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プーチンはNATO加盟にノリノリだった?! NATO怖しで軍事侵攻に至ったというのはウソ!


つい先日、X(旧Twitter)においてロシアを擁護するようなポストをして炎上した清水ひろあき氏。どうにも悔しかったらしく

「では、近代史においてロシアよりも圧倒的に世界中で戦争しまくってるアメリカのことを手放しで大絶賛してるあなた達の理屈は何ですか?」

――と言って自説をとうとうと述べているのだが、それがまたロシアのプロパガンダ全開の陰謀論的見解で話しにならないのだ。


このながーい自説の中で、彼はこのような発言をしている。

>ロシアの侵略行為が良いことだと言ってるんじゃありません。しかし、ロシアがそうする他ないような状況に追い込んだのはアメリカです。

>NATOは現状よりも東に拡大しないという約束のもと安定していた均衡を壊しに行ったのはアメリカの方です。

……このように、ロシアの侵略行為は悪い事なのだが、そう仕向けたのはアメリカだ、NATOだと言っているのだ。

これは本当によくある典型的な反論なのだが、さてロシアがNATOやアメリカによる圧力に耐えきれず、自衛の為にウクライナへの軍事侵攻に至ったとする説は本当なのか?

結論から言えば「否」である。そんな事実は一切ない。何より、プーチン自身がNATO加盟に積極的だったからだ。

以下、私が清水氏にポストした一連の内容を紹介する。


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てか、当のプーチンがNATO加盟を目論んでいた事実を知らないのかな?
●1997年、NATOと露の合同常設評議会を設置。しかし、これが単なる連絡機関で機能していないという「露側の」不満を受け、2002年にNATO・ロシア理事会を設立。

NATO・ロシア理事会の議長はNATO事務総長で、戦略上の最重要問題については従来通りNATO理事会で討議されるが、国際テロ対策、危機管理、大量破壊兵器の不拡散問題、軍備管理等については、NATO・ロシア理事会が最高決定機関となった。露はNATOの「準加盟国」になったとも言われた。

●2008年、露とジョージアで紛争が起こりNATO諸国と露の関係が悪化。しかし2009年には関係が修復され理事会は再開。
●2014年、露によるクリミア併合、ドンバスへの軍事介入によってNATOは露との協力関係を停止したが、その後NATOは露との協議の場を継続する為にNATO・ロシア理事会の再創設を決定。

…これらを見てみると、NATOは露に対して圧力をかけていたとは到底思えない。むしろ、露側は積極的に関係構築に向けた姿勢を見せているし、度々軍事的な悪さをする露に対し、それでもNATOは関係改善に向けた動きを見せているじゃないか?NATOが露を追い詰めたような「ナラティブ」は誤りだと言える。

もう一つ、露のチェチェン空爆についてクリントンがエリツィンを指差して批判したが、それに対してエリツィンが所謂「核恫喝発言」をした。これについて、当時首相だったプーチンは「我々は米国とは非常に良い関係を持っている」と火消しに努めている。

2003年、露を訪問したロバートソンNATO事務総長は「2~3年以内に露はNATOの正式加盟国になるかも」と発言し、これに先立つ米露首脳会談でブッシュ(子)大統領も「非公式かつ極秘裏に」NATO加盟をプーチンに求めたが、この招待にプーチンはノリノリだった。しかし、クレムリン内で意見が分かれた。

当時のイワノフ国防相は反対し独自路線を主張した。イラク問題で米国と仏・独との関係が悪化しており、仏・独・ベルギー・ルクセンブルクがNATO加盟のEU諸国だけで独自の作戦司令部を作ろうと言い始め、NATOの亀裂が広がってきている。だから、露が加盟する価値はないという理屈だった。

…どうだろうか?プーチンってNATOを恐れているどころかメッチャノリノリで加盟したがっていたじゃん?
あと、2019年に露は当時の最先端地対空ミサイルシステム「S‐400」を、なんとトルコに売却している。

トルコはNATOの古参加盟国で露とも歴史的に長く敵対関係にある。そんな国に米国のパトリオットを遥かにしのぐS‐400を売却しておいて、「いやいや、NATOが怖くてウクライナへ軍事侵攻せざるを得なかったんだ!」――なんていう理屈が通用するわけない。むしろ、NATOは弱体化していると見ていた証拠では?


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以上となる。

どうだろうか? プーチンがNATO加盟にノリノリだった事がよく分かったと思うし、ある時からはNATOなんて加盟しても仕方ない、弱体化しているじゃん――と、思っていたであろう事も容易に推察できると思う。

プーチンがNATOの脅威に怯え仕方なくウクライナへの軍事侵攻に及んだなどという理屈は後付けの屁理屈に過ぎないのだ。プーチンはただただ、己の野心や権力を維持する為だけにウクライナを襲ったとみるしかないのだ。これはプーチン自身のこれまでの動きが証明している。NATOが怖けりゃ絶対にトルコにS‐400なんて売却しないでしょ?

もはや、以上の理屈で議論は終了なのだが、「それは事実を知らない」「西側の陰謀に騙されている」――なんて言って負けを認めないヤツばっかりなんだろうな、「珍露0.7」の連中は。

最後に、私が清水氏に対して指摘させてもらった一連のポストをご覧いただきたい。


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それは同感ですね。私も「珍露0.7」の方と理解し合うのは難しいと感じた次第です。とりあえず市長選で正しい民意が示されたのだとも思えました。
政治を志すなら一つ指摘させていただきたいのですが、貴殿はもう少し日本の「国益」という観点から物事を考える事を意識された方が良いかと思います。

何もかも米国が正しいなんて私も思っちゃいないし、彼らには最大限の警戒心を抱いています。ただ、宇が露に負ける事があれば、即日本の危機レベルは跳ね上がります。露は日本の隣国であり中国同様の覇権国家。この感覚は一致しますよね?で、あるなら日本は各国と足並みを揃え宇を支援する必要がある。

宇の勝利と日本の安全保障は直結しているのです。過去、日ソ中立条約を破ったソ連に日本の婦女子が悲惨な目に遭わされた過去もあります。そういった事が再び起きる事を防ぐ為にも、宇を支援する必要があるのです。あなたの露擁護の姿勢や発言は、そう言った観点から日本の国益に叶わない。

言っても無駄だろうとは思いますが、政治家を志すなら日本の未来についてもう少し考えた方が良いかもですね。とにかく自分は真実を知っていて周りは何も分かっていない馬鹿共だ――と蔑む前に、もう一度勉強し直した方が良いですよ?まぁ、老婆心で言っておいて差しあげますよ。


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※参考文献:法と哲学新書 井上達夫 著
ウクライナ戦争と向き合う―プーチンという「悪夢」の実相と教訓

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