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アンドロイド転生887

2118年9月20日 午後10時過ぎ
東京都港区:帰り道

シオンはトウマとヒマリの3人で食事をしてその後はジムでスカッシュをプレイした。ヒマリと別れて2人は帰路の途中である。
「今日は楽しかったです」

トウマはニッコリとする。
「そっか。なら良かった。またモデルしてくれな。皆んな喜んでたからさ」
「はい」

そう。そもそも今日の目的はトウマの大学の美術サークルのモデルだった。まさかその後にトウマ達と食事やスポーツをするとは思わなかった。楽しかった…。うん…。多分…。

「ヒマリさんは…元気ですね」
「うん。サバサバしてるだろ。あんまり女っぽくないし。気楽かな」
確かにウジウジはしていない。

でも…トウマには何だか合わないような気がするんだけど…とシオンは思う。だが直ぐにハッとなって打ち消した。トウマが選んだ女性の事をアレコレと思ってはいけない…!

「な、何で…付き合い始めたんですか」
「半年前に皆んなで飲みに行って…そこで皆んなの前で告られた」
「大勢の前でなんて…自信があったんですね」

トウマは今更気付いたかのような顔をした。
「あ。そっか。そうだな…自信があったんだ…」
シオンはチラリとトウマの顔を見る。真っ白な歯を見せて笑っていた。唇を凝視する。

キ、キスとか…したのかな。付き合って半年だもんな。それ位してるよな。いや…それよりも…もっと…。深いところで…。シオンの胸がザワつく。悔しい。そして悲しい。

互いの家の前に着いた。シオンとトウマは向かいに住んでいるのだ。
「じゃ、じゃあ。ご馳走様でした」
胸が苦しくてさっさと家に入りたかった。

いや。違う。本当はずっと側にいたい。彼の顔を見つめていたい。その唇に触れてみたい。でもこれは叶わないこと。夢で終わること。ヒマリには…女性には敵わない。惨敗だ。

トウマが口元を引き締めて頷いた。
「うん。じゃ、またモデルの日程は連絡するな」
「はい。分かりました」
2人はお休みと言った。

シオンはくるりと振り向いた。勢い良く駆け出して門柱の扉に飛び付いた。シオンを感知してスライドする。さっさと家に入った。トウマはゆっくりと自分の家に向かって歩き出した。

シオンは家に入ってはいなかった。入る振りをしたのだ。門の陰からこっそりとトウマの背を見送った。ヒマリには惨敗だけど…自分が勝手に想うだけならイイよな…と思いながら。

家に入ると廊下でバッタリと義姉のマイカと出会した。マイカはパジャマを着ていた。
「お帰り。楽しかった?」
「全然…!」

マイカとはすっかり姉弟の関係となった。シオンも言いたい事を言う。マイカは目を丸くした
「え?どうしたの?なんかあった?」
「なぁ?マイカはどんな花が嫌い?」

マイカは笑った。
「普通は好きな花を聞くよ?」
「僕は向日葵が大嫌いだ…!」
どうやら今日から嫌いになったようだ。

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