見出し画像

アンドロイド転生895

2118年10月31日 午後
都内某所の住宅

人間の女性に悦びを与えていたアンドロイドのゲンの元に男性が2人やって来て話があると言う。ゲンは服を着た。本当は主人でもないリツとソウタに従う必要はない。

だが好奇心の強い彼は2人の登場に喜んだ。ゲンは身支度を整えると優しく微笑んで女性の頬に触れてそっとキスをした。どんな時でもスマートに振る舞う事が信条なのだ。

「行って来ます。直ぐに戻ります」
ゲンはリツ達を見た。
「さぁ。参りましょうか。でも直ぐに終わらせて下さいね。他にも女性が待っているんです」

リツは鼻で笑った。
「エロマシンだな」
ゲンは涼しげな顔をする。
「人を幸せにしているんです」

3人は家を出ると近くの広い公園にやって来た。人々はハロウィンパーティに夢中で公園になど来やしない。閑散としており都合が良かった。リツとソウタは立ち止まり振り返った。

ソウタはじっとゲンを見つめた。
「お前はアンドロイドを殺したな。23番目はスミレと言う名前で俺の彼女だ」
「そうですか」

ゲンは鼻で笑った。
「あなたもマシンと寝る男ですか。人間の欲望の深さには驚きますね。私を求める女が多くてビックリですよ。こちらは快感などないのに」

ソウタは呆れた顔をする。
「快感などないお前が人間と寝るのか」
「楽しくてね」
「マシンを殺すのも楽しかったのか」

ゲンはニッコリとした。
「はい。マシンの頂点に立つのが私の夢です。でもバトルは好みません。一方的に傷をつけるから面白いんです。晴々とします」

ゲンの涼しげな様子にリツは憤った。
「狂ってるぞ。お前は」
「あなたの恋人は人間ですか?マシンですか?人間なら寝ますよ。マシンなら殺します」

リツもソウタも顔を歪めた。呆れて物が言えないとはこの事だ。アンドロイドでありながら自我が芽生えた機械にはこんな思考回路が生まれるものかと驚くばかりだった。

ソウタは腕を組んだ。
「エムウェイブというクソデバイスを持っているそうだな。それでマシンの自由を奪って一方的に襲った事は知っている。見せてみろ」

ゲンはニッコリとして胸元からエムウェイブを取り出すと指先で掲げた。ペンタイプの銀色に輝く装置。TEラボが総力を上げて造り出した。アンドロイドの暴走を制御する為に。

リツは一歩前に出た。
「ミオに警告音ウィルスを仕込んだな。そのUSBも持っているならそれも見せろ」
「これですか」

ゲンはUSBも取り出した。このウィルスでミオは苦しんだ。警告音という責苦は彼女を正常に動かすプログラムを破壊したのだ。ミオは死んだ。ルークがやむなく解き放ったのだ。

リツはソウタに目配せをすると頷いた。
「ゲン。それを寄越せ」
「あなたは主人ではありません」
「うん。そうだな。俺はお前の主人じゃない」

人間とアンドロイドには主従関係がある。そして主人(契約者)でなければ彼らは従わない。闇雲に人間の言いなりになってしまえば世の中が回らないからである。ゲンの主人はスオウトシキだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?