佐々森りろ

青春、恋愛中心に小説を書いています。時々イラストも。読んでくださった方に愛されるキャラ…

佐々森りろ

青春、恋愛中心に小説を書いています。時々イラストも。読んでくださった方に愛されるキャラを書いていきたい。

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佐々森りろ、書籍化デビューします!

 私の代表作とも言える、第6回ライト文芸大賞「青春賞」受賞作『春の真ん中』がタイトル新たにアルファポリス文庫より4月上旬に書籍化します!! タイトルは『春の真ん中、泣いてる君と恋をした』です!  第7回ライト文芸大賞開催の告知も出ましたが、思い返せば一年前。  10年ほど手を置いていた執筆を再開して、いろんなことにチャレンジしていこうと思っていた時にオススメしてもらえたのがアルファポリスのライト文芸大賞でした。  ライト文芸とは? まずはそこから首を捻っておりました。だけ

    • キミと嘘、プラス心。17

      第十六章はこちら 第十七章 心、キミ逝く。  空は晴れて、わずかに見えているビルとビルの間の闇に星が見える気がした。  ザワザワと話し声が聞こえて、入り口から何人ものスーツ姿の年配者が出ていくのを眺めていた。  パーティーが終わったのだろうか。  隣に座っている孝弥も気がついて、息を呑む様に入り口を見つめていた。  そこから誰が出てくるのを一番に待つのだろうか、とあたしは考えた。  これから、モヨから沖野さんとモヨの姉が婚約を交わしたことを聞かされるのかと思うと、なんだかや

      • キミと嘘、プラス心。16

        第十五章はこちら 第十六章 再会の日  自分がこの先どうしたいのかとか、何をしたいのかとか、考えてみても何も思い浮かばなくて、途方に暮れるばかりだった。  母を小さい頃に亡くして、父と二人暮らし。そんな父も母のことを忘れてしまったのか、別の女の人と結婚すると言い出した。別に反対はしなかった。父は優しいし、その女の人といると幸せそうに見えたから。その人には、私と同じように連れ子がいた。  孝弥はとても素直で元気がよくて、私に懐いてくれた。かわいい弟ができたことは日々の救いだ

        • キミと嘘、プラス心。15

          第十四章はこちら 第十五章 発覚 ようやく、ここに立つ意味を理解し始めていたところだった。  食事会とは聞いていたけれど、やけに会場が整いすぎていて、まるで何かのパーティーが開催されているかの様に飾られた奥田ビルの最上階にあるレストラン。  いくつものテーブル席には、名刺プレートが添えられていて、呼ばれたのが自分だけではないことにすぐに気がついた。  事の発端は、雨宮さんと百代さんが帰ってすぐだった。 *  まだ混乱する頭を整理したくてもなかなか情報と気持ちが追いつかなく

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        佐々森りろ、書籍化デビューします!

          キミと嘘、プラス心。14

          第十三章はこちら 第十四章 真意 「なんだかパッとしない誕生日になっちゃったなぁ」  モヨが手配してくれたホテルのラウンジでソファーに座って話していた。  豪華なシャンデリアが入り口から入ってすぐに天井高く飾られているのが目に入った。壁から流れ出ている滝を思わせる水の流れは耳に心地よい。またしても、あたしの格好が果たしてこれであっているのだろうかと、敷居が高いのを感じてしまっている。  体の線が綺麗なモヨは、脚を組んで座っているだけで絵になっている。まるで海外セレブにで

          キミと嘘、プラス心。14

          キミと嘘、プラス心。13

          第十二章はこちら 第十三章 真実 沖野ビルの地下駐車場に車を停めた沖野さんは、あたし達をエレベーターへと連れて、最上階の部屋へ案内してくれた。  客室として通された部屋は一面ガラス張りの窓から東京の淀んだ空が一望できた。  びっしりと並んだビルや建物。入り組む道路や線路。曇っていて遠くまでは見通せないけれど、都会の上に立っている。そんな気分にさせられた。  ここに、あたしも少し前まで住んでいたんだ。なんだか、自分がますますちっぽけな人間なんだと思い知らされる。 「詩乃、座

          キミと嘘、プラス心。13

          キミと嘘、プラス心。12

          第十一章はこちら 第十二章 接触 不穏な空気が流れる空間で、あたしは空を見上げた。真っ黒に渦巻く雲は狭い空でも存在感を目立たせている。  モヨも孝弥も、キヨミさんという大切な人を失った悲しみは同じなんだと思う。大切な人を失う悲しみ。  ふと、凌二のことが頭によぎった。  大切だった。とても。本当に大好きだと思っていた。それなのに、また会いたいとは、思わない自分がいる。  薄情だろうか? 他に好きな人ができた凌二が悪いんだと凌二のせいにして、自分には非がないと思い込んでいた

          キミと嘘、プラス心。12

          キミと嘘、プラス心。11

          第十章はこちら 第十一章 明かされる 喫茶店「鈴蘭」でキヨミを初めて見た時、どこか寂しげで悲しそうな雰囲気を纏った、とても綺麗な女の子だと思った。  カウンターの椅子に慣れないように座ってから、マスターの言葉に耳を傾けている。  出されたコーヒーを砂糖もミルクも入れずに口にしたけれど、苦そうにはしていない。普段から飲み慣れているのだろう。そう感じた。  不思議な雰囲気の彼女から、目が離せなくなってしまっている自分に驚いた。  父からされる婚約の話から逃げるように電車を乗

          キミと嘘、プラス心。11

          キミと嘘、プラス心。10

          第九章はこちら 第十章 偽り 孝弥の表情が不安の色一色に変わるのを確認して、胸の中がキリキリと痛んだ。だけど、ここまできてしまったら、これはあたしにも責任がある気がしてならなくて。ずっとずっと、悩み抱えてきていた。  一生黙ったまま過ごすのもありだった。  知らないふりをしていれば、高校時代の友人となんて、関わり合おうとしない限りまた仲良くなんてなることはない。  あたしが今繋がっているのは、詩乃と孝弥くらいだ。それだって、自ら連絡を取ったからこうしてまた懐かしい話をできる

          キミと嘘、プラス心。10

          キミと嘘、プラス心。9

          第八章はこちら 第九章 待ち合わせ 空は眩しいほどに太陽が燦々と輝いていて、雲一つない真っ青が目に沁みてくる。荷物は最小限にしたかった。もしかしたらすぐに帰ってくることになるかもしれないし、何日も滞在しなければいけなくなるかもしれないし、どちらになるかなんて、あたしには検討がつかなかった。  少しだけ大きめのトートバッグに必要最小限を詰め込み、必要ならば向こうで買えばいいだろう。そう考えて、貯めていた貯金を確認した。  凌二と別れてから、数ヶ月は仕事に没頭すれば忘れられると

          キミと嘘、プラス心。9

          キミと嘘、プラス心。8

          第七章はこちら 第八章 関わり「じゃあ頼むな永田、彼女ほしくなったらいつでも言って、すぐに紹介するからっ。お疲れーっ」  帰る支度をして、いの一番に出て行く橋本を見送って、俺は手にした茶封筒を見つめる。  一体、何が入っているんだろう?  茶封筒に入れて持って来いって、よっぽど緊急に必要なものってことだろ? データとかじゃ送れないのか? データに残ると……困るものなのか?  目の前の封筒を見つめながら、色々と考えてしまう。  〝おくだえり〟が〝奥田江莉〟だった事で、どうし

          キミと嘘、プラス心。8

          キミと嘘、プラス心。7

          第六章はこちら 第七章 動き出す 静かな部屋のカーテンの隙間から光が差し込む。普段はこんな遮光カーテンを引いて寝てしまったら、母に起こされない限り起きることが出来ないあたしは、その僅かな隙間の光で目を覚ますことができた。  ここは、モヨの家だ。広い一室を借りて寝たはいいけれど、あまりに場違いな感じでしばらく眠れなかった。たぶんついさっき目を閉じたばかりだったと思う。  ベッドサイドのテーブルに置いておいたスマホを手にとって、寝たまま時間を確認する。  午前五時二五分。  や

          キミと嘘、プラス心。7

          キミと嘘、プラス心。6

          第五章はこちら 第六章 姉と弟────東京  奥田ビルディング。  広いロビーに出勤してくる社員が次から次へと流れ込んで来る。高く開放感溢れるロビーの真ん中には、噴水が涼しげに水しぶきをあげていた。  一際響くヒール音と共に、スッと姿勢を正して凛として歩く江莉の姿。周りの社員たちは一斉に頭を下げて挨拶をする。  江莉は気品がありながらも親しみやすく、仕事の明確さ、正確さを持ち合わせているからと、会社の中ではどの世代からも絶大的に慕われていた。 「おはようございます。昨日頼

          キミと嘘、プラス心。6

          キミと嘘、プラス心。5

          第四章はこちら 第五章 モヨの過去 「じゃあ、俺帰るな。明日仕事早いんだ」 「えー、泊まってかないのー?」 「泊まるか! まぁ、また誘ってくれよ。今度は俺も誰か連れてくるから」  モヨのお泊まりの誘いにツッコミを入れつつ、孝弥は帰る支度を始めた。 「詩乃は泊まってくよね⁉︎」  すっかり帰り支度の整った孝弥を見ながら、モヨは涙目であたしの方を向くから、なんの準備もしてきていないあたしは返事に困ってしまう。 「うちなんでも揃ってるから大丈夫だよ。あたしのなんでも使って

          キミと嘘、プラス心。5

          キミと嘘、プラス心。4

          第三章はこちら 第四章 繋がり  眠い。今、何時だろう。  そう思って壁に掛けてある時計に目を向けた。時刻はもうすぐ日付を超えようとしていた。  こんな集中力では成長も技量も上がらないのでは? と疑いたくなってくる時間帯に、詩乃は意識が飛んでしまわないように一生懸命に目を凝らした。  目の前の何も語らない首だけのカット用ウィッグの視線が、鏡ごしに薄ら笑いを浮かべているようにも見えてくる。  すみません。お客様だったらこのカットではクレームものです。ため息をついて、また一から

          キミと嘘、プラス心。4

          キミと嘘、プラス心。3

          第二章はこちら 第三章 奥田江莉  ────東京都心  高層ビルの最上階の部屋で、窓一面の夜景を背にグラスに注いだワインを口に含んだ。それを持つ手は、小刻みに震えていた。  そっと、グラスをテーブルに置くと、両掌をテーブルについて体をそこに預けるように俯いた。耳にかけていた髪の毛がハラリと頬をなぞる。  瞬間、込み上げてくる笑いに静かに肩を震わせた。  おかしいわけじゃない。心の中は真っ暗な部屋と同じで感情なんてものは感じない。  ただ、ひたすらに、恐怖心がふつふつと募

          キミと嘘、プラス心。3