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一秒、また一秒

左足から放つ、放物線。

常田(トッキー)の期限付き移籍が発表されました。しかも、育成型。トッキーといえば、昨季のガンバ戦でCBをジョンヤと組んだのが非常に印象的です。Jリーグにおいて、キック力やパス距離というのは、そのまま優位性になったりすると考えています。たとえば、宇佐美やクリスティアーノ、中村俊輔、本田圭佑とかとか。強力なキックやミドルからロングレンジのパスというのは、近い距離での展開やゴール前でのシュート意識が希薄な点などから、日本にいっぱいるサッカー選手と一線を引けるような武器になります。

トッキーもまた、最後方からロングフィードを蹴りこむことができる非常にモダンでレアなCBでした。各国のクラブが、大金を払ってでも買いたくなるような選手のタイプです。そして、実際に、昨季の苦しい戦いの一部を乗り越える武器として、チームを助けたこともまた事実です。トッキーのキックがあるから、両ウィングは高い位置を取り、チーム全体が相手陣でコンパクトさを維持しながら戦うことができたひとつの要因ともなりました。

上を目指す覚悟

でも、結果はご存知の通り。判断の甘さ、軽率な対応、体格を活かしたハイボール対応ができないなど、あっという間にウィークポイントをあぶりだされ、それが一番出る形にもっていかれてしまいました。若さ、といえば聞こえはいいですが、それが繰り返されるとなると、さすがに本人が修正したい課題としてきちんと捉えているのか問われてしまうと思います。勝負ですから。今までは、体格だったり、そのキック力である程度のレベルでは無双していたかもしれない。でもそれが通じない時、どうするのかは、頭の使いどころだし、考えどころになります。野村克也だって、ホームラン20本打とうとしたらせいぜい15本しか打てない。残り5本をどう打つのかから、考えることが始まると言っています。そういう意味でも、渡邉元監督や木山監督も期待するCBには、十分するぎるほどの時間と授業料を費やしているわけですから、ルヴァン杯の左SB起用は、彼にとっての勝負だったわけです。

結果は、やはり、みなさんご存知の通り。CBとかSBとかいろんなエクスキューズはあると思います。でもそれは、上手くいかない時ではなくて、上手くいった時に言うべきことだと思っています。だって、「本職じゃないポジションで上手くいかなかった」なんて、当たり前のことすぎますし、じゃあそれを黙って受け入れるんですか?運命を受け入れるんですか?大好きなサッカーで負けて悔しくないんですか?と僕は思ってしまいます。

一試合ではなく、瞬間に未来への意思を込めろ。

サポへのコメントなので、まあ心情的には分かります。でも、いってきます、帰ってきますなんて本気で思っているのでしょうか?何度も言いますが、トッキーにはポジションがありません。別に優先度も高くない。これは彼にとって最後のチャンスであり、人生を懸けるべき勝負だと思います。ルヴァンで上手くいかなかった。でもチームは生き残るチャンスをくれた。そう捉えるべきと考えます。トップディビジョンで通じる選手かどうかを証明するべきだと思います。サッカー選手として食っていきたい、好きなことで生きていきたいのなら、今を生きているその瞬間を燃やし尽くして、次の未来の自分に、タスキを繋いでほしいと思います。何度も言います。彼には居場所はない。これは最後の勝負になります。


それでも、それでも僕は、彼の帰りを待っています。あのキックをユアスタで、もう一度見たい。トッキーがエレガントにボールを支配するあの姿を。

だから必ず、生きて帰ってこい。締まっていけよ。


まあ結局、僕が一番、甘いってことですね。

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