高柳カヨ子

精神科医/元法医学教室助手/少女批評家/Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」…

高柳カヨ子

精神科医/元法医学教室助手/少女批評家/Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」/『夜想ーゴス特集』インタビュー/『夜想ー少女特集』評論/『S-Fマガジンー伊藤計劃特集』アーバンギャルド論/gallery hydrangea「少女観音」/霧とリボン「少女の聖域」

マガジン

  • 少女主義宣言

    少女とはなにか。少女であるとはどういうことか。 あらゆる時代と時間を超えた少女たちに捧げる少女論。 「不在の少女」を探して言葉の森に分け入る試みを始めよう。 ヘッダー:「運び屋」chigusa 作

最近の記事

294回 What are you doing?

SNS疲れ、という言葉がある。 X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、YouTube、LINE、Threads、Tumblr、BlueSky、TikTok。そのどれかに触れていない人は珍しいだろう。自分から積極的に書き込んだりはしていなくても、見ているだけ、たまにリアクションするだけ程度なら、殆どの人がなんらかのSNSには関係していると言える。好きなアーティストや友人知人、たまたま見かけて気になった人など、どんどんフォローを増やしていけば、流れる投稿の

    • 293回 ブライト・クリスタル

      アメジストが好きだ。アメジスト、紫水晶。 2月の誕生石だそうだが、誕生日は8月なのでそれとは関係ない。紫色が好きなことに加え、水晶という石自体に惹かれるからだろう。貴石を用いたアクセサリーでも、ついアメジストが付いているものを選んでしまう。 レアストーンというわけではなく比較的産出量も多いので、それ程高価な石ではない。手頃な存在でありながら、その高貴な紫色からして何か特別な魅力を携えているのではないかと思わせるアメジストは、紫水晶という名前の通り水晶の一種である。 水晶を知

      • 292回 頭痛肩こり龍之介

        いわゆる頭痛持ちというやつである。 今でこそなんとか鎮痛剤を飲まなくてもやり過ごせることも多いが、若い頃は日常生活に支障をきたす程の痛みがしょっちゅうあったため、頭痛さえなければどんなに楽かと恨めしく思っていた。月の半分くらい、程度の差はあれど頭が痛いというのは、結構しんどいものだ。酷い時には起き上がれず、嘔気があるので食べる気にもなれない。寝ていても痛いのだが、起きて頭を動かすともっと痛くなるので、どちらにせよ辛い。 あらゆる痛みがそうだが、その痛みを経験したことが無い人に

        • 291回 回転を加えてもっと

          逆上がりが出来なかった。 小学生で出来なかったのだから、もちろん今でも出来ないだろう。 逆上がりが出来るか出来ないかは、子供にとっては重大な運命の分かれ目である。逆上がりが出来ないということは、つまり運動神経が悪いとの烙印を押されてしまうからだ。 体育自体は別に苦手ではなかったが、体育の中でも得意なものと苦手なものが結構はっきり分かれていて、その苦手なものの中でも鉄棒は特に苦手だったのだ。 もう半世紀も前のことなのに、今でも自分は逆上がりが出来なかったなと思い出すというのは、

        294回 What are you doing?

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        • 少女主義宣言
          294本

        記事

          290回 Charley Horse

          子供の頃からよく足が攣った。所謂こむら返りというやつである。 寝ている時のみならず、ただ立っているだけでも、突然ヤツは襲ってくる。激痛に悶絶しながらひたすら足を引っ張って伸ばしたり揉んだり、しばし唸りながら格闘するが、もう大丈夫かなと油断してちょっと足先を動かした途端、更なる試練に襲われる。子供の時は本当に毎日攣っていたような気がするが、そんなに運動していた訳でもないのに何故だろう。 大人になってからは流石に頻度は減ったが、それでも旅行に出掛けてちょっと歩き過ぎたかなという時

          290回 Charley Horse

          289回 羽ばたきはやまない

          今年もイワツバメがやってきた。 通勤途中のクルマの前を横切るその小さな姿は、初夏の訪れを告げる風物詩だ。これから田圃に水が入ると小さな虫も沢山発生するので、イワツバメも張り切って狩りまくることだろう。 高速で飛びながら空中でひらりと方向転換をするその機動力は、いつ見てもなんてよくできているのだろうと感心するばかり。夕暮れに飛び交うコウモリのヒラヒラと曲線を描く飛び方とは異なる、直線的に突っ込んでいくかと思うと急角度で方向を変える姿は、まるで小さな戦闘機のようだ。 イワツバメ

          289回 羽ばたきはやまない

          288回 心地よく秘密めいた場所

          墓参りにはずいぶん長いこと行っていない。 最後に行ったのは父親が亡くなった時だから、10年前か。 とにかく実家の墓がある寺は東京北部にあり、私が住んでいる場所からは遠くて行きにくい。おまけに現在は実家も引き払ってしまっているため、墓参りどころではない。 そもそも3回忌などの法事もやらなかったくらいドライな感覚をしているので、墓にも墓参りにも執着がないのだ。信州に住んでから、墓を守るために両養子(夫婦揃って養子に迎えること)をとったという話をよく聞くようになって、驚いた。それだ

          288回 心地よく秘密めいた場所

          287回 サニーサイドアップ

          「卵は物価の優等生」と言われて久しいが、最近ではどうもこれは怪しくなっている。 そもそも物価の上昇や円安などの影響を受けないわけがないのであって、それを安価なまま維持するとなればどこかに歪みが生じるのは当たり前だろう。 卵の安売りは、1人1パックまでと書かれたスーパーのチラシの目玉であった。ただそういった安売りの卵は、すぐに割れてしまいそうな程に殻が薄かったり、黄身が盛り上がらずのっぺりと潰れていたりと、どこか頼りない。 最近では売られている卵の種類も様々で、餌となる飼料の良

          287回 サニーサイドアップ

          286回 アップデートの準備ができました

          最近評判になったTVドラマのキーワードは「アップデート」だった。 昭和と令和の二つの時代を行き来することで、当時当たり前だった価値観が今や古く差別的で時代にそぐわないものであることを浮き彫りにするという、秀逸な脚本である。そしてこのドラマが優れているのは、単に前の時代が問題だったと糾弾するのではなく、現在もまた時代が進めばあの時の常識はおかしかったと言われるであろうという、相対的な可能性をきちんと示していたところだろう。 いつの時代も後から振り返れば、なんであんなことが罷り通

          286回 アップデートの準備ができました

          285回 Under Pressure

          年度末になるので早くストレスチェックを受けろと言われて、お馴染みの質問にPCで答えてきた。毎年やらされているので慣れたものだ。サクサクとチェックを入れて、ものの5分程で終了。 非常に沢山の仕事をしなければならないとか、注意を必要とする仕事だとか、頭痛や腰痛があるとかの質問に、うむうむと頷きながら「常にそうである」に沢山チェックを入れているにも関わらず、忘れた頃にやってくる結果には「大したことないですね(意訳)」と書かれているのはどうしたわけか。 このストレスチェック、201

          285回 Under Pressure

          284回 歌の翼に

          驚くべきことに、かつて歌を習っていた。 いや、これを読んでいる方は驚かなくていい。自分で驚いているのだ。 かつてと言っても小学生の頃だから、今はもう昔ではあるのだが、それでもしっかりお教室に通って習っていたにもかかわらず、このていたらく。 つまり何が言いたいかというと、私は歌が下手なのである。 カラオケに行く機会はまずないのだが、もし行ったとしても徹底的に他の人の歌を聞く側にまわる。聞くのは好きだ。下手でも上手でも、他人が歌っているのを見たり聞いたりするのは、非常に興味深い

          284回 歌の翼に

          283回 My Hair is Good

          最近若い人の髪の色が以前より暗くなったような気がする。 茶髪、という言葉も今はあまり聞かない。もちろん髪を染めている人は沢山いるが、同じ染めるにしても黒に近い暗めの色を選んだり、明るい色はせいぜいメッシュで入れる程度という印象を受けるのだ。 コギャルやアムラーが流行った90年代、病院の看護師さんたちの髪の色はそれはもう明るかった。殆ど金髪に近いまでに色を抜いた髪のスタッフもいて、結構自由だったと思う。面白いことに、髪型は清潔を保つために縛るように指導されていたようだが、髪の色

          283回 My Hair is Good

          282回 アブラハダブラ

          1970年代はオカルトの時代だった。1973年には、『ノストラダムスの大予言』『恐怖新聞』『うしろの百太郎』が発行されている。これだけで何かむずむずするような時代の空気が伝わらないだろうか。 言わずと知れた『ノストラダムスの大予言』。著者の五島勉が晩年「人類滅亡の件は間違っていた」と言ったとか言わないとかだが、今更そんなことを言われても。 そもそもノストラダムスというのは16世紀フランスの医師・詩人・占星術師であった実在の人物で、彼の4行詩形式で書かれた『ミシェル・ノストラ

          282回 アブラハダブラ

          281回 きっと来る

          意外に思われるかもしれないが、結構ホラー好きである。 昨今はホラー小説もホラー映画も隆盛を極めており、よりどりみどりの様相だ。TVやYouTubeなどでも、ホラーを扱った番組は人気だと聞く。 ホラーと一口に言ってもその中身は幅広い。またその内容もモンスターパニックにサイコホラーにジャパニーズホラーなどなど、そして怖さやグロさの程度も子供でも読める/観れるものから、R18のレイティングがされたものまで、様々だ。 なぜ人はわざわざ怖いものを見たがるのか。 人間の恐怖の根本は、喰

          281回 きっと来る

          280回 Goodnight、Sweetheart

          「枕が合わない」という言葉があるくらい、枕は睡眠にとって重要な位置を占める。 我々人間は人生の1/3は寝ているので、その毎日の眠りに使う枕が大事なのは当たり前だ。掛布団や敷布団が合わないということはあまりない。厚みや素材などを季節によって替えれば済むことである。身体に合わない布団などという言い方は、あまり聞いたことがない。 しかし枕となると少々話が違ってくる。枕は布団に比べて、極めてパーソナルな存在と言っても良い。頭の形や首の角度、寝る姿勢や寝返りの頻度など、ひとりひとり異な

          280回 Goodnight、Sweetheart

          279回 推しも推されぬ

          世の中、推し活が盛んである。 推し色、推し香水、果ては推し概念というものまである。 誰も彼もが誰かや何かを推しているわけではなかろうが、今や経済活動にまで多大な影響を与えているであろう、推しという存在。 「推し」という言葉が登場したのは、モーニング娘。やAKB48などといった大人数のアイドルが出てきた頃と言われている。 アイドルオタク、所謂ドルオタと呼ばれるファン達の間で、グループの中で自分が積極的に応援するメンバーを「推しメン」と言うようになったのが起源とか。好きなメンバ

          279回 推しも推されぬ