あの日の猫背 | 珈琲&文学note

読書と音楽と珈琲と旅が好きです🇮🇳🇳🇵普段は珈琲焙煎や珈琲研究に勤しんでおります☕️こちらの…

あの日の猫背 | 珈琲&文学note

読書と音楽と珈琲と旅が好きです🇮🇳🇳🇵普段は珈琲焙煎や珈琲研究に勤しんでおります☕️こちらのnoteでは主に、珈琲と文学作品の紹介、音楽と街をテーマにしたエッセイ、詩作品、焙煎日記、その他いろいろ投稿していこうと思います📚🖊️

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【音楽と街】八月の背

その日は淀川の花火大会があったらしい。 八月某日、夜。 阪急武庫之荘駅の構内で、僕は花火大会へ向かう人々の混雑に巻き込まれていた。 人の群れはひとつの巨大な生物のようで、不気味な気を放ちながら、ゆっくりと進んでいた。花火大会と無縁の僕はいつまでも前に進めないのに苛立ち、生物の腹を抉るように人混みを掻き分けて、なんとかホームに辿り着いた。 そこで目にしたのは、さらなる生物たちがうねりながら電車を待っている様相だった。 僕は思わず「ひぃっ」と声を上げた。 やってきた電車はす

    • 【珈琲と文学】永井玲衣『水中の哲学者たち』

      本日の読書案内は、 永井玲衣『水中の哲学者たち』 です。 今回は文学というよりも、哲学エッセイとなります。 あらすじ 解説①哲学対話について 著者は哲学者・永井玲衣さん。 永井さんは哲学研究を行う傍らで、学校・企業・美術館などで「哲学対話」を行ったり、ラジオに出演されたりなど幅広く活躍されている方です。 僕は文化放送のラジオ番組をきっかけに永井さんを知り、「哲学対話」について興味を持ち、そしてこの本に出会いました。 内容解説に入る前に、その「哲学対話」⁡とは何かに

      • 【音楽と街】虚飾の街

        半年ほど、キャバクラでバイトをしていた時期がある。 所謂、黒服というやつだ。 場所は大阪の十三で、24歳の頃だった。 関西の大学を卒業後、いろいろあって就職せず、地元の北海道に帰りバイトをした僕は、そのお金でインドやネパールを旅して周った。 帰国後、再び関西に戻り、就活を始めることにした。 しばらく北海道でのんびり過ごしてもよかったのだが、それでもすぐに再び関西の地に戻ったのは、友人知人がいたことや、所属していた劇団の活動があったこともあるが、やはり都会の刺激が欲しか

        • 【詩作】鈍行

          冬枯れの田園に 果て無く続く送電鉄塔の群れを 眺めて 眺める 鈍行列車の午後 わかんない言葉も いつの間にか 揺れて 軋んで 床に落ち 曖昧になる 曖昧になってしまう こともくすぐられたなら 小さなカーブで 大袈裟に笑おうよ 上手く言えないけど 僕が会社を休んだ日は たくさんの人の顔が立派に見える 駄々をこねるように大人になって ポテチのカスのような感性が 世界に散っていった ふらりとつむった眼の内に 丸めた卒業証書の穴が見える そこから何が見える 丸い世界を四角く切り取る君

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        • 【珈琲と文学】
          4本
        • 【詩作】
          7本
        • 【音楽と街】
          5本

        記事

          【珈琲と文学】小川洋子・堀江敏幸『あとは切手を、一枚貼るだけ』

          本日の文学案内は 小川洋子・堀江敏幸『あとは切手を、一枚貼るだけ』です。 あらすじ 解説いまは遠く離れてしまった恋人同士の、 14通の手紙のやり取りのみによって構成された物語。 女性パートを小川洋子さん、男性パートを堀江敏幸さんが手がけている。芥川賞作家の二人による、美しく哀しい物語。 手紙に綴られるのは、詩のように美しくて抽象的な言葉と、膨大な質量の「知識」。 その融合が、幻想的かつ独創的すぎる文章世界を生み出している。 それは最早誰も到達できない宇宙世界であり、

          【珈琲と文学】小川洋子・堀江敏幸『あとは切手を、一枚貼るだけ』

          【詩作】ねじまきの音

          僕は凍りつくように流れてた 冬が明ける頃の明け方に 薄青い光と 雑踏が 重なりあえば 流れ続けて 腹が減る 汚れたニューバランスで 階段を降りる 喉を潤すために飲んだリポDの 空き瓶を捨てたホームのゴミ箱から 友人のような言葉が溢れてた ごうごう号号 空空からからり ららるるららる 暗暗くらり 暮らしは続く 頭の中で ねじまきの音 どうしていつも、どうして と、考える。 歯切れの悪い ねじまきの音 いろんな人が 耳を塞いで 遠ざかる 僕は凍りつくように流れてた 過去

          【詩作】ねじまきの音

          【雑記】J-popの歌詞から見る「表現の自由」について。

          ⁡ 今日は音楽の話。 何やら燃えている。 どうやら、今年の熱闘甲子園のテーマソングを担当した「ねぐせ」というバンドが、そのティザー映像を公開したところ、歌詞に誤字や不適切な表現が散見されるということで物議を醸しているようだ。 特に、「外野」という野球に関連する言葉をネガティブなニュアンスで用いたことが、強く批判されている。 加えて、この騒動に対してバンドメンバーがXにて謝罪文を投稿したところ、その文章までもが誤字だらけ、かつ稚拙な内容ということでさらに炎上してしまった

          【雑記】J-popの歌詞から見る「表現の自由」について。

          【詩作】春

          春、風のない朝を横切って 旅の途中の猫に噂された 陽射しの香りにじゃれあって 君の行方を尋ねたら 空っぽの空を 指差した 想像の果ては広がって この街の彼方を見つけるためのスニーカーが 擦り切れていくのも 止められない 桜の花びらが ひとつ落ちたら そこが新しい季節の 始発駅 君と僕の影が 気難しい顔して 傾いたなら、 うたかたを纏った風に 縛られて生きよう 着崩れた体温を感じながら いつまでも 春、光の音を嗅いだなら あの日の手紙の意味に気付けるかな 生きる道の途中で 

          【掌編小説】夜の中

           読みかけの本の続きを気にしながら、私は夜の道を走っていた。風は生ぬるく、月が鈍く光る夜だった。  アスファルトをひたすら踏み付けて進む私は、いまどこまで来ただろうか。ただまっすぐ、どこへ行くのかもわからないまま、走っている。  さっきまで私は、ベッドに寝そべりながら小説を読んでいた。ママもパパも妹ももう寝静まった頃に、私だけが起きていて、小説を読み耽っていた。  もうあと数ページで、第一章が終わる。ちょうどいい区切りだから、そこまで読んだら今日は終わりにして、私も眠りにつ

          【雑記】休日の焙煎日記

          こんにちは。 今日はコーヒーのお話。 noteでは文章記事の投稿がメインですが、 一方で僕は、珈琲も趣味としています☕️ ※詳細はプロフィールに! 休日には自宅で手焙煎を行い、 オリジナルの豆で珈琲ブレイクを楽しんでいます。 今日はその様子を写真でご紹介します! 今回使用の豆は、「東ティモール」 フェアトレードで取引きされているものを購入しています。 まずはハンドピッキング。 欠点豆(カビていたり、欠けていたりする悪い豆)を取り除きます。 ひとつひとつ確認していき

          【雑記】休日の焙煎日記

          【詩作】deep blue

          まだ、隠れたままだよ 軽はずみな早起きで ジオラマみたいな街を行く 朝未だきの空、 星ひとつ 一日の手前は静かに横たわり 100円のコーヒー 値上がりの煙草 湯気と煙 ゆらゆらと外気の中 寂しい味を、味わった 君の好きな店の前に立って ガラスに映る顔を見つめたら アーバンな生活が不意をつく 後ろめたい気持ちも歌にすれば どうにかなると思ってた すれ違う時ほど我慢して それが正義と思ってた “うそみたい”って呟いた関係も 棄てたところで何も変わらなかった 君と一緒にいられる

          【珈琲と文学】サマセット・モーム『月と六ペンス』

          本日の文学案内は サマセット・モーム『月と六ペンス』です。 (訳:金原瑞人) あらすじ 解説1919年に発表された英文学の歴史的名作。 ポール・ゴーギャンをモデルに、芸術に取り憑かれて全てを捨てた男の生涯を、彼の友人である「私」の一人称視点で綴った物語。 ⁡ 平凡で安定していた生活を送っていたチャールズ・ストリックランドは、ある日突然家族の前から姿を消す。 彼の夫人から捜索依頼を受けた「私」は、ストリックランドの行方を追いかけ、異国で見つけることに成功する。 しかし、失踪

          【珈琲と文学】サマセット・モーム『月と六ペンス』

          【詩作】死なない

          だるい花粉の嵐に 四月がくしゃみで消え飛んだ 遠くで聞こえる踏み切りの音 汗ばむ街の匂いを連れた西陽が 黄ばんだカーテンの裾から 滲み出る 風に吠える若い犬と 冷たい春 時代のコントラストは やさしさと傷痕で成されて 同じ顔した人は 同じ血を巡らし 濡れた体を遊ばせる 路面に咲く季節を蹴飛ばして、往く 毎日早起きしても 僕は朝日を知らず 黴臭い畳の上で体液を零すだけ 宇宙を作ってはこわす この腕を だらりと床に落とし ただ死なないだけの 僕が生きている くしゃみが出て 脂

          【詩作】冬の夜

          チェーン店のファミレスで 胸の小さなウエイトレスが僕に寄る しばらく僕は、目を逸らしながら考え込み ドリンクバーを頼んだ 冷たい言葉をたくさん選んでも 心の中までは冷やせなかった そびえ立つ妥協の壁に 安くて苦くて熱いコーヒーをぶちまけた 泥水みたい ねえねえと甘ったるい声で彼女 ねえ、ねえ、湿っぽい関係を続けられるなら 誰かの尺度で生きるのも楽しいのかもね しがない日々にロマンスは要らなかったと、 国道沿いで立ち止まる うねる前髪に積もる冬の夜 自意識だけが溶けずに残る

          【音楽と街】すばらしい日々

          14歳、15歳。 ニキビ面の思春期真っ盛りだったあの頃、 僕は北海道の田舎の町で鬱屈した日々を過ごしながら、音楽を聞いていた。 僕は音楽が好きで、読書が好きで、 流行ってるとか、皆が聴いてるとか読んでるとか、そんなことはまったくどうでもよくて、自分が好きだと思ったら胸を張って好きだと言っていた。 音楽は90年代のロック。 94年生まれの僕にとっては、自分が生まれる前後の時代の音楽。 スピッツが一番好きで、あれから15年ほど経った今も変わらない。スガシカオやミスチルや、イエ

          【音楽と街】すばらしい日々

          【音楽と街】散歩のススメ

          歩くことが好きである。 散歩好きである。 人より些か悠長な性分で、マイペース、のんびり屋だった。 そう言えばまだ聞こえはいいかもしれない。 が、この性格は同時に、要領が悪かったり、効率的に考えることが苦手だったり、周囲のペースに合わせることが難しいという面もある。 仕事でもプライベートでも、あらゆる場面でイライラされたし、たくさん怒られてきた。 なかなか苦労の多い性格で、治そうと思っても難しい。ぶっちゃけ生きづらい。 どうしてみんなそんなに要領よく、器用に生きられるん

          【音楽と街】散歩のススメ