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    漢字や漢語に関する誤解を訂正し、正しい知識を拡散している記事

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  • ゆる言語学ラジオ#4 の内容がトンデモだったので訂正する

    ゆる言語学ラジオ#4 で紹介されてた内容の大部分がトンデモに基づいているので正しい学説で訂正するシリーズ

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2024年6月6日のテレ朝『林修のことば検定』でトンデモ字源がまことしやかに紹介された

テレビ朝日の『林修のことば検定』という番組(正確には『グッド!モーニング』という番組の1コーナー)では、毎日言葉にまつわる三択(通常3番目の選択肢はジョークなので実質二択)クイズが出題される。 2024年6月6日放送分では「絵」という漢字の由来はなにかというクイズが出題され、その解説ではこの漢字は糸が会する(集まる)ことを表すというトンデモが正しいものとして紹介された。 実際には、「絵」という字は表音文字「会(會)」に意味分類符「糸」を付加してできたものである。糸が会する

    • Keepa拡張機能使ってるとamazonから勝手にログアウトされる

      どうしたものか 06/09追記これでなんとかした

      • 「右文説」と「会意形声説」を区別してみる

        今まで自分は大雑把に一括りにしていたけれども…… 「右文説」は、同じ表音文字で表記される単語同士は意味が類似している(と感じられる)傾向への共時的観察、あるいはそこから遡及的に帰納して、同源関係にある単語同士は同じ表音文字で表記される傾向があると仮定する理論とらえられるかもしれない。 「会意形声説」は、個々のあるいは大部分の形声文字を会意文字として説明しようとする字源説である。

        • なぜコンビニ店員は僕の買った商品でピラミッドを作るのか

          僕はそれをマイバックにいれるためにハノイの塔をプレイさせられている。

        2024年6月6日のテレ朝『林修のことば検定』でトンデモ字源がまことしやかに紹介された

        • Keepa拡張機能使ってるとamazonから勝手にログアウトされる

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          杉村喜光氏の著書にあるフェイク字源(ガセ雑学、疑似科学)の例

          科学者が世の謎を解き明かすために奮闘している傍らで、雑学屋が非科学的言説をさかんに拡散しているということは珍しくない。これはその一例を示したものである。 原則一つの著書から一つだけを紹介するが、氏の雑学本の最新作である『そんな理由!! アレにもコレにも! モノのなまえ事典』(2023)には多数のフェイク字源が含まれているため複数(全てではない)を引用した。 苺「諸説」挙げられているが、どちらもフェイクである。多くの漢字は中国で生まれたものであるため、それが日本特有の文化に

          杉村喜光氏の著書にあるフェイク字源(ガセ雑学、疑似科学)の例

          野原将揮『解説:音韻学~中古音と上古音』にある間違った記述

          はじめに『デジタル時代の中国学リファレンスマニュアル』に収録されている野原将揮『解説:音韻学~中古音と上古音』は、中古漢語と、上古漢語の近年の研究動向とその結果に基づく理論を簡潔かつ十分に紹介しており、初学者に有用な文章である。しかし、誤りもある。 特に見逃せないほどひどい問題を抱えているのがこの記述である。 3つ目の文章だけは、ただそれだけ取り出せば表面上は正しいが、「一つの韻部に対して、母音は一つであるとは限らない」という点が明らかになったことによるものではなく、この

          野原将揮『解説:音韻学~中古音と上古音』にある間違った記述

          床屋に行った。店員「自然な感じで良いですか」→ぼく「う~ん、今日は不自然な感じで!」

          とはならないだろ。 あと Weiss (2020) “Outline of the Historical and Comparative Grammar of Latin” を37章まで読んだ。

          床屋に行った。店員「自然な感じで良いですか」→ぼく「う~ん、今日は不自然な感じで!」

          英語のswallowと漢語の嚥・燕のフェイク語源・字源を医療関係者が拡散している

          英語の動詞 $${swallow}$$ 「飲み込む」と名詞 $${swallow}$$ 「ツバメ」は語源的にも字源的にも関係がない。この2つの単語はもともと異なる発音と異なる綴りを持っていたが、歴史的変化によって偶然同じ発音と同じ綴りになった。 漢語の 嚥 $${yàn}$$ 「飲み込む」と 燕 $${yàn}$$ 「ツバメ」は語源的にも字源的にも関係がない。この2つの単語はもともと異なる発音と異なる綴りを持っていたが、歴史的変化によって偶然同じ発音と(部分的に)同じ綴りに

          英語のswallowと漢語の嚥・燕のフェイク語源・字源を医療関係者が拡散している

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          竜は虹から進化した(Blust 2023)

          オーストロネシア語研究の権威として著名なRobert Blustが竜の謎に挑んだ。 第一章では各地の竜の特徴が整理され、問題提起がなされる。 ヨーロッパの竜はがっしりした体と大きな翼を持つが、中国の竜は蛇のようなしなやかな体を持ち翼を持たない。中東の竜は哺乳類のような体を持ち、インドの竜は上半身が人間の姿をしているとされたり複数の頭を持つコブラとされたりする。 このような明らかな違いがある一方で、興味深い特徴を共有している。「爬虫類と哺乳類または鳥類の特徴をあわせ持つ」

          竜は虹から進化した(Blust 2023)

          シャニマスプレイしたこと無いけどシャニアニ見た

          シャニマスプレイしたこと無いけど内容を知ってはいて(知り合いがプレイしてるのを見たり推薦されたコミュを動画で見たりしてるからキャラはわかってるつもり)、既知の作品のアニメ化は見るタイプの人間なので劇場に足を運ぶことにした。 自分はセンス系のアニメは苦手で、シャニマスのアニメがセンス系でないはずがないので心構えて見たが、1章はそんなわけないハプニングをアイドル自身が解決して最後にライブシーンというよくあるアイドル作品王道パターンだったのでまあ普通に面白かった。見る前はイルミネ

          シャニマスプレイしたこと無いけどシャニアニ見た

          漢語「三昧」はサンスクリット「समाधि samādhi」の音声転写では無い

          【要約】漢語「三昧 *sam-məys」はサンスクリット「samādhi」の音声転写ではなくガンダーラ語「samasi」あるいはその近縁方言の音声転写である。 (2023/11/13 一部加筆修正) サンスクリットの転写という記述漢語「三昧」がサンスクリット「समाधि samādhi」の音声転写だという記述は至る所で見られる。 新聞社の記事にもあれば、 悪名高い(?)インターネットサイトにもあり、 ツイッターでは定期的にこの記述を拡散させているアカウントが存在する

          漢語「三昧」はサンスクリット「समाधि samādhi」の音声転写では無い

          「計」の字源と上古音

          『説文解字』では「計」字が会意文字とされている。実際には「計」字は形声文字である。 会意文字解釈の誤り「計」字を会意文字とする解釈では、「十」は数の「10」を表すとされ、したがって「計」字の本義は「計算、合計」の類であったということになる。結局のところ、調べた限りでは、「計」を会意文字とする主張の根拠はこの「計算」~「10」という意味的関連性の心地よさのみに基づいているようである。 しかしこの仮定は、この文字に「言」が含まれている理由を説明できない。 「言」は最も普遍的

          「計」の字源と上古音

          諧声関係は上古漢語の口蓋垂音系列の再構を支持しない

          潘悟云(1997)、Baxter & Sagart(2014, esp. 43–46; Sagart & Baxter 2007, 2009)は、中古漢語の喉音(影母・曉母・匣母)の主要な由来として上古漢語の〈口蓋垂音系列〉すなわち「*q- / *qʰ- / *ɢ-」を再構した。 諧声系列について、潘悟云は軟口蓋音と口蓋垂音は音声的に類似しているので諧声系列上で区別されなかったと考えたが、Baxter & Sagartは、諧声系列上にも〈軟口蓋音系列〉と〈口蓋垂音系列〉が

          諧声関係は上古漢語の口蓋垂音系列の再構を支持しない

          曉母と重紐、「*qʰ-」と前舌母音

          曉母三等B類の字は非常に少ないようである。 通常の説明では、鈍音(曉母含む)では、「*-r-」介音の有無によって、上古元音が前舌母音(「*-i-」か「*-e-」)の場合に中古三等AまたはB、その他の元音の場合は特定条件(主に鋭音韻尾)下では中古三等CまたはBに変化する。「*-r-」介音を含む場合は三等B、含まない場合はAまたはCとなる。 曉母の三等Bを眺めていたところ、B⇔ACの対立がある環境の曉母三等自体が少なく、かつ無声共鳴音(「*l̥-」等)や唇音(「*qʷʰ-」)

          曉母と重紐、「*qʰ-」と前舌母音