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ならいごとの旅

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世界の小さな村を訪ね、保存食や手仕事など昔ながらの知恵を学ぶ旅の記録
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アジア山岳民族の森と食をめぐる3ヶ月の旅

里山文庫は、2012年からアジア山岳民族の集落を訪ね、植物利用や保存食の知恵の記録を書き綴り、ときどき同行者を募集してきました。 これまでの旅では、時にはインドのジャングルに佇む農小屋で寝泊まりし、時には新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠を縦断。時には、電気水道 公共交通のないブータンの農村を泊まり歩いてきました。 近年は、インド4ヶ月、ブータン半年、中国1ヶ月、台湾は年2−3回訪問するなど、一つの国に滞在することが多く、こうやって陸路で国境を越えたり、複数の異文化に

1日30名限定!タイヤル族の自給自足の桃源郷へ

不老部落について 台湾植物民族と発酵ならいごとの旅2日目。入域できるのは1日30名限定!タイヤル族の現在版桃源郷へ。 不老(Bulau) 集落のBulauというのは、タイヤル語で、のんびり過ごすという意味で、日本語で言うと、"ぶらぶらする"みたいな感じです。 入域制限しているため、数ヶ月先まで予約でいっぱいと言われてて、なんとかキャンセル待ちで1席ゲット。 ここはほかのテーマパークのような民族村とは違い、人が実際に住んでる。機織りをしてて、天然の薬草を採集していて、染

台湾原住民アミ族の酒と草麹作り

<ならいごとの旅in花蓮&台東> ときどき募集してます、原住民の森へのならいごとの旅。今回の旅のテーマは「台湾原住民の植物と発酵」。植物学や食品化学の研究者、麹やさんのスタッフなどとともに、原住民集落へ〜。発酵を教えている現地の学校で出会った人たちもみなさん、面白い方ばかりでした。 まずは、花蓮にある原住民野草学校に行ってきました。校長先生はお留守でしたが、スタッフのHanaさんが、丁寧に案内していただき、いろんな植物の知恵を学ぶことができました。 こちらの集落では、酒

Asian Foodlore Journeys "客家土楼"世界最大のシェアハウスで学ぶ保存食の知恵

客家土楼は300人で暮らす世界最大のシェアハウスなんです。知ってました? 福建省に行くと、こういう円形の土壁に囲まれた建物がごろごろあります。 防災設備はもちろんのこと、お寺、飲食店、日用品店、宿、銭湯、結婚式場、酒場にいたるまで完備。みんな農家であり、商売人であり、保存食や加工品を軒先で販売されています。 籠城してもこの中で生きていけるだけの自給できるアパートなんですよね。なので、保存食がめちゃおもしろいです。 そんな土楼で、保存食の知恵を学び、数えきれない数の家族た

料理好きが集う野草ワーケーションin佐渡島

5日間の佐渡島野草ワーケーションから戻りました。 集まった料理人たちが野草採集しながらひたすら料理を作る日々。ときどきお香作り、そしてサップ。本気で遊び、本気で学び、本気で味わう、名付けて野草ワーケーションなのでした。 ふだん、孤独に一人で試作してるから一緒にあれこれ考えながら作るのはめっちゃ楽しかったです。 佐渡島で野草ワーケーションがおすすめなワケ 佐渡島って、野草好きには超絶おすすめの場所なんです! なぜかって? ①獣害がない まず、獣害がない!野生のイノシシと

アジアの食卓取材うらばなしvol.1上海編

これまで食の記事をいろいろと書いてきたのですが、面白いのかわかんないけど、ちょっと取材の裏話でも。 まー、もともとバックパッカーあがりの添乗員なので、トラブルは日常茶飯事。インドで暴動に巻き込まれ間一髪でジャングルに逃げ込んだり、ブータンとアッサムの国境で軍に護送されたり、国際列車に乗り遅れてタクシーで追跡したり。人生はドラマでできてますよね。 何から書こうかしらって感じですが、バックパッカーデビューの地であり、思い出の上海から。 関空水没事件福建省の発酵食の取材と、武

移動式モバイルキッチンができました

今日は、モバイルキッチンの製作をお願いしていた伊賀の穂積製材所内にある手作り木工房「春の木の風」へ。仕上げの塗装だけ一緒に作業させてもらいました。 12人用テーブルとチェアが全部折りたためて私の軽自動車に乗るサイズになります。木の種類はヒノキ、杉、松と3種類。屋台調理の申請予定ですが、一緒に料理する参加型スタイルも楽しそうかな、と思います。 穂積製材所は、Studio L生誕の地というだけあって、ガウディのような建造物群が見物。 お昼は、製材所のおかみさんが運営されてい

ならいごとノート:十津川村で「ゆべし」を習う

ゆべしは柚をくり抜いて、味噌やクルミ、山椒を詰め込んで藁にまいて半年ほど熟成させる保存食。今でも和歌山や奈良の農山村に伝わっています。ゆべしというと、スイーツの餅が先に浮かぶ方が多いかもしれませんが、かつては武士の携行食として戦場に持って行ったという味噌の保存食。作ってみるとわかるのですが、「柚餅子」と呼ばれるのはゆず自体が餅のようにもちもちしてきます。 <ゆべしができるまで> 十津川村でゆべしづくりを習う最寄駅からバスでゆられること3時間。 平均年齢70歳、7世帯の住民

発酵と植物と色の研究室「古代染色ラボ」全5回の記録ノート

古代染色ラボの最終回でした。 乳酸発酵の媒染剤、お歯黒を作るところから始まり、型染めの型作りと、小紋糠から糊づくり、そして、灰汁づくりと、色と植物を追求する実験室。ラストは生薬をテーマに、麦灰と稲灰の色のサンプルをとりました。 第1回 「お歯黒」 昭和初期まで使われていたというお歯黒は、1ヶ月の乳酸発酵で鉄を溶かして作る媒染剤。歯を染めるだけでなくいい天然の媒染剤。2ヶ月間乳酸発酵させたお歯黒を持ち寄り、お茶とクロモジのお歯黒媒染をしました。 第2回 「灰汁」こんにゃく作

ブータンの60名の農家を訪ねた取材記録~照葉樹林地帯の農耕文化~

前回の世界の発酵講座では、照葉樹林文化地帯の発酵文化と植物民俗学についてお話しさせてもらいました。菌と保存食の関わりは、その地域の土壌と密接な関わりがあり、さらに民族の移動経路と言語学とも関わりが深く、学問の垣根を超えて横断的に俯瞰するととても面白いことが見えてきます。 このエリアの民俗学と食文化に興味を持った原点はブータンでの半年間に渡る調査でした。以前の記事になりますが、ブータンの60名の農家への取材記録です。 ===== ブータンの焼畑ブータンでは、かつて焼畑が行

お歯黒と灰汁から作る古代染色ラボ~発酵と植物と色の研究室~

古代の色を研究するメンバーが自主的に集まった古代染色の実験室をしています。 昭和初期まで使われていたというお歯黒を見たことありますか?乳酸発酵で1ヶ月かけてつくるんですが、歯を染める以外に、むちゃくちゃいい天然の媒染剤なんです。草木染めしたことある人は、天然の媒染剤がほとんどないことに気づくはず。でも染色講座はあっても媒染剤を作る講座はないんですよね。 それを自分たちで研究しながら手作りしようというメンバーが集うマニアックな実験室「古代染色ラボ」が9月に始まり、月一ベース

植物と灰汁作りの知恵を探求する〜おばあちゃんのベロメーターをめざして〜

強い灰汁と、弱い灰汁80代以上のおばあちゃんたちに知恵の聞き書きをしていると、必ず出てくるのが灰汁のお話。染色のみならず、発酵食品の仕込みや、こんにゃくの凝固剤にも使われてきた灰がいかに生活の中で活かされ、重要な役割を担っていたのかに気づきます。 野生の麹菌を採集するとき、こんにゃくを固めるとき、藍のスクモを作る時にも灰汁を入れます。籾殻やクヌギ、樫の木、椿、藁。地域の気候や環境(たとえば、林業が主な地域では樫、蕎麦が美味しい地域は、そば殻など)によっても違います。昔は「は

古代染色ラボ(全5回)〜発酵と植物と色の研究室〜

2020.9.15 募集締め切りました。 === 発酵と植物と染色の知恵をテーマに毎回研究室のラボ形式で実験するメンバーを募集します。講師がいて、教えてもらったことを学ぶのではなくて、昔の文献をひもとき、自分たちでやってみて学ぶ形です。参加費は最低限の材料費と資料代をいただいています。 (研究会では媒染剤や技法を深掘りしますが、作った媒染剤などを使っての草木染色は各自で楽しんでください。奈良産キハダや染色用生薬の小分け販売もしています。) 定員:各回5名 料金:200

中国語の勉強方法(2)3つの通訳メソッドを使った上達方法

以前に、日本人が中国語を勉強するメリットについて書きました。日本人は漢字が読めるので、何も勉強してなくてもだいたい新聞が読めてしまいます。あとは、音を覚えるだけ。今回は、通訳者が使ってる3つの訓練を中国語に応用してみてみましょう。 通訳メソッドというと、ちょっと上級編に聞こえるかもしれませんが、けっこういろんな場面でできる語学の習得方法です。 ①クイックレスポンス ②シャドーイング ③リピート(リテンション) 紹介したいのはこの3つ。 順に見ていきましょう。 ①クイッ