを巻くように巻かれていた。 「

          【掌編】真摯な意見の収拾について