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派遣でトラックから落下した

今日は夜勤で初めて"助手"という役割を任された。その内容はクソでかい配送トラックの助手席に乗り、社員と30分くらいかかる場所に向かい、そこにあるデカい荷物を後部の倉庫に乗せ、帰るだけの仕事だ。

途中までいつもの仕事をしてて、時間が来たので「助手なので行ってきます」と言ったら同じ派遣サイトのお兄さんが「おっ、いいな〜。最高ですよ助手」と返された。そんなに楽なのかと得した気分になった。これからとんでもない損をするとは知らずに。

相手は親くらいの年齢の優しそうなおじさんの社員だった。初めてだから雑談とかするべきか分からず、乗ってから目的地に着くまで一言も喋らなかった。「移動時間も勤務なので寝たらいけない」と説明されていたので、うとうとしては目をガン開く作業をしていた。車高が高すぎて新鮮だった。おじさんは途中途中であのちゃんやラランドサーヤのラジオを流していた。

いざ着いたので僕は事前に教えられた通りに、トラックの背中を開けて、扉を開けっ放しに固定する作業に入った。おじさんは荷物を取り出しに倉庫のようなところのシャッターを開けに行った。
眠たく、ぼーっとしたままヨイショと扉を開けて、段差を昇って後部倉庫の中へ入った。そこで扉を固定するのを忘れていたことに気づいた。階段のように段差を介して降りようとした瞬間、僕は気づいたら地面に転がっていた。

「落ちた、やばい」痛みよりもこれ以上無い焦りに、目が完全に冴えた。左手首を思いっきり捻った。左足もおかしい。けれどもそんなのどうでもよくて、「運送会社の不祥事として特にまずいことをやらかしてしまった」ことにパニックになりかけた。

おじさんがシャッターを開ける音が聴こえる。開けたら正面にいるのは転がっている僕だ。「早く起き上がらないと」と思った時にはもう「どうした!」という声が耳に入った。咄嗟に「大丈夫です!」と返そうとしたが、立った瞬間倒れるくらいの立ちくらみが来て上手く喋れなかった。

必死に何回も立とうとしてたら「いいから、いいから座ってろ」と言われて喉から「すみません」とだけ絞り出して近くのベンチに座った。
少ししておじさんが戻ってきて「どうしたんだ」と説明を求める。
「あの、扉の固定を忘れて」「一旦降りようとしたら」「落ちちゃって」この説明をする間に2.3回立とうとしては「いいから」というやりとりをした。本当に立てなくて頭を抱えて落ち着こうと努めた。

結局僕がやるべき仕事は全部社員さんがやって、僕が同席した意味というのが1つたりとも無かった。自分の呆れるほどのどん臭さと、「迷惑をかけた」という意識がとにかく辛かった。

とりあえず帰るために車に乗って、まともな話が始まる。

「これは社員達に伝えるべきだと思う。どこが痛い?」

「いや……あぁ、ここ(左手首)が捻ると痛いですけど、それくらいです。立ちくらみの方が酷くて……」

「貧血持ちとかか?」

「まあ、そんな感じで前にもここで1度気絶しかけたことはありました……まあでも、全然、大丈夫です。骨折とかでは無いと思うので。今は落ち着いてきました」

「本当か?」

「はい。体は平気です。……でも迷惑をかけた申し訳なさが凄くて」

「そんなの気にしなくていいんだよ。俺は全く迷惑なんて思ってない。単純に貴方がどれくらいの怪我をしたのかが心配だよ。そういうの抜きにして、単純に病院に行くようなくらいなのかどうか……」

「………………会社には言わなくて大丈夫です。運送会社のこういう不祥事のヤバさは分かりますし、そこでまた社員さん達の手を煩わせたくないです」

「……分かった、貴方がそれでいいならそういうことにしよう。言った方がいいとは思うけどな。怒られるのは俺だけだしさ」

「ぁ……やっぱりそっちの方が辛いので」

となった。この時の帰りの時間ほど辛い空間は人生でそうそう無い。おじさんが気を遣って「うちの娘は特別支援学校で働いて1年経ってさ」と話を振り、僕が福祉の仕事に就くことを話したら「凄いと思う。優しい人しか選べない仕事だよ」とフォローされた。自分がより情けなく映った。

「次やる時は本当に気をつけてね。死んでもおかしくないからさ。貧血とか心配なら全然事前に、その人に言うんだよ」
対応があまりに優しくていっそ言葉で突き刺して欲しかった。自分のような人並みのことを失敗し、面倒事を増やす人間に優しさなんて要らないと本気で思う。「本当にすみません」と言う度に「謝らなくていいんだよ」と返された。

「ホントはダメだけど、会社着くまで寝てても全然いいからね。着いたら起こすね」と言われて、もう全部終わったと思っていた僕は「いいですか、ありがとうございます」と死にかけのような声色で返すことしかできなかった。ヘルメットを抱きしめてただ頭を下げて目を瞑る。何故か転倒してからずっと手が異常なほど痙攣している。それくらいパニックでも「ここで泣くなんて、これ以上情けないことはしない、できない」とただただ平然を装う支度をしていた。

「使えない」「なにもできない」「面倒臭い人間」「無能」「これ以上迷惑かけないために死ぬべきだよ」と自分の声がうるさかった。

それから普通の顔をして会社に戻り、後1時間あったので最初にやっていた流しの作業をした。歩いている途中で左足の感覚がおかしいことに気づいたけど、普通に見えるように注意を払った。正直左手首が捻る度に喘ぐくらいの痛みを与えてきて地獄だった。10キロ以上の荷物などザラにあり「これが罰だ」と我慢しながら終わりを待った。

あの時ヘルメットを被らず、頭をぶつけて死んでいたら良かったのだ。「親戚や兄と上手くコミュニケーションがとれない」「グループワークで何も思い浮かばず何も喋れない」「手先が不器用で簡単な作業でももたつく」

「普通ならできる」に対して「できない」が小さくも積み重なって、「大きな他人の足を引っ張る事態」が起こる。今回がそれだ。たまたまの事故とかではない。僕が「地に足を付けることもできない欠落者」だから起きた。明確に原因が僕自身にある。

"仕事"だとか"学校"だとか社会的な場所でいつもこうなって、トラウマが積み木のように増えて大きくなる。人と関わること自体が怖くて辛いことと定義付けされていく。外を歩けば全ての視線が「早く死ねよ」に変換されて必然的に下を向かなきゃいけなくなる。その声を紛らわすように人が多い場所では常にイヤホンで音楽を流してきた。

世界中の人間がクズだったらいいのに、と思ってしまう。僕が迷惑をかける相手は大体むしろ苦しいくらいに優しい。全員が薬物中毒で人を恐れる情けないメリット無しの異常人間の僕の上であれ。共感性の高い優しい人間に、怒号でなく同情を受け渡された時ほど感じる情けなさは無い。ああ今「可哀想に」と思われている。それを認識すると余りに惨めで、一周まわって面白くなってくる。

帰ってすぐに風呂に入って精神安定剤を多めに飲んで寝ようと思い、洗面台に行ったら犬の糞尿で悲惨なことになっていた。僕はそれをティッシュで拭き取って除菌をする。横着してビニール袋で覆ってやるのを忘れ、尿が手に着く。気持ち悪い臭いがこびりつく。
「獣の糞尿を掃除している自分」がお似合い過ぎて数秒笑って、数秒泣いて、「何が面白い?」と我に返り、すぐ真顔に戻った。

生まれながらにして背負った罪なのだろうか。いつからか関わる人間人間に心の中で頭を下げて「生きててごめんなさい」と謝りながら生きることになった。

自己肯定感が無いんじゃない。自己を肯定できる要素を忖度無しで見た時に1つも見当たらない。色々助けてくれた人達への最大のお返しは「自殺という事柄を最後にかける迷惑として行い、蓋を閉じる」ことなんて分かってる。本当に惨めな人間はそれを痛いほど分かってても、尚死ぬのが怖くて逃げる。

自分を嫌いすぎて「自分と関わる人間」すら嫌いになってしまいそうだ。意味が分からない。
僕は気分で性格が変わりすぎる時があって、自分のことを軽い二重人格だと思っていたけど、人格と呼べるほどの軸が無いだけなのかもしれない。

もう早く死んでくれ!頼む!父親に似たくないとか言ってる間にそれどころか越える勢いをつけてる!お父さん元気ですか!生きてますか!?僕は貴方の遺伝子でこんなに醜く成長しました!!!母親の優しさが中途半端に横入りし、逆に薄情な構築が綺麗でしょう!?あああ兄も母親も幸せそうですよ!いつまでも不幸なのは僕と貴方だけ!!!この世界で唯一僕が僕より嫌いな人間は貴方!歳が増すごとに貴方と同じ道しか用意されなくなっていく!せめての足掻きとして結婚と子作りは絶対にしない!何かを自分以外のせいにするのは気が引けるがお前だけは例外で助かる!死んで地獄に落ちたらお前を何としてでも見つけて殺し続ける!それを楽しみに後生を過ごそう!

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