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韓国旅行で出会った"盛らない"プリクラと、時代の流れについて考えてみた | Design Journal Vol.24

この記事のサマリー

📌 韓国旅行で体験した"盛らない"プリクラについて紹介と、日本のプリクラとの違い
📌  "盛り"文化にも変遷があり、今は「いかにナチュラルに盛れるか」が重視されている
📌  アプリでなんでもできてしまう時代だからでも、ステージで撮影する「特別感」が若年層の心を今も捉えている

韓国で見つけた"盛らない"プリクラ

先日、友人たち4人で2泊3日の韓国旅行に行ってきました。3年ぶりの海外旅行で、料理もお酒も最高に美味しく、少しずつですが海外に出られるようになってきたことにしみじみ幸せに感じていました。

そんな旅行中、個人的にいちばん興味深かったのが韓国で流行りの「プリクラらしきもの」でした。

画像:https://m.blog.naver.com/ko470623/222589830734

この「인생네컷(インセンネッコ)」という名のプリクラらしきもの、日本語では「人生4カット」と訳され、「人生で一番最高の4カット」という意味になるそう。
10枚ほど連続で撮影したあとに4枚を選んで、下記のようにコラージュされた写真が1枚プリントアウトされます。日本では「セルフ写真館」と呼ばれていたりもするそうです。

画像:Haru Film 公式 Instagram

私が知っていた日本のプリクラとの違いは以下でした。

  1. 目を大きく、小顔に、美脚に…などの加工が(ほとんど)ない

  2. 写真内の背景が変更できない

  3. スタンプや、文字を書いたりできない

  4. フィルターの選択肢は「そのままの色味」or「モノクロ」のみ(機種によって異なる)

  5. もはやシールじゃない

このように「できないこと」をつらつらと書いてみると、学生時代プリクラ撮りまくっていた世代からすると、「楽しいの!?」と思ってしまいそうです(後述しますが、とっても楽しいです)。

画像元:KOREA.net

店舗自体は無人で、24時間利用可なところが多いようです。
日本のプリクラのように様々な機種(=店舗)があり、店の中で行列ができている店舗や、逆にガラガラの店舗もあるのですが、素人目では「背景(=壁の色)が違うのと、なんとなく写りが違うかな…?」ぐらいで、大きな違いはわかりませんでした。

一連の体験を通して、考えたことをまとめてみたいと思います。


実際に体験してみて、考えたこと

1. 盛り全盛期から、よりナチュラルな映りが主流に

韓国に限らずSNSでは、不自然なまでに目を大きく加工したり、顔を小さくしたりする加工は減ってきたように思います。

日本のプリクラにおいても、加工に関しては「いかにナチュラルに盛れるか」がポイントになってきているようです。「プリクラの歴史にみる“女の子”の生態。「かわいい」は暗号だった!?」で紹介されていた下記の「プリクラの画像処理の変遷」は非常に興味深かったです。

画像:プリクラの歴史にみる“女の子”の生態

平成6年生まれの私が中高生だったころは「デカ目期」だったようです。たしかに、たまに懐かしくなって見返してみると怖いほど目が大きいプリクラばかりです。

そんな学生時代に「デカ目期」を過ごしてきた私(と友人たち)の世代からしても、ナチュラルな写りやポラロイドカメラで撮影したような仕上がりは逆に新鮮でした。

これは日本や韓国に限った話ではなく、今年「ベストiPhone App」にも選ばれた、日常のリアルな瞬間を切り取るアプリ "BeReal"が爆発的な大人気であることからも伺えるように、一周回って「ありのままの自分を見せること」がスタンダードになりつつあるようにも思います。


2. 文字入れやスタンプは必要なくなった、のかも。

プリクラの醍醐味の一つといえば、撮影後の「落書き」でした。

グループに必ず1人は「落書きが上手い子」がいて、下記のような複雑なインターフェイスを見事に操作しながら、限られた時間の中でスタンプや様々な種類があるペンを匠に使い分け、落書きを仕上げていくのです。

画像:プリクラの歴史にみる“女の子”の生態

しかし前述の記事によると、日本のプリクラにおいても、そのような派手な落書きが主流だったころに比べ、シンプルなものが好まれているそうです。

画像:プリクラの歴史にみる“女の子”の生態

韓国のセルフ写真館も、上述したとおり落書きやスタンプを追加する工程は一切なく、プリントされる台紙のサイズやレイアウトを選んだりするだけで、全体的にかなりシンプルなフローになっていました。

画像:https://blog.naver.com/rlawnstjs43/222554893620


落書きやスタンプ等があまりつかわれなくなった(韓国ではそもそもなかった)ところには様々な理由がありそうですが、
ひとつは「SNSなどのフィードに並べたときにすっきり統一した見た目になること」や、

画像:Haru Film 公式 Instagram

撮影した写真をアップするSNS上で、文字入れやリッチなスタンプが使えてしまうから」という理由もありそうだなと思いました。

InstagramやTikTokのテキスト入力やスタンプ


3. ちりばめられた「撮影自体を楽しむ」工夫

機種によると思いますが、実際に現地で使った「Harufilm」にはシャッターボタンがついていて、それをあえて写り込ませている写真も多く見受けられました。ここにも「少しレトロで逆に新しい」雰囲気を感じます。

画像:https://m.blog.naver.com/98hjo/222587650232


また、多くの店舗では、大きめのミラーがあり、そこでメイクを直したり、自由に使える被り物もあり、撮影前に「どれつける?!」と友だち同士で楽しそうに話している様子がうかがえました。

画像:ソウルホンデ(弘大)人気スポット・セルフ写真館4
画像:ソウルホンデ(弘大)人気スポット・セルフ写真館4

個人的ないちばん楽しかったポイントは、撮影最中に「どんなポーズする!?」とわちゃわちゃしている様子がコマ撮りのような動画になり印刷待ちの時間に再生される点でした。

画像:https://www.etoland.co.kr/plugin/mobile/board.php?bo_table=star01&wr_id=552440

この短い動画は、プリントアウトされた写真についているQRコードからダウンロードすることができ、その動画自体もSNSに多くアップされているようでした。


4. どれだけアプリが進化しても、「ステージで撮影する特別感」は今も昔も変わらない


アプリで何でもできるなら、なぜ最初からアプリで撮影しないのか?」という疑問に対しては、記事内で触れられている下記の説明が非常にしっくり来ました。

「ブームは過ぎたにせよ、プリクラが無くならないのはすごいですよね。今や盛れる自撮りアプリなんてたくさんあるのに!」

「そうですね。プリクラの持つ“ステージ感”が理由ではないかと私は思っています。お金をかけているからこそ、そこに向かって準備をするというか。帰り道にちょっと撮ろう、というよりも、『撮りに行くぞ』と気合をいれる感じでしょうか」

プリクラの歴史にみる“女の子”の生態」より引用
画像:ソウルホンデ(弘大)人気スポット・セルフ写真館4

普通に写真を撮るのとは違い、ちゃんと証明があり、ブースに入って撮影する空間があるからこその「特別感」ある体験が人気の理由であることは、今も昔も変わらないのかもしれません。


まとめ:やっぱりプリクラは楽しい

以前書いたnoteでも触れましたが、アプリでなんでもできるようになってしまった時代だからこそ、楽しさのコアの部分を突き詰めて、余分な機能を削ぎ落としたプロダクトが増えてきている、という大きな流れにも通じるかもしれません。

また、日本と韓国は文化が似ている点も多々ありますが、どちらの国も「かわいさ」に対する考え方は変わり続けていることを学びました。
形を変えて「プリクラ」がアップデートを繰り返し、未だに若年層の心を捉えているのは非常に興味深く、
盛り全盛期だった私の世代でも「飲んだあとにまた撮りにいこうよ」とハマってしまうぐらい面白い遊びコンテンツでした。

韓国旅行に行った際はぜひ"盛れない"プリクラを試してみてください(日本でも新大久保などに数店舗あるようです)。

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