下村健一

◆報道現場25年。「筑紫哲也NEWS23」「サタデーずばッと」等で取材キャスター ◆民…

下村健一

◆報道現場25年。「筑紫哲也NEWS23」「サタデーずばッと」等で取材キャスター ◆民間任用で内閣審議官。民主&自民の3政権で、首相官邸広報担当 ◆東大・慶応大・関西大の教壇を経て、白鴎大特任教授 ◆令和メディア研究所主宰、インターネットメディア協会 初代理事/リテラシー部会担当

最近の記事

映画『福田村事件』――ホラーで愛国でリテラシーな超問題作

ちょうど100年前の明日(1923.9.6)、現在の千葉県野田市で発生した虐殺事件をベースにした、異色の劇映画『福田村事件』(森達也監督)。“特別支援者”6人の一角に敢えて顕名で連なった者の責任として、全国公開を機にコメントを記しておきたい。 観終えても続くホラー  とにかく、これは今まで僕が観た中で最恐のホラー映画だ。他のホラーは、ゾンビだったり特異な殺人鬼だったりと恐怖の対象が《他者》なのに対し、史実に基づくこの作品では恐怖の対象は《我々》自身。後半これでもかというほど

    • 安倍事件1ヵ月…進む《3つの神格化》

      安倍元首相銃撃事件から、今日で1ヵ月。蛮行への憤りは収まらないが、私たちは今、[統一教会・山上容疑者・安倍政治]の《3つの神格化》が静かに同時進行している可能性に敏感でなければならない。 【1】統一教会の神格化  この1ヵ月の大々的な統一教会報道の中で、先月下旬、私が開講しているメディアリテラシー系の授業の感想欄にある学生がこんな質問を書いてきた。  どんなに批判的なトーンの報道であっても、“悪名高き”と“名高き”は紙一重。この1ヵ月で、「統一教会」という初耳の存在への好

      • 「批判的思考」なんて勇ましいコト、私は言わない

         “?” とか “!” とか、“☆” とかアンダーラインとか。私はいつも、色々と衝動的に書き込みながら本を読む。でも、↑こんな風に表紙の言葉にマルを付けたのは、たぶん初めてだ。最近出た、ちょっと耳新しいサブタイトルの本「吟味思考を育む」ーーー“吟味思考”って、何だ?  同書の編著者の山脇岳志さんが、その問いに答える論考を昨日「朝日新聞GLOBE」に載せた。メッチャ共感なので、後で全文お読み頂きたい。 クリティカルシンキングは、そりゃ大事だけれど 情報教育の現場では、やれ「

        • 火砕流から30年の、サバイバーズ・ギルト

          「今までの所とはだいぶ違……アッ今、手前に、我々のいる所まで猛烈に火砕流が迫って来ています! これ危ない、逃げよう逃げよう! ダメだよ逃げなきゃ、来るよ、来る来る来る‼︎ 逃げなきゃダメ、早く早く! 来るよ‼︎ 来た来た来た、火砕流来たよー! 逃げろォーー!!」 半分裏返ったような僕の叫び声が、先週木曜夜、久々にTBSの画面から流れた。 43人の犠牲者を出した「雲仙・普賢岳の大火砕流から30年」を報じる、『ニュース23』の特集。最大時速100キロ以上で自分に向かって突進して

        映画『福田村事件』――ホラーで愛国でリテラシーな超問題作

          「Fukushima50」とNHK「最悪のシナリオ」

          10年前の3月11日、私は民間任用(2年満期)の内閣審議官として、メディアが立ち入れぬ首相官邸の最奥部で、事態の渦中に居合わせていた。 そんな人間の1人として、テレビ各局の「3・11」10年関連特番を見ていて、特に心揺さぶられた番組が2つあった。 1つは、日テレの金曜ロードSHOW!「Fukushima50」(去年の劇場公開とは違った意味で) 。 もう1つが、NHKのETV特集「原発事故 ”最悪のシナリオ”/その時誰が命をかけるのか」。 ーーーそれらについてちょっと書こう

          「Fukushima50」とNHK「最悪のシナリオ」

          生徒達との対話/メディアリテラシーFAQ①

          光村図書と私がコラボした「コロナの不確実情報に振り回されないための動画」教材が、先月から各地の学校現場で授業の中に採り入れられている。教科書会社が、授業中の単元(小学5年国語「想像力のスイッチを入れよう」)を現実の時事問題に適用した教材を緊急配信するというのはかなり異例のことで、お陰様で感度良好な先生方から歓迎していただけた。 私がこうして全国の小・中・高・大学を訪問して(or最近ではリモートで)メディアリテラシーの授業を行うようになって、もう20年ぐらいになる。終了後に子

          生徒達との対話/メディアリテラシーFAQ①

          追悼 大林宣彦さんーー訃報が触れていない、もう1つのライフワーク

          大林宣彦監督が亡くなった。昨日一斉にそれを報じたメディアの追悼記事には、数々の映画作品の功績や、平和を強く希求した人物像が揃って描かれていた。 だがーーー私が直に拝見してきた大林さんには、それらの記事にほとんど言及されていない《もう一つの思い入れ》が、確かにあった。 童話を作る子ども達に、余命宣告後に語ったこと実は大林さんは、自分が映像の作り手のプロであるというだけでなく、アマチュアの人たちの様々な創作活動を応援することにも、それはそれは熱心だったのだ。 映像の分野だけ

          追悼 大林宣彦さんーー訃報が触れていない、もう1つのライフワーク

          リモート化に消極的なニュース情報番組の“感度” って、どうなの?

          家からテレビ局まではるばる外出してきた出演者たちが、「外出を控えよう」と視聴者に呼びかける。この奇妙な光景に、今変化が進行中だ。 こういう移行期には、番組ごとの“感度”の差が見えてくる。 モーニングクロスのチャレンジに、エールを!今朝から、TOKYOMXテレビのニュース情報番組『モーニングクロス』が、とうとうコメンテーター全員リモート出演に切り替えた。 今後当分は、リモートが使えない等でスタジオを希望するゲストさんを除いては、在宅出演を原則にするという。 スタジオには、堀

          リモート化に消極的なニュース情報番組の“感度” って、どうなの?

          デマに負けないーー“コロナ後”に向けて、ヨルダンの ある情報教育プラン

          コロナ禍で、世界中のNGOなどの市民活動も今、活動停止などの窮地に直面している。各地で子ども達の教育支援を実践している国際NGO「国境なき子どもたち」も、その1つ。 例えばヨルダンでは、松永晴子派遣員が頑張ってきた。彼女の活動拠点の1つは、シリアの内戦から脱出して来た人々が数万人も暮らす、ザアタリ難民キャンプ[写真上/8bit Newsより]。東京ドームの112倍という広大な“仮の町”にある仮設教室で、小中学生達に教育プログラムを提供してきた。 ↑(昨年3月、キャンプ内で

          デマに負けないーー“コロナ後”に向けて、ヨルダンの ある情報教育プラン

          今すぐ! コロナ報道が取るべき“戦時態勢”

          コロナ禍が、いよいよ深刻な段階にさしかかってきた。メディアも、いよいよ平時とは発想を切り替えた《戦時下の報道》のあり方を考えるべき時だ。 戦時の報道と言うと、大本営発表の情報統制がすぐ連想されるが、今回そこに陥っていかないためにも、各報道機関の先手を打った《自律》が強く求められる。 [1] まずは買い占め現象の報じ方、大至急抑制を!直近の課題は、買い占め現象の報じ方。昨夜の都知事緊急会見以降、あっという間にまた各メディアが「再び買い占めが始まった」と空っぽの商品棚の報道な

          今すぐ! コロナ報道が取るべき“戦時態勢”

          地下鉄サリン事件ーー25年目の全駅献花巡り

           今日(3/20)、東京都心の6ヶ所の地下鉄駅構内に、こんな献花台がひっそりと設置された。ちょうど25年前の今朝8時頃、丸ノ内線・日比谷線・千代田線を大混乱に陥れた、世界史上初の都市型化学兵器テロ事件。その犠牲者が出た現場だ。  毎年この日は、テロのメイン・ターゲットだった霞ヶ関駅にメディアが集中するが、実はその6駅全てを巡って静かに献花している事件被害者(とその支援者)の一団がいる。ガイド役を務めているのは、NPO「リカバリーサポートセンター」(以下“RSC”)。6500

          地下鉄サリン事件ーー25年目の全駅献花巡り

          緊急事態に臨んで――― 3・11当時の官邸から、今の官邸に伝えたい事

          2011年の今日3/11―――突然大震災と共に襲ってきた、福島原発事故。危機は短時間でピーク状態に駆け上がり、首相官邸は、目に見えない放射性物質の拡散と格闘。事故現場の状況を判断するデータが得られぬ中、正解も出口も見えないままに時々刻々の判断を迫られていった。 そして、2020年―――今度はじわじわと襲って来た、新型コロナウィルス。危機は次第に増大してゆく形で始まり、首相官邸は、目に見えないウィルスの拡散と格闘。なかなか検査データが増えぬ中、正解も出口も見えないままに時々刻

          緊急事態に臨んで――― 3・11当時の官邸から、今の官邸に伝えたい事