E99: 水曜日に、口紅を…
「長生きするのはええんじゃけど、痛いのはやっぱり困るんでぇ…」
祖母の話をよくしてきたが、それは母方の祖母。
90代も後半になる父方の祖母は
今も元気で暮らしている。
ちなみに2人の祖母同士はとても仲が良かった。
私は仕事を調整し、タイミングを見計らって
定期的にローカル線に乗り、祖母に会いに行く。
母方の祖母が亡くなった時、後悔だらけだった…。
だから、私は心に決めたのだ。
父方の祖母に対して同じ失敗はするまい、と。
孫として、今はやれることをとことんやっている。
「孫が50代って、私しゃぞっとするよ」
「俺の50代より、そっちの100歳にびっくりしたら?」
「周りで噂しとらんかねぇ…?」
「なんで? どんな?」
「『あのお婆さんいつまで生きとるんじゃろう』って、そんなこと誰か言うとらんかね?」
「……誰も言うてへんよ。そんなん気にせんと120歳まで生きておくれ」
表面上は笑顔でいたが、内心ドキッとする。
自分が生きていることで、実は周りが煙たがっていないか、100歳前まで生きるとそんなことを考えるのか…。胸が痛い。そんな思いはさせたくない。
耳も聞こえんし、
足は痛いし、
リハビリは辛いし、
じいさんは、迎えに来てくれんし、
私はいつまで生きるんじゃろうの?
多分本音だと思う…。でも…。
そんなことを言いながら、
100歳のお祝いに市役所から何をもらえるのか
そんなことを気にしていたりする。
水曜日のリハビリが嫌だ、嫌だと言いながら、
実は水曜日になると、
みずからしっかり髪をとかし
口紅をくいっと引く。
「リハビリの先生がね、イケメンなの❤️」
近くで見守る叔母が、
私にそっと耳うちして教えてくれた…
読んでいただき、ありがとうございました。
【66日の14日目】
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