理解

元気いっぱいの無職/『回遊』という雑誌(ZINE)を作っています

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最近の記事

日記:外で本を読む

大学に通っていたころ、私は家が遠いため、毎日毎日、電車に1時間以上乗っていた。 電車に乗っている時間は、読書の時間だった。家が遠いことを悪いことだと思いたくなかったから、電車に揺られる時間を少しでも有意義なものにしたかった。 院生のころはともかく、学部生の時はそれなりにイマドキな女子大生だった(になりたかった)ので、インテリのみなさんには怒られるかもしれないが、信じられないほど小さなバッグで通っていた。 教科書なんて持ってなかった。印刷したレジュメを丁寧に折りたたんで、それ

    • 日記:無職、教壇に立つ。回遊する。

      昨日は大学に行った。 なんと、授業をしました!  びっくりだよな、なんで無職が大学で授業をするんだろう、でも私が一番驚いている。 TAとかで教室の前でみんなに喋ったり、演習発表とか、そういうのは経験あるけれど、ちゃんと「講師」という名目付きで話すのは本当に初めてだった。 大学教員のみなさんがTwitterなんかで「学生が私を見てくれない」だとか「スマホ触ってるの気になる」だとか「前のほうの席に誰も座ってくれない」だとか言っているのを、私はただ「ほーん」としか思っていなかっ

      • 久々に会ってもよそよそしくしないで

        人によっては、ちょっと会うのが久しぶりだからとよそよそしい態度を示してくる友人がいる。信じられない。 中学生の時、高校生の時、あれほど毎日のように一緒に同じ空間で同じ時間を過ごして、たくさんのことをお喋りして、なのにちょっと数年会わなかったからと、あの時の記憶が全部すっぽ抜けたのかというほどの「他人感」。 そんなわけないでしょう、と思う。私は全部覚えている。 過去のどの部分にあっても、平等にそれらは大切な時間で、大切な物事だから、いつだって私たちは友人であると信じている。

        • 一番のもの

          2019年、『三体』が日本で発売された。劉慈欣さんによるこの中華SF小説は翻訳の発売前から相当の話題性を持っていて、SFオタクの私は発売を心待ちにしていた。 発売日から数日遅れて『三体』を購入し、買ったその日に読み始め、買ったその日に読み終えた。衝撃だった。 本好きの人がそれほど多くない現代社会で、本が好きという話をすると、「一番面白かった本ってなんですか」といったことを聞かれる。誰だってそれぞれの分野で聞かれたことがあるだろうけれど、この質問はすごく難しい。 でも、『三

        日記:外で本を読む

          5時就寝、14時起床

          「無職って、一日何してるんですか?」 ここ1ヶ月、この質問を数えきれないほど受けてきた。 ひとまず「5時に寝て、14時に起きてます」と答える。 この3月に大学院を出て立派な無職となった私は毎日非常に楽しく過ごしていて、かけがえのないこの日々を心の底から大切に思っている。 無職にも向き不向きがあると思うが、確実に、私は無職に向いている。自信を持って言える。 とはいえ、この生活も着実に終わりが見えてきている。金銭的問題のみがその理由である。 人生のなかで最も素晴らしかったのは

          5時就寝、14時起床

          日記:大学というところと人間

          大学っていいところだな、といつも思う。 大学院を修了してからも、何度か大学へ行く。 正門からすぐ近くに院生室があるので、友達にさらりと挨拶しにいく。大抵さらりとは済まなくて、楽しくなって長居してしまう。 それから院生室のある建物を出て、圧倒的な緑を放つ木々の間を歩く。 6年前、学部に入学して初めての授業の日、高校の頃の友人たちとクラスが離れてしまってひとりぼっちになった私は、広い教室を一瞬で見渡して、良い感じの――自分と同じ感じの――女の子たちが座っているあたりに腰を降ろ

          日記:大学というところと人間

          日記:散漫と散文、京都

          なんだか京都に縁がある。最近急に。 そういうわけで、いろんな人と会う約束を合わせて京都に行った。 私はさも神戸にいるかのようにネット上で振る舞っているがこれは完全に嘘である。神戸からうんと離れた片田舎にいる。だから私にとって京都は遠い。 いい場所であることは勿論知っている。私は中学生のころ森見作品を読み、「大学」たる場所を妄想し心躍らせていた。 そううまく行くはずもなく、というか私は単純に頭が良くないので進学先を選ぶことはできず、加えて私の血に脈々と流れるマイルドヤンキー

          日記:散漫と散文、京都

          本当は生活なんてどうでもいいけど、毎日服を着る

          本当のところは、生活なんてどうでもいいと思っている。 毎日何かを食べるとか、顔を洗うとか、風呂に入るとか、そういうことは全然したくない。 自分の信条や思想・思考のほうが自分の身体よりも、何百倍も重要だから、実を言うと生活なんて放っておいてしまいたい。 でも今の私は、身体がないままに思考することは不可能なので、身体を健康に、清潔に維持するために毎日毎日、来る日も来る日も「生活」している。 観念的な世界に生きようとしている友人がよく、メタバース上での生命維持を話す。固有の体な

          本当は生活なんてどうでもいいけど、毎日服を着る

          宮沢賢治『銀河鉄道の夜』考察ー甲南読書会vol.15 https://note.com/konan_biblio/n/n2883d276860e 書きました!

          宮沢賢治『銀河鉄道の夜』考察ー甲南読書会vol.15 https://note.com/konan_biblio/n/n2883d276860e 書きました!

          私の大学院生活(文系地方私大修士課程の一例)

          学部3年生になった時、突然コロナ禍なるものがやってきて、大学に行くことを禁じられオンライン授業が始まった。 ついでに働いていたバイト先もコロナ禍の影響を受けて閉店し、私は働かない上に大学にも行かない人間になった。 当時の私はさほど大学に愛着もなかったので、「定期代が浮いたな」と思った。 その浮いた定期代約5万円で本を買った。 岩波文庫の白と青、講談社学術文庫にちくま学芸文庫、ブルーバックス、その他新書諸々、読みたかったけどあまり手元には置いていなかった本たち。 本を読んで、

          私の大学院生活(文系地方私大修士課程の一例)

          過去の女性の語り、今のフェミニズム―『未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄』を読んで

          『未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄』(2023,花束書房)、この本が私の手元にやってきたとき、その装丁の美しさに、凝らされた工夫に驚いてしまった。 学術書に多いA5サイズの本書は、カバーと本体が一体化している。これだけ聞くとよくある教科書と同じ点だが、表紙・裏表紙が内側に折り込まれ、そでの部分が存在している。見返しが2枚付いた状態で、その一枚目にカバーのように、一体化した表紙が折り込まれているのである。 そして表紙側のそでには北村兼子の写真が、裏表紙側のそでには

          過去の女性の語り、今のフェミニズム―『未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄』を読んで