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「マスクはエアロゾル製造機」は誤り

「マスクはエアロゾル製造機」は誤り。飛沫がマスクのフィルターを通ると、より細かな粒子に霧化され、エアロゾルを放出するので、マスクはかえって有害だという説があり、マスクを「エアロゾル製造機」と揶揄するツイートが散見されるが、いずれも論文を恣意的に切り取った誤情報である。

【解説】
誤情報を拡散したツイートと、曲解された論文の例を以下に記す。

元の論文を確認すると、ノーマスクより放出量が多いのは手作り布マスクのことで、サージカルマスクとKN95はノーマスクの約6倍減少とある。この論文の結論は、マスク装着はエアロゾル粒子の放出を防止できるとするもの。

◼️Scientific Reports (2020/9/24)
Efficacy of masks and face coverings in controlling outward aerosol particle emission from expiratory activities
呼気活動から外向きに放出されるエアロゾル粒子の抑制におけるマスクとフェイスカバーの有効性
「サージカルマスクとKN95の両方は、フィットテストなしでも、マスクを着用していない場合と比較して、会話中と咳をしている間の外部への粒子放出率をそれぞれ平均90%と74%減少させ、外部への放出を減少させる有効性を裏付けた。」
https://www.nature.com/articles/s41598-020-72798-7

元論文を確認すると、マスクフィルターによるエアロゾル化は現象として実験で示されているが、それがノーマスクより有害とする記述はどこにもない。これは寧ろ感染対策にマスクを推奨している論文である。

◼️AIP Publishing (2022/5/10)
Penetration and aerosolization of cough droplet spray through face masks: A unique pathway of transmission of infection
マスクからの咳飛沫の侵入とエアロゾル化: ユニークな感染経路
「このことは、呼吸飛沫によるウイルス感染を防止するにはソーシャルディスタンスの確保と多層マスクの両方が必要であることを示唆している。加えて、マスクはウイルスが付着したナノ粒子とともに飛沫をブロックすることが実験で示された。さらに、このデータは、ウイルス放出ナノ粒子がマスク上に存在する形態学的な隙間に封じ込められることを示唆している。」https://pubs.aip.org/aip/pof/article/34/5/052108/2846675/Penetration-and-aerosolization-of-cough-droplet

元論文を確認すると、「霧になる」とするのは単層か二層のマスクの話で、現在の標準的な市販品である三層マスクのことではない。寧ろ三層マスクは霧化による放出を防止するとあり、結論でも三層マスクは感染対策に有益だとされている。

◼️SCIENCE ADVANCES (2021/3/5)
On secondary atomization and blockage of surrogate cough droplets in single- and multilayer face masks
単層および多層フェイスマスクにおける二次霧化と咳液滴の遮断について
「単層/二層マスク材料の…(中略)…咳液滴の二次霧化の可能性は、マスクの有効性を決定する際に考慮する必要がある。三層マスクは、これらの液滴を効果的にブロックすることができるため、COVID-19や類似の呼吸器疾患に対する重要なツールとして広く使用される可能性がある。」
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abf0452

同じ理屈でよく誤情報として流されるFögen効果については、以下を参照ください。

◼️「カンザス州マスク義務化の結果、Foegen効果で致死率が1.5倍」は根拠不明
https://note.com/osamu_iga/n/n2f60541ecc0d