スキが学びを駆動させる
「古本と喫茶 おくたま文庫」 店主の岡村です。今回は”学び”をテーマに文章を書くというありがたい機会をいただいたので、ブックカフェを運営していく中で経験してきた学びや、これから深めていきたいと思っている学びについて書いてみたいと思います。
学びには大きく分けて3つのパターンがある
「必要に迫られて」 学ぶ
ここで言う学びは、学校受験などに際し英検や漢検を取得するためにする勉強や、配属された部署で専門的な知識が必要になりTOEICや宅建、簿記などの資格を取得するためにする勉強のことを指しています。これらは、まず目的ありきのため ” 興味・関心 ” とは離れたところから、突然やってくるもの と認識しています。個人的な最近の活動でいうと、奥多摩でブックカフェを開業するにあたり古物商許可証(古本の売買をするために必要)と食品衛生責任者(飲食店を経営するために必要)の資格を取得しました。食品衛生責任者の資格を得るためには、食品衛生学・ 公衆衛生学・食品衛生法など一日6時間の受講が必須です。(座学が苦手な私にはとても辛かった)それぞれ持っていなければならない知識ですしとてもためになりましたが、勉強していてあまり楽しくありませんでした…
「痛い目にあって」 学ぶ
失敗の多い人生なので、体得してきた学びは多い方です。
運営しているお店に関連した話だと、開業してしばらくは適正な「仕込み量」が分からず、売れ残ったバインミーを延々と食べ続けなければならなかったことや、書籍が詰まったダンボール箱を急に持ち上げ、ぎっくり腰になってしまったことなど(重たい荷物の持ち上げ方にはコツがあることを学びました)、あげればキリがない程沢山の失敗をしてきました。思い出すと今でも赤面してしまうことや、傷口が疼くことばかりです。(店舗賃貸借契約のこととか…)あまり楽しい学び方ではありませんが、痛い目をみると頭が冴えてよく考えるようになるし、同じ思いをしないよう新しいアイデアがどんどん湧いてくるので、あれやこれやと考え過ぎて踏み出せないでいるよりかは、まずは動いてみて失敗しながらでも少しずつ前に進む方が私には合っているような気がします。それに、身体で覚えた痛み(学び)は必ず次につながる と思っているので今ではあまり失敗が怖くなくなりました。
「能動的に」学ぶ
この場合は、まず ” 興味・関心 ” があり、「もっと知りたい。」「もっとちゃんと理解したい。」という、学びに対する知識欲が駆動しているため、抵抗なく ぐんぐん進んでゆけます。この状態にあると、もはや学んでいるという感覚すらありません。
そして、今まさに私が学びを深めたいと思っているのが、大好きな「日本酒」についてです。一切飲めなかった日本酒にハマることになったきっかけは、5年前になんの気なく手に取ったグルメ雑誌でした。そこで加茂錦酒造の杜氏・田中悠一さんが特集されていて、その内容にとても感動しワクワクしたのを今でも覚えています。当時、新潟大学工学部の学生だった田中さんが、家業である日本酒造りの工程を専門分野であるテックの力でアップデートしたり、下戸だったお父さんの代わりに日本酒を千本ノックで試飲しながら人気銘柄を世に送り出す、というような内容だったと記憶しています。飲めないけれど、この人が作る日本酒はどんな味なのか確かめてみたい。そう心を動かされ、初めて自分で買った日本酒がこの加茂錦酒造の荷札酒でした。飲んでみると、はるか昔上司にお酌してまわった日本酒とは違い、芳醇かつクリアで上品な味でした。(飲めないと思い込んでいただけで、実は体質との相性が良かったことも判明。)材料が米と水だけなのに(実際には米麹・酵母菌・乳酸菌なども必要)なぜこんなにも多種多様な銘柄があるのか…。他の日本酒も飲んでみたい!そこからは毎月のように近所の酒販店(ここが運良く、品揃えが素晴らしい地元の銘店でした!!)に通い、店主と話しながら沢山の銘柄を覚えていきました。その後、どうせなら更に美味しく飲みたい、と料理とのペアリングも試すようになり日本酒ライフがますます楽しくなっていきました。今では美味しい日本酒を教えてほしいと飲みの席に呼ばれたり、とうとう自分の店でも日本酒を提供するようになりました。
今年は、更に自信を持ってお客様に日本酒をおすすめできるように、そして何より自分自身が日本酒の世界をもっと楽しめるように、唎酒師の資格を取得しようと思っています!(ここまで書き終えて、改めて自分の日本酒への熱量の高さを再認識しました。)もし、おくたま文庫にお越しくださることがありましたら、是非店主おススメの日本酒をお試しください!
◇ 飲んだことのある日本酒を記録しています。
※石川県能登地方を震源とする地震により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。日本酒の宝庫である北陸の酒蔵さんも被害に遭われています。今年は積極的に北陸の日本酒を飲んで、人に広めることで応援したいと思います。