「笑わせたい」気持ちはどこから来るのか

「めちゃウケる」「おもしろい」「笑える」そういう言葉が嬉しくて、長年おどけている。

だって笑ってほしいじゃない。みんな笑顔なのがいいじゃない。仲良くなれるし、空気も柔らかくなるじゃない。やったね、最高。

おもしろいことが起こるとすぐメモしてネタにする。おもしろいことがないと、おもしろいことを作ろうとする。なんでもネタにして、なんでもかんでもおもしろかったことに変換しようとする。

笑ってもらえそうならなんだってやる。ビキニラインのムダ毛だって、垂れ乳だってコラムのテーマにするし、三段腹だって見せるし、変なおじさんの踊りだってするし、ちりめんジワまみれの下瞼だって晒す。(過去記事などご参照ください)

子どもが、友だちが、みんなが笑ってくれたら私も嬉しい。自分の口から出た言葉で、この人の心が少しほぐれたかもしれない、この人が一瞬でも辛いことを忘れられたかもしれないなんて、すごく嬉しいじゃない？

どんなイベントも、私が参加するからには絶対に盛り上げたいと思ってしまうし、子どもの学校行事では、フロア(子どものクラスメイトたち)を沸かすのに必死すぎて肝心の息子の演技を見逃したこともある。

私には、真実や正義を追求したり、難しい社会問題を解決したり、社会を良くしたり、役にたつようなことはできないけれど、隣にいる人をクスッと笑わせることならなんとかできるかもしれない。

真面目なことも、暗いことも、悲しいことも、怒れることも、おもしろおかしく変換して話して、書いて、少し楽しく塗り替えられる。それが私の長所で、今世で唯一の徳を積めるポイントだと思っていた。その徳で来世は高橋一生の親族に生まれ変わるつもりだった。

でも、本当にそうなんだろうか？　私の「笑わせたい」は善いことで、純粋な愛からくるものなんだろうか？　

「笑わせたい」一心で、あんなことやこんなことに挑戦して、写真を撮って、みんなに話して、見せて、書いてきたつもりだったけれど、「笑わせたい」だけではなく、相手の笑ってる様子が目に見えなかったり、反応が返ってこなかったりすると、満足していないことに、ふと気がついた。

おおん？　ここまでやって笑わないとは、これいかに？　こっちはプライドすてて体張って踊ってんのに。

笑ってもらいたくて頑張ってんだ。「フウン…」じゃないのよ。すかしてないで笑ってくれよ。そして、笑ったことをしっかりアピールして、私を満たしてくれい、という欲求が確実に自分の中にはある。

これってもしかして「おもしろいでしょ、私すごいでしょ、だからみんな私を好きになって？」なんじゃないだろうか？

私は「おもしろいね、この人。きっといい人に違いない。好きだよ。敵じゃないよ。味方だよ」を得るために必死になっているのかもしれない。

その正体を見て見ぬふりしているうちに「笑わせたい」だけが前面に出てきて、中身の何もない、ビジネスおもろー人間になってしまっている気がしていた。

悲しい気持ちを抱えておどけてみたり、落ち込んだ気持ちを自虐にしてみたりするのも、それを利用しているのかもしれない。
「おもしろおかしくしているけれど、実は悲しいんだね、強がっているんだね、いじらしい、共感できる、味方してあげたい」

おもしろくないと、聞いてもらえない。おもしろくしないと、つまらない。おもしろくしないと、価値がない。要らない。頭が悪い。暗い。きもい。ウザい。

私の「笑わせたい」は、純粋な愛からくるものなんかじゃなくて、もしかしたら自分の存在を認めてもらうための、姑息な手段なのかもしれない。

「電話の中で笑いを抑えるのに必死でした」
「笑いすぎてお腹が痛い！」
「嫌なこと一瞬忘れて笑えました」
こんなことを言ってもらえると、あぁ、私は認められている。この人の役に立ったんだ。存在していてもいいんだ。と安心する。

＊＊

「おもしろい」には種類がある。
興味深い、勉強になる、価値のあるという意味の「おもしろい」と、
ふざけていておもしろおかしい、頭空っぽで笑える、英訳してファニーな方の「おもしろい」だ。

本当は、興味深くて価値のある知識をたくさん持った「おもしろい」人に憧れてやまない。
しかし、興味深い方の「おもしろい」を持っていない私はどうしたってしょうもないネタや、ファニーの方の「おもしろい」をたくさんたくさん仕込みながら生きるしかないんだ。

みんなを笑顔にしたい、幸せにしたい、という隠れ蓑を使って、自分の歪んだ承認欲求を満たす。それが私の「笑わせたい」なのかもしれない。

あーあ。気持ち悪くて本当にうんざりするけれど、もうそうせずにはいられない。

今日も私は隣の人をあの手この手で笑わせて、生かしてもらうことにしよう。

ー おっと、この記事は一切笑えないな……まずい。

もしかすると後ほど、焦った私自身による大幅な修正が入って、全てがおっぱいやお尻がどうのこうのという記事になっている可能性も十分にあるので、そちらもお楽しみに。（ない）

おしまい