ゴリュウジ

ことの葉配達人(ことばの郵便屋さん) 読書日記。日々のなかで、息つぎをするように読んだ…

ゴリュウジ

ことの葉配達人(ことばの郵便屋さん) 読書日記。日々のなかで、息つぎをするように読んだ本について。

最近の記事

【詩】阿吽の狛犬

通勤途中にある神社で 毎朝一礼する 願掛けはしない 前の職場で 朝一緒になる先輩がいた 神社の前を通ると 必ず足を止め きりり 姿勢よく一礼していた ラジオから こんな話も流れてきた コロナ禍に 毎朝神社へ通うようになった 足を運ぶたびに 願いは消えていき 一礼の所作だけが残った 粋である マネすべし 春夏秋冬ひとめぐり はじめてから 二回目の春を迎えた はじめたころに 何を願っていたのか もうとっくに忘れ 近頃では 狛犬と 挨拶を交わすようになった 阿吽の狛犬

    • 【4コマ漫画】『地球は青かったんだぞ』

      ロー、あるいはロッくんと呼ばれている男の子のお人形のお話です。

      • 【4コマ漫画】ローは、ロッくん

        周りからロー、あるいはロッくんと呼ばれている男の子のお人形さんのお話です。

        • 【旅行】『緑の魔法』(奈良県吉野)

          夏を先取りしたような五月晴れの週末、奈良の吉野まで小旅行をしてきた。 近鉄奈良駅から小豆色の車両に乗車してみると、急行の車両は思いのほか揺れて、ちょっとした船酔いのようで慌ててしまった。 久しく電車に乗っていないと、こんな些細なことも発見になるものだ。 吉野を訪れるのは、実に20年ぶりである。 関西のとある大学の学生であった頃、ふらりと思いついて訪ねたことが1度だけあった。四半世紀近く前のことであるから、ほぼ記憶はないのだか、唯一トイレを借りたことだけは覚えている。 吉野に

        【詩】阿吽の狛犬

          【詩】『5月の公園』

          青々とした木々が さわさわ 風と遊んでいる 枝葉のカーテンの奥からは カッコウが  カッコー   カッコー 本番前の練習をしている さわさわ 風が吹き 緑の芝生の上では 小さなシロツメクサたちが のっぽのたんぽぽとダンスしている そこにやってきた 虫取り網をかついだ少年が 声を弾ませ チョウチョさんだ 二人もいる と駆け出していく ひらりひらり 風の手に守られるように チョチョは 宙を舞う 休日モードの父親が あせるなよ と笑顔で声援を送る 仰げば やさしく陽光を

          【詩】『5月の公園』

          【詩】『さんさん』

          皐月晴れ 緑あふれて 花 光まとい 色さんさん

          【詩】『さんさん』

          おかえりジャンプ!!

          おかえりジャンプ!!

          【詩】『珈琲風雅』

          奈良駅の西 京都と橿原を南北に結ぶ国道24号バイパス 柏木町北の十字路を 西へ折れた先 そこに ぷろばんすはある 誰が呼んだか珈琲風雅 春夏秋冬 日本庭園 めぐる季節の借景あり 店の奥には電話室 昭和レトロか 大正モダン ジャズの調べが 優雅に給仕 エプロン姿のマスターは 巨匠の風格備えつつ 気配り目配りお手のもの 店のウェイターウェイトレス 適材適所に配役し 準備万端 いざ開幕さあさあ主役のお出ましだ 現れたるは 電気式サイフォンコーヒー 彼こそは 文明開化の申し

          【詩】『珈琲風雅』

          【詩】『マジック・アワー』

          金曜日の帰り道 用水沿いの 狭い路地を歩いていた とぼとぼ さらさら とぼとぼ ふと顔を上げると 家々が朱色に染まっていた 神社の鳥居をくぐり抜けているようだった 振り返って見上げれば 屋根の切れ目から 茜色の空 早足になって路地を抜け 信号を渡り たどり着いた橋の上で 見た先に広がっていたのは 暮れなずむ五月の空と その暮れ時を写し ひとときの魔法にかかった かすみ色の川面だった

          【詩】『マジック・アワー』

          【詩】標識くん

          生真面目な道路標識くん 君の役目だよ と進入禁止と20キロ制限を 任されたその日から 律儀に 直立不動 まっすぐ立ち続けてる 車と人と自転車と ちょっと高いところから ご案内 毎日散歩にやってくる犬とは ワンと声をかけ合う仲だ たまにやって来る猫にはご用心 見て見ぬふりで ひょいとルールを素通りしていく そんなときは 標識くん 凹みそうにもなるけれど やっぱり直立不動 まっすぐ立っている でも心のどこかで そんな猫に憧れてみたり ぼくもあんなふうに丸くなってみたい って

          【詩】標識くん

          【詩】ペットボトル・フラワー

          雨で煙る春の朝 通勤とちゅうにあるパチンコ屋の街路樹に 数本のペットボトルが捨てられていた じぶんの庭でもないのに 汚されたような気がして ちょっと嫌な気になった 雨はポツポツ降っていて 水滴で光るペットボトルのラベルを見ているうちに このペットボトルたちが花の種だったら どんな花が咲くのだろうか と思い 描いていた コーラの花 なっちゃんの花 三ツ矢サイダーの花 ジュースの色した 透き通った花びらが 雨粒を弾くたび しゅわしゅわ とくとく ちゃぽん とおいしそうに鳴

          【詩】ペットボトル・フラワー

          やわらかい時間(紀行文 奈良・中宮寺)

          旅先の奈良で斑鳩の中宮寺を訪ねた。 目的は寺の本尊である半跏思惟像を見ることだった。 この像のことは、伊集静氏の『旅だから出逢えた言葉Ⅲ』で知った。 お隣の国、韓国にも半跏思惟像はあり、元は韓国から伝わってきたものだったそうだ。 伊集院氏は2つの仏像に共通するやさしく穏やかな笑みに魅かれる。 「古典的微笑(アルカイック・スマイル)」と呼ばれるもので、中宮寺の半跏思惟像はエジプトのスフィンクス、ダ・ヴィンチのモナリザと並んで「世界三大微笑」とも謳われているそうだ。 JR法隆寺

          やわらかい時間(紀行文 奈良・中宮寺)

          紀行文『太陽を頬張る(奈良・MIA'S BREAD)』

          旅先の土曜日の朝、ならまちにあるパン屋MIA'S BREADを訪ねた。 この店のことは、店主の森田美和さんのエッセイ集『サンドイッチ・ブルース』で知った。 読んでいて顔を上に向けたくなるような日当たりのいい本だった。 最近はあまりサンドイッチを食べていなかったのだけれど、本の中で、サンドイッチには無限の可能性がある、みたいなことが書かれていて、俄然興味が湧いてきた次第である。 2階にあるイートインで、できたてのホットサンドを頬張る。 千切りにされたレタスとにんじんはシャキシャ

          紀行文『太陽を頬張る(奈良・MIA'S BREAD)』

          散(歩)文『コーヒー・メモリー』

          バスの終点には、一軒のコーヒー屋がある。 その店でコーヒーを飲むために、やって来る人たちがいる。 甘く苦いコーヒーを飲むと、もう忘れてしまっていた過去の日に帰ることができるから。

          散(歩)文『コーヒー・メモリー』

          散(歩)文『青い自販機』

          『真夜中の街を歩いていた。  足どりは、トロトロととろけるように。  ところどころ灯る街灯を見ながら歩いていると、夜闇のなか、ボウっと青く光る自販機が遠くに見えた。  アンコウの提灯につられる深海魚のように吸い寄せられていた。  自販機の中には、青いラベルの瓶が上下三段、左右11個で計33個並んでいた。  ラベルには、  "OCEAN"  とだけ記されている。  ポケットを探るとじゃらじゃらと小銭が入っていた。  真夜中の静けさに、小銭を投入する音が鳴り、ピッと電子音が響い

          散(歩)文『青い自販機』

          散(歩)文『電車の音の聞こえる街で暮らしてみたい』

          2024年2月。 旅行で東京のホテルに泊まっていた。 ホテルは30階建てで、私が泊まったのは28階だった。 朝、窓を開けていると、隙間から地上を走る電車の音が聞こえてきた。 チェックアウトまではまだ間があり、ベッドに寝転がってぼーっとしていた。 28階でも線路を走る電車の音はよく聞こえた。 目を閉じて、夢見心地。 その時、ふと思った。 電車の音の聞こえる街で暮らしてみたい。 そういえば、会社の後輩がこんなことを言ってい。 「高架下を歩くと、ものすごくうるさいじゃないです

          散(歩)文『電車の音の聞こえる街で暮らしてみたい』