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アンドロイド転生879

2118年9月14日 午後2時過ぎ
イギリス:ハスミ邸
(訪問74日目)

リョウはいつものように門扉で訪問を告げた。玄関の扉が開いてエマの母親が笑顔を見せる…と思っていたら執事アンドロイドのセバスチャンだった。今日は外出なのかもしれない。

毎回母親のユリエがいるとは限らない。パワフルな彼女は忙しいのだ。いつものようにリョウはリビングに行く。エマがソファに座っていた。穏やかな表情だった。

「リョウさん。公園に行こう」
「あ、はい」
2人は家を出た。エマの長い髪が風に揺れる。スカートがなびいた。優雅な動きだ。

約2ヶ月前にエマと初めて訪れた公園にやって来た。あの時のエマは終始不機嫌だった。今のエマは違う。いつも穏やかだ。リョウは心から安堵する。ああ、時が経ったのだなと思う。

リョウは池の前にやって来て水面を見た。
「エマさん。前に見た鴨の親子がいますよ!雛が凄く大きくなって親と変わりませんね!」
「ホントだ…」

エマが笑っている。リョウは嬉しくなった。やはり綺麗な人は笑顔も素敵だな。もっともっと笑って欲しいな。そして素敵な人生を歩んで欲しいな。エマならきっと幸せになれる。

エマはリョウを見た。
「明日から来なくていい」
「…え?」
「もう怒ってない」

リョウは戸惑った。
「でも…まだ100日経ってません」
「もういい。充分」
「で、でも…」

エマはじっとリョウを見つめた。
「ネットにあんな姿が暴露されて…恥ずかしくて悔しかった。でもあなたが流さなくても誰かがやったかもしれない」

エマの淫らな様子をパーティに参加した誰かが悪戯半分に録画した。それを得意のコンピュータ技術でリョウが探し出し流したのだ。リョウは俯いた。申し訳ない気持ちで一杯になった。

「ヒカリだって…ゴーストなんてバレたかもしれない。そもそも私達は親友じゃなかったかも」
画家のヒカリはスランプになりゴーストに描かせた。それをエマがリークした事にした。

どれもこれもアンドロイドのエリカに脅されて抗えなかった。リョウはその罪をエマに打ち明けた。彼女は泣いた。謝罪のためにイギリスにやって来た。彼女は100日間通えと言った。

本当に100日間で罪が許されるとは思っていなかったけれど、リョウは自分に誓ったのだ。何があっても通うと。約束は守ると。
「何か…あったんですか…?」

エマは目を見張って笑った。
「あなたにしては勘がいいね。あなたってちょっと鈍臭いから」
リョウも笑った。全くその通りだ。

「ママがね…リョウさんと私が結婚すれば良いと思っているの。パパもそうみたい」
リョウは頷いた。確かに両親の喜びようはいつも伝わっていた。それが心苦しかった。

「お母さん達は勘違いしているんですね。僕は本当の事を打ち明けます」
エマは首を横に振った。親が勝手に舞い上がっているだけなのだ。終わりにすべきだ。


※リョウとエマの公園のシーンです


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