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「稚拙で猥雑な本能寺の変」21,22

○シーン21 山中・光秀軍の拠点

上手前高台に来る光秀。じっと眼下を見ている。。
そこにやってくる秀満、忠興。

秀満  「殿」
光秀  「知らせは来ぬか」
秀満  「残念ながら」
光秀  「秀満、忠興」
秀忠  「は」
光秀  「私は明智家の繁栄のために最善の方法を考えてきた」
秀忠  「はい」
光秀  「ひいてはそれが民のため、世のためとなる」
秀満  「はい」
忠興  「義父上」
光秀  「我らはこれより我らの義を全うする」
秀忠  「ははっ」
光秀  「敵は本能寺にあり!」
秀忠  「おお!」

暗転。

○シーン22 本能寺・裏手小屋

小屋の中。
しずとたね、何とか逃げる方法を探している。
明神、くたびれて座り込んでいる。

しず  「ダメだ・・・」
明神  「あーあ。ラーメン食いてえなあ」
たね  「ラーメンってなんだ?」
明神  「ラーメンはラーメンだよ。そうだよ折角京都にいたのに全然ラーメン食べてない」
たね  「食い物か?」
明神  「当たり前だろ。何でラーメン知らないんだよ。伝統的な和食だぞ。アーユージャパニーズ?」
たね  「美味いのか?ラーメン」
明神  「美味いに決まってるだろ」
たね  「食いたいなあ」
明神  「天一は有名だけど、俺は第一旭だな」
しず  「明神!」
明神  「何しずちゃん」
しず  「このままじゃ殺されるかもしれないんだぞ」
たね  「そうだぞ。明神は男だろ?」
明神  「当たり前だろ。女に見えるか?」
しず  「男だったらグータラしてないで何とかしろ」
明神  「はい!」
たね  「何とかしろ」
明神  「うるせーな。探せばいいんだろ」

明神からポロリとジッポライターが落ちる。

たね  「なんだそれ?」
明神  「これ?ジッポ」
たね  「ジッポ?」
明神  「昔の彼女にもらったやつなんだけどね。捨てられなくて。どうしてるかなエロさん」
しず  「エロさん?」
明神  「あ、気にしないで」
たね  「どうやって使うんだ?」
明神  「え?知らないの?ジッポって昔からあるでしょ」

シュボっと火をつけてみせる。

しず  「すげえ。魔法みたいだ」
明神  「ドラえもんみたいだろ」
たね  「ドラえもんってなんだ?」
明神  「未来から来たネコ型ロボットだよ」
たね  「明神変だな」
明神  「変じゃねーよ。お前が何にも知らないだけだろ」
たね  「変だ!変だ!」
明神  「変じゃねーよクソガキ」

明神とたねがゴソゴソ暴れていると、明神の足が取られる。

明神  「いてっ!何なんだよこの穴は!」
しず  「穴?」

そこには深く続いているような穴がある。

明神  「すっげー穴」
しず  「これでどこかまで抜けられるんじゃないか?」
明神  「確かに」
しず  「しっ、静かに!」
明神  「ヤバイヤバイヤバイ」
しず  「扉を押さえて!」

明神、扉を押さえる。
上手前より八方斎が来る。

しず  「たね!穴に入れ!」
たね  「えー」
しず  「いいから入れ!」

木を使ってかんぬきにして扉を押さえるしず。

しず  「明神!入れ!」
明神  「しずちゃん、お先にどうぞ」
八方斎 「おい。何を騒いでいる?」

八方斎、扉を開けようとするが開かない。

八方斎 「ん?」
明神  「早く!」
しず  「・・・(入っていく)」
八方斎 「おい、開けろ!開けろ!」

穴に入っていく明神。

明神  「入ってますー」
八方斎 「開けろ!開けないとただじゃ済まないぞ」
明神  「入ってますー」

ジッポに火をつけて小屋に捨てて穴の中へ。
燃え始める小屋。

八方斎 「開けろ!」

扉を蹴破ると誰もいない。
どんどん燃えていく小屋。

八方斎 「あの野郎・・・」

上手前より久作が来る。

久作  「八方斎!娘たちを連れて行くぞ」
八方斎 「久作様」
久作  「どうした?」
八方斎 「逃げられました」
久作  「何をしてるんだ!」
八方斎 「申し訳ありません・・・ん?」

上手奥から平太と織部がやって来る。

織部  「あ!怖い人!」
八方斎 「貴様らか・・・娘たちをどこにやった?」
織部  「あなたがたが誘拐したんですよね?知ってるはずないでしょう」
八方斎 「知らぬはずないだろう」

織部逃げようとするが回りこまれる。
久作と八方斎に囲まれる織部と平太。

織部  「知らないですよ。ねえ平太さん!」
平太  「妹たちをどこにやった?」
八方斎 「こっちが聞いておるのだ」
平太  「もう一度聞く。妹たちをどこにやったんだ?」
八方斎 「言わない気か・・・邪魔をするなら殺す」
織部  「いや邪魔はしないんですけど、しずちゃんとたねちゃんは返して欲しいなって思ってるだけなんですけど」

間を詰めてくる八方斎と久作。

平太  「しずとたねを返せ!」
八方斎 「・・・」
平太  「返さなければ、お前たちを殺す」
織部  「いやいやいやいや・・・ちょっと待ってくださいって」
八方斎 「覚悟!」

殺陣が始まる。
平太と久作。織部と八方斎。
久作が偶然一撃でやられる。
織部と平太対八方斎。八方斎やっぱり強い。
織部、何とかしなくてはと鞄を漁ると出てきたのはハンガー。
逃げながらも応戦する平太と織部。
追い詰められていく織部と平太。

織部  「ダメダメ!平太さん!」
平太  「しずを、たねを返せ!」
八方斎 「まだ言うか」

更に攻撃をする八方斎。防戦一方の織部と平太。

八方斎 「謝れば命だけは許してやる」
織部  「ごめんなさい。ごめんなさい。謝りましたー」
八方斎 「・・・」
織部  「でもしずちゃんとたねちゃんを返して下さい」
八方斎 「それはこっちのセリフだ!」

バタバタと逃げる織部。
鞄の中にあった懐中電灯をつかむ織部。
八方斎に向けて灯りを照らす。ビカーン!

八方斎 「なんだそれは!」

ひるんだ八方斎に平太がタックル。
八方斎、よろけてバランスを崩し、ニワトリ小屋に倒れこむ
一斉にニワトリがコケッコーコケッコーバタバタバタバタ

八方斎 「ニワトリだめーーーーーーーだめーーーーどっかやってーーー」

倒れる八方斎。

平太  「妹たちはどこだ?」
八方斎 「お前たちが逃がしたんじゃないのか?」
平太  「知らぬ」
織部  「しずちゃんとたねちゃん本当に逃げたんですか?」
八方斎 「この小屋に閉じ込めていたのだが、いなくなってしまったのだ」
織部  「でも二人はどこへ行っちゃったんでしょう?」
八方斎 「どんぐりだ、どんぐりが連れて行ったのだろう」
織部  「どんぐり?明神くんが?」
八方斎 「そうだ」
平太  「どんぐりは味方だよな」
織部  「そうです。良かったです!明神くん!君って奴は・・・」
平太  「ことの顛末を教えて貰いましょうか」

八方斎を問い詰めようという平太。


<23>へ続く


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