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人生は運動会だ『私たちのブルース』終了

2話×10週間、週末を楽しみにしていた『私たちのブルース』が終わった。

今回もノ・ヒギョン脚本らしいエンディングで、チェジュ島の市場に集う、ブルースを抱えて生きるそれぞれのドラマが閉じられた。

幼い子供から、死を目の前にした老人まで、いろいろな世代の登場人物に主人公を移しながら綴ることで、ドラマ全体を通して人の一生というものを見たような感覚になる。

今回は、豪華すぎる俳優たちが回ごとに主人公をリレーしていったけれど、全体を通してウニとドンソクがその中心となっていた。

二人は年齢的にはちょうど人生の真ん中、折り返し地点を迎えながらも、結婚・子供を持つことを選ばず、自分の人生を生きているように見える。

だが実際は背負いきれない過酷な現実と、抱えきれないブルースをトラックにのせて引きずりながら、ただがむしゃらに純粋に、夜明けのような澄んだ心を持って生きている人物だ。

このドラマでは、それぞれの登場人物が乗っている車、というのがその人物の心を表している。個人的に島生活が長かったのだけど、そこで車というのは生活に欠かせなく、車自体がその人の一部になっていくイメージがある。
チェジュ島を舞台にしたこの作品で、ノ・ヒギョン作家はそれぞれが乗る車(ほとんどが仕事用の軽トラ)にキャラクターを載せているように感じた。

二人の、中年というにはあまりに純真でまっすぐな心の持ち主を軸として、人生の悲喜交々が時に過去のパンドラの箱を開けるように、時に突然目の前に立ちはだかる出来事によって紡がれ、見ている方は自然と島の住民になっているというか、とにかく他人事では見れないドラマになっている。

ラストは島の運動会で終わる。
『大丈夫、愛だ』では皆がトマトを投げ合う、というエンディングが印象的だったが、今回も様々な人間関係、感情を抱えたもの同士が、それを知ってかしらずか競技で競い合う。同じ町に住むみんなはチームメイトだ。

運動会の勝ち負け、協力、ただ目の前の戦いに必死になっている町の(心の)友たちを見ながら、次第に俯瞰していくように物語が幕を閉じた。

辛い記憶は、俯瞰して見るようにするといいと楽になると何かで見た。
悲しい、辛い出来事は、当事者である主観から、少しずつそこから離れていき客観的に、次第に俯瞰して見えるようにするといいそうだ。

ぐーっとその世界に入り込み、楽しみも悲しみもまるですぐ隣で起きているような主観的な気分から、エンディングでは次第に離れていき、遠くから見守るような気持ちになる。

ブルースは抱えつつ、でも小さな喜びも握りしめて必死に生きている仲間が離れたどこかに確かにいると、
何か、そんなことを感じさせてくれるドラマだった。


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