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「赤い月」#春弦サビ小説

大好きなnoter Blue handさんのこの声にヤラレて、サビ小説を書こうかな?!なんて口走ってしまった(苦笑)
よく考えたら「恋愛小説」は苦手だった(よく考えなくても苦手だ 苦笑)
ああ、なんて無謀なことを!?
でも、この声だよ♡
言いたくもなるでしょう(うっとり)


     「赤い月」

      
小さな頃から、優秀で可愛い姉と比べられて生きてきた。

「お姉ちゃんは成績が、もっと良かったわ」
「お姉ちゃんは学級委員だったのよ」
「お姉ちゃんはピアノコンクールで優勝したの」
「お姉ちゃんはバレエではプリマよ」
お姉ちゃんは…お姉ちゃんは…

母は私を叱咤激励しているつもりで、そんな言葉を浴びせかけながら私を育てた。
比べる事が悪いなんて育児法にはあったとしても法律にはないでしょ?母は子育てには熱心だったからネグレクトではなかったわ。
でもね、比べられてる方は堪ったもんじゃなかったの。
母は姉には、いつも赤やピンクの明るい色の服、私にはブルーや緑の男の子が好きそうな服を買い与えて着せていたの。

だから、もっと賢くなりたい。もっと美しく、もっと強く……
爪先が痛くなるほど背伸びをして、社会を踊るように歩いてきたの。
背筋をきりっと伸ばして、顎を首に近づけ眼に力を入れてね。
誰にも負けたくなかったから。
母に私の存在を認めさせたかった。
強がり?負けず嫌い?
なんとでも言ってちょうだい。
そうやって生きてきたの。

「クスッ、可愛いんだね」

ベッドの中で三つも歳下の悠が無邪気な笑顔で、私の髪を撫でた。
「可愛いなんて言われたことなかっ…」
言葉を遮るように私のメガネを悠が外した。

「この方がもっとキレイ」

この人は、私の心を純粋だったあの頃に一瞬にして戻してくれる。

「ストロベリームーンって知ってる?」
悠が窓の外を眺めながら独り言のように呟いた。
「赤い月のことでしょ?」
「そうそう、今夜がストロベリームーンなの。もうすぐ顔を出すと思うんだけどな~」

彼の住むアパートは悠の祖父が遺したもので、悠は其処の大家兼管理人をしている。一番見晴らしのいい角部屋を一室、祖父から譲り受けて。

私が彼に出逢ったのは、会社に近いこのアパートへ引っ越して来た時だった。母の呪縛から逃れるために「通勤に便利」だと言う尤もらしい理由をつけて一人暮らしを始めた。

引っ越しの当日、
悠はアパートの下の花壇にパンジーの苗を植えていた。
「いらっしゃい」
振り向いた端正な顔立ちにドキッとした。このアパートの若い大家さんだと気付くのに数分掛かった。


「あっ」

悠がベッドから飛び降りて、全ての窓のカーテンを全開にした。贅肉の一欠片もついていない背中が、私の眼には眩しかった。
茶色の窓枠の中に赤い月が堂々とその姿を現していた。

「此処に座って」
悠の長い腕が私を抱き起こして、白いシーツが掛けられたベッドの上に座らせた。

「美和ちゃん、天使が舞い降りたみたい」
悠は今度は顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに笑った。
「そ、そんなこと、誰にも言われたことなかっ…」
「ほら、赤いワンピース着せてあげる」

月光が私の裸の身体を包み込んだ。
温かな一筋の雫が私の頬をつたわった。
この人の前では、もう強がらなくていい。ありのままの弱い自分でも、きっと受け止めてくれる。
悠が私の肩をそっと抱き締めて…

夜空には赤い月が堂々と…


(約1000字)

PJ様、はじめましてm(__)m
こんなものでもいいでしょうか。よろしくお願いしますm(__)m










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