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「稚拙で猥雑な本能寺の変」17

●第8幕(天正十年六月一日)
○シーン17 本能寺・庭園

信長、蘭丸、明神、たま、もち、フロイス。
茶会を終えて浮かれているたまともち。

たま  「信長様、ありがとうございました」
信長  「何が?」
たま  「見るものすべてが新鮮でございました」
信長  「そう?」
たま  「それにお公家様の皆さん、本当に物腰が丁寧でなんだか私までお公家になったように心持ちになりました」
もち  「ええ。その中でもやはり関白様は威厳がありますよねえ。もうなんていったらいいのかしら」
たま  「もち、興奮しすぎです」
信長  「喜んでもらえてよかったわ。私的にはチョー退屈だったけど」
明神  「退屈?」
信長  「当たり前じゃない。みーんな私を前にするとつまらないことばっかり並び立てて」
明神  「太鼓持ちってやつですね」
蘭丸  「お前のことだ」
フロイス「皆さん信長様に恭順を示したいのでしょう」
信長  「くだらない。蘭丸」
蘭丸  「は」
信長  「今日は何日?」
蘭丸  「6月1日です」
信長  「どんぐり、私が光秀に殺されるのはいつ?」
明神  「わかりません」
信長  「何でわかんないのよ。そういうとこが下品なのよ」
蘭丸  「預言の書には6月に本能寺で謀反が起こると」
信長  「そう。待ち遠しいわあ」
蘭丸  「は」
たま  「信長様」
信長  「何?」
たま  「父が謀反を起こすことはございません」
信長  「どうして?」
たま  「父は御屋形様のことを本当に大切に思っておりますから」
信長  「でも人の気持ちは分からない。男と女だってそうでしょ。愛しすぎるが故に殺してしまいたいこともあるの」
たま  「しかし」
信長  「あなたは優しいわね」
たま  「いえ」

 フロイスが消えている。

蘭丸  「御屋形様、フロイスの姿が見えません」
信長  「あら」
蘭丸  「何かあったのでしょうか?」
たま  「探して参ります。もち」
もち  「はい」

たま、もち下手に捌けて行く。

信長  「どんぐり。あんたも探してきなさい」
明神  「はい」

明神も下手に捌けて行く。
生温い風が吹く。

信長  「蘭丸」
蘭丸  「はい」
信長  「今年の春は終わったみたいね」
蘭丸  「・・・」
信長  「明日はきっと暑くなるわ」
蘭丸  「風邪など召されませぬよう御屋形様、お部屋へ」
信長  「そうね」

信長、蘭丸、上手奥へ。

<18>へ続く


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