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Kagura古都鎌倉奇譚【壱ノ怪】星月ノ井、千年の刻待ち人(9)

(前回のあらすじ)東京で教職についている佐竹神楽(25)は導かれた鎌倉の地で小笠原家の方々に神の世界に連れて行ってもらい、正月の挨拶まわりをした。その最後、五頭龍様という神様に神楽は「生神」であり、「鬼を宿している」と告げられる。新年になっても言われていた力がでないその理由は、神々をも驚愕させる事実が隠されていた。

9:かぐら、陰陽に踊る



今、自分たちは鶴岡八幡宮へ向かっている。




時間は、良く分からない。




あれから自分たちは、
というより五頭龍様が黙り込んでしまって、
小舞千も酷く辛そうにしていたので、烏天狗と呼ばれた天照大御神様がくださった空気が読めない眷属が、

「どうする?」

と、頭を・・・ではなく、くちばしと顔の境を掻きながら聞いてきたので、
何にも分からない自分が、とりあえず後が詰まっている話を持ち掛ける、
というとんでもないカオスとなってしまった。




華絵巻師というのが何をしているのか、
自分が普通ではない理由がなんなのか、
何故皆が自分を知っているのか、




何となく文章的には分かったが…。
得心にまでは至ってない。


年が明けたら力が解放されると聞いていたが、特段そんな感じも無く首を傾げるばかりだ。



分かれるとなったときに五頭龍様が自分に言った言葉を思い出す。




「お前に我が目を授けよう。お前を護り、お前を導くだろう。良く、小舞千を助けるのだぞ」





どこか、自分に話しかけているようでいて、
指さした額の眉間の上あたりに囁きかけたかのようだった。

その、指が仮面越しに自分の額を指した瞬間、高温の鉄でも付けられたかのように熱くなり、そしてその感覚は一瞬で消えた。






それを思い出し、触れもしないのに仮面越しに額を触ると、
直ぐさま小舞千がこちらを向いて、やや小さな声で問う。



「痛むの・・・?」



その声が心底心配そうで自分は慌てて首を振る。

「あ、いえいえ!!全く!!・・・でも・・・めっちゃ熱かったです。
火傷したかと思ったぐらいです」
「五頭龍様を信頼してはいるけれど…帰ってから見てみましょう」

小舞千がそう静かに言う。

「しかし、清い気しか感じんがのぅ・・・。まだここに五頭龍様がおられるかのような感覚じゃ」

狐少女が首を傾げる。




「お前ら…。こんな大層なことがあったと言うに、よく普通にしていられるな」



既に烏天狗が疲れてそうに、そう言った。


呆れるようにため息をつけば、いくら天照大御神様が遣わしてくれた眷属といえど、彼女らは黙ってはいない。

「他にどうせいと言うのじゃ。神楽が鬼をその身に残したまま転生してきただけでも狼狽しておるというのに…早ぅ鶴岡八幡宮へ参って今後の事をお話しせねば」

狐少女が腕を組んで、やや「むすっ」とそう答えた。

「今更何に驚きましょうか。私は兎に角、佐竹さんを護るだけです」

小舞千はややそっけなくそう答えた。



お前ら仮にも“空気が読めない”とはいえ、
天照大御神様が遣わしてくれた眷属様だぞ。

敬え。

“空気が読めない”としても、
敬え!
形だけでも!!






しかし、それにしても・・・。







何度も言っているが、小舞千には謎が多い。
情報が増えるごとに謎が増えていく。


未だに何を考えているのか、何があったのかも分からない。
恐らく、神だろうが鬼だろうが、
こう言えるほどの大変な目にあったのだろう。





だが・・・
これでは完全に自分は男なのに、お姫様扱いだ。
それが何だか気持ち悪い。





「あ、あの…因みに、俺の中にその呪いってのがあるって…俺、どうなっちゃうんです?それに、華絵巻師っていうやつは…一体どうすればいいんです?正直ここまできても全然分からないんですが…」

「そりゃそうだな」

烏天狗がすっきりとそう言い切った。

「ともかく、お主が危うい存在で、そんな中でも華絵師としてやっていかねばならないのは確実じゃ。じゃが、華絵師をしながら鬼に対処するという、問題ばかりは、鶴岡八幡宮の神々に聞いてみねばなるまい。益興と藍子とも相談じゃ」



うん、うん。と、狐少女と眷属が頷くが小舞千だけはため息だ。



「お二方。彼はまだ頭の中が一般人なのです。続けながら対処するという、そこは今問題ではありません。あるかないか分からない「呪い」というもののの一刻も早い解放と、やれと言われている華絵師が何かいまいち良く分からないとお悩みなのです。まぁ、最大の難関はまだお伝えしていない“今の仕事が続けられなくなる”ということをお伝えしなければならないのですが…」





戸惑いがちに小舞千がチラリと自分を見た。




小舞千は良く分かっている。

完全にあちらの知識の方が豊富だというのに、自分の気持ちをこうも代弁してくれるとは有り難い。

正にそれについて悩んでいたのだ。
一刻も早い解決と、華絵巻師という妙なものの具体的な話。

最後良く聞こえなかったが、自分の事を心配してくれていることだけは分かる。

「そうか…。しかし、そうだとしても…。やはり私たちよりも益興らと鶴岡八幡宮の神様方にお話しして頂いて、対処するしかないのぅ…」

狐少女は真剣にそう言う。






だが、何だか微妙な空気が小舞千と烏天狗から出ている。






ーこれは…。俺は空気だけは読める男。佐竹神楽だ。この空気は読むに…。






自分は狐少女を小突く。

「な、何じゃ神楽!」
「何か俺ら、違うみたいですよ」

えっ?!と、狐少女が烏天狗と小舞千を見る。
烏天狗が腕を組んで猫背になり、あきれ果てた。





「あー。こういう時、今時の若者言葉で言うと・・・“お前ら、マヂか”




急に和希を思い出して猛烈に腹が立った。


「何だとこの烏野郎!
「やるのか?!この、ド天然キノコ!!


負けた。
烏に。
とんでもない心の傷を負った。



治り切ってない傷口を抉られた。



まあ、今までも口下手で口で勝てたことが無い。
初めから勝負は見えていた。
自分が口喧嘩で対等に渡り合えるのはおバカな和希だけだ。



現代国語を専攻しているというのに、
どうして言葉がついて出てこないのだろうか?
時間をかけて書きだすことはできるというのに。




「あ、あー…。悪かった神楽。多分、小さくて小舞千の最後の言葉が聞こえてなかったんだうな。お前が今の教鞭の職を止めねばならない状況にあるのだ。今」


烏天狗がそう言うと狐少女が呑気に、あ、それか。と手を叩いている。




いやいや。



いやいやいや・・・。





いやいやいやいや!!!






「え?何を言ってるんですか?どれだけの時間とお金と脳みそを使って教壇に立ってると思ってるんです?免許も更新制で、取りに行ったりしてるんですよ?生活もできないし、ゲームもできないし!ご飯はおかずが3品は無いと俺死ぬんですけど?!





あと少しで鶴岡八幡宮というところで全員立ち止まった。

ここは若宮王子の鶴岡八幡宮への参道入り口。第二の鳥居の場所だ。




「お前は…最後は何だ…。飽食(ほうしょく)ならバランスを考えて食べろ!これでは質より量ではないか!それに、げーむとやらはしすぎだ!!休日は座りっぱなしではないか!!体に悪い!!
※飽食…呆れるほどよく食べること



恐らく烏天狗は、自分の私生活をなんらかの力を使って見ているのだろう。
額を手で覆って、唸っている。



「俺の生きがいにケチちけんじゃねぇ!!」
「生きがいはともかくです佐竹さん!!!」



小舞千が割って入ってきて、いきり立つ自分の両頬あたりを両手で挟み、目の前に立った。




仮面が無ければときめきもあったろう。
仮面が無ければ・・・。

傍から見たら自分たちは鳥の仮面を被ったコスプレ集団だ。




それはともかく、急に掴まれて下を向かされたので腰が引けた上に

「うェッ?!」

と、小さいカエルが轢(ひ)かれたような声をあげてしまった。







だがしかし、彼女は真剣だ。






「聞いてください佐竹さん」
「あ、はい・・・」






表情が仮面で見えない分、恐ろしくも感じる。
彼女の手が、酷く冷たい。
指の先が微かに耳に触れていて、その冷たさを感じる。








彼女も緊張や恐怖を感じているのだ。

そう思うと、やや冷静になれた気がする。








「貴方に巣食う“呪い”は、そんじょそこらのものとは桁が違います。
鬼と私たちが言うのは、人のありとあらゆる醜い感情の塊が、
化け物となって貴方の中で息を潜めている、ということなのです。
信じられないかもしれませんが、そういう世界がるのです」



「仮にそうだったとして、自分になんのデメリットがあるんですか?」






その言葉に周りの眷属である烏天狗や狐少女は驚いた。



「力が戻ってないから、とは言っても…最近の人間はこうなのか…。恐ろしいな」




烏天狗が深刻に考え込む。





「仕方ない。科学が進み、立証されぬものは排他的となった今神だろうが鬼だろうがいる範囲が限られておる。弱いもの、優しいものなどは感じ取りにくい上に、人間たちの心が荒れている。こうなるも自然の事じゃ。しかし、デメリット、と言うか・・・」




狐少女もこんな険しい顔は見たことが無い。
口元を袖で隠している。







ー俺、そんな悪いことを言った・・・か?







言っておきながら不安になる。
言葉選びを間違えたのだろうか?

「佐竹さん。デメリットはあります。
あの、東京からついてきている子供。
あれは、その“鬼”に引き寄せられてきました。
あれだけでも、人間の貴方の体は衰弱します。
心身ともに。
しかし、今はあんなものでも、もっと恐ろしい…およそ人間がかかわってはならないものがこの世には存在するのです。
それが来たら…。
いえ、その前に小さいものを取り込みながら中のモノが大きくなっていってしまったら…」





彼女は一度躊躇した。





自分をおもんばかってばかりではない、



何かを思い出している、




そんな間があった。





何故なら、その後の言葉が非常に重く、全身が粟立つものだったからだ。







「“鬼”は貴方と言う肉の器を手に入れ、
形相も魂も鬼となり、
人や神、精霊を穢し、
殺していく醜悪な悪鬼となる。
貴方は、佐竹神楽は、この世からいなくなります」









「え、いやいや・・・流石に殺すって・・・」




「女子供、関係ありません。親戚縁者も関係ありません。
“邪”とはそういうものです。人間で例えるなら、・・・。もしもの話ですよ。分かりやすく人間の世界で例えるなら。もしあなたの大切な人が、時間をかけて、無実の身でありながら体をバラバラにされ、打ち捨てられたら…正気でいられますか?その犯人を、許せますか?例えばあなたがそれで報復しようとし、逆に殺されてしまったら、死んで死に切れますか?」






大切な人を?






頭が混乱する。
それとこれとの脈絡が分からない。




「鬼は、そういった人間に限らず念の塊です。怒りや執念、無念と恨みつらみ。激情の業火です。佐竹さん。貴方の場合そこに荒魂という、神堕ちした魂が格となっています。およそ人間が見ないような恐ろしい存在。貴方が前世から涅槃へ向けて行脚し、弱体化したとはいえ…もう引き寄せられるものが現れています。だから・・・今の仕事はできません…。神様に守って頂かないと…」





何だか体がふわふわする。



考えているのか、夢を見ているのか分からない。




文面で理解が出来ても、全然自覚もないし、飲み込むことができない。




馬鹿げたことに聞こえてしまう。







周りで狐少女が「力が戻らないから自覚がない」だの、烏天狗が「年が明けたのに何故戻らない」だのと五月蠅く言っている。







この良く分からない世界に飛び込もうなどと、全く思わないし、
恐ろしくてできないという思いに反して、





自分をまきこんでくる事象ばかりが起きていく。




心が追いつかない。
頭が追いつかない。





気分が悪くなってきた。








その瞬間、額が少し熱くなり

自分の周りを一陣の風が吹き抜けた。






その風は清廉で、
例えるなら雪解け水の中を潜ったかのようだった。







あまりにも爽やかな風が吹いたかと思うと、いつの間にか目の前に

鶴岡八幡宮の舞台があった。







「・・・はい?」







歩いてないし、望んでいないのに一体どういうことなのだろうか?
凡人の自分には分からない。
狐につままれている。

あ、いや、狐少女は隣にいるが一緒に目をぱちくりさせている。

吹き消えて行く風を見るとうっすらと白い煙のような、
龍の鱗のような模様が見えた。

しかし、あっというまに消えて行った。

五頭龍様がくれたという加護だろう。







ーとんでもねぇもん貰っちまった…。








触れない額を仮面越しに触ると、暖かな光に当たりが満たされた。

また、陽だまりの中に入ったようだった。



さきほどまで凍り付いていた心がほぐされ、何だか一気に満たされた気持ちになる。




「待ちわびたぞ。華師達。眷属らよ」





はははと笑いながら言う方は男性だった。
舞台の上に雲に乗って現れているのは3柱。



男性が真ん中で、右横に豪華な着物を着た落ち着いた女性、
それから左横には…巫女のような格好をして赤ん坊を抱いている女性がいる。とっても優しそうだ。




「ああ!ほれ、大銀杏があのように風で倒れてな。新たな芽吹きをこうして比売神(ひめがみ)がねんごろに育んでおるのじゃ。可愛そうにのう」





そう言いながら男性の神は、愛おしそうにその光景を見ていた。




そう、確か…強風でいつだったかご神木であり、歴史の古い本殿へ続く階段の途中にある大銀杏が倒れてしまって、差木かなにかでまた新たに芽吹かせたという話はきいていたが…。






ー神の世界ではこうなっているのか…。







何だか泣きそうになった。
こんな優しい世界があるのか。
こんな想われるということは温かいのか。




自分だけがこの光景を見て、光を浴びるなんてもったいなさすぎる。
家族や、生徒や…世界中の人をこの場に連れてきてあげたい。



そう心から思ってしまった。



ふと、彼らの後ろから眩い太陽が現れた。

眩しすぎて、目が開けられないほど。



「や、これはこれは天照様。今華師達が参りましてな」



天照様はやや間を開けてから、口を開く。



口を開くと言っても、テレパシーのように体中に響くような頭に直接囁いてもらっている、不思議な感覚だ。






「・・・朝霧の心を神楽の口より話させよう。私にも現状が分からぬでな」






周りがざわつくが、自分だけ良く分からないまま首を傾げる。
益興や藍子もさきほどの温和な顔から、非常に焦り顔になる。
特に、小舞千がソワソワしだした。



『朝霧って、前に俺の前の魂って言ってた女性の事だよな?ま、俺らしいけど…。確か五頭龍様と何かあって、小舞千とも何かあって、自分に鬼を封じ込めて250年強前に神々にお焚き上げの目にあったっていう…』


自分の中で整理立てないと、もはや何が何やら分けが分からない。


と、


自分の目の前に光の人間が降り立った。


金色に輝きながら、金の衣を翻し、


天照様が降り立った。





顔などは見えないのに絶対にそうだと思った。
辺りが金色に輝く。



まるで、朝日の光を受ける金麦の穂の海の中にいるようだ。



だというのに、影がない。






光の中、だった。








すると急に眠くなった。



眠くなるのに、頭が冴え渡り、



自分が遠くになりながらもしっかりと口が動いた。






「お久しゅうございます。天照大御神様」




「・・・朝霧・・・そなたともあろうものが、一体どういうことなのじゃこれは」






唐突に始まる会話に戸惑いながらも、自分の口はまるで女のように言葉を紡ぐ。




「門の前までは行けたのです。地獄を巡り、門の前までは。時間が足りなかった。それも勿論あります。これ以上、木立の魂を待たせるわけにも参らなかったのもたしかです。しかし、この鬼との対話で私は決心しました」





淡々と冷静な言葉だった。
つっかえもせず、堂々と、真っすぐ天照大御神様の方を見上げて言う。
その凛とした姿は一国の姫のような振る舞いだった。





「この方は荒魂になりましたが、己の正義あってのこと。私の魂だけでは解けなかった心をこの代で開放し、再び神にお戻り頂こうと思います。
それが、私の罪滅ぼし、そして、最後の“生神”としての責務であると存じます」




「鬼を神に戻すと言うのか?!朝霧!!もういい加減馬鹿なことはよしてくれ!」



小舞千がまるで男のように強い口調で自分に…。
いや、朝霧という女性に言う。



「木立。貴方には本当に可哀そうなことをしました…。しかし、此度は私は諦めはしません。この鬼と同居し、霊力は鬼に頼り華絵巻師の仕事を見、神楽に絵舞を描いてもらうことにより、浄化といたします」







神様って、

絶句するんだ。

遠く、自分はそう思った。





自分の前の魂だというが、

とんだ跳ねっ返りのじゃじゃ馬娘だ。



鬼を神にするために、天国行きを蹴って神ごとをさせようというのだから。
それも、人間の器という脆弱かつ不安定なものに押し込んで。






「はぁあああ?!」







誰ともいえない叫びが木霊する。





「勿論、私も守護として最後まで付き添います。しかし、形も保てぬ半端な存在です。神楽を導き守れるようにこの石に宿りましょう」





そう言って自分の体を借りた朝霧は首から下げた、藍子に貰ったタイガーアイの石を撫でた。




「朝霧…」
「お前は!!」



八幡様の男性が呟くように言い、木立と呼ばれた小舞千がいきり立つ。




「勝手をお許しください。天照大御神様、応神天皇様(おうじんてんのう)、神功皇后様(じんぐうこうごう)、比売姫様(ひめかみ)…。お慈悲を…」




深く、深く、
腰を折る。




誰もが言葉を発さずにいたが、
天照大御神様が肩に手を触れ、顔を上げさせると






ふいに自分の仮面。額があるであろう場所に触れる。




その手をゆっくり、天照大御神様が仮面から離しゆく。





その離していく手にくっついてくるように
何かが生まれるように出てきた。





蒼い、
小さな龍だ。






「五頭龍の力より、護衛を1人増やそう。これは神の卵、赤ん坊じゃ。その任は1人では重い。皆で協力をしながら最後までやるがよい。朝霧。全て終わったら、待っているぞ」





米神から頭を撫でられると、
涙が出てきそうになった。





しかし、口を結んでそれが止められた。




「泣きたいときには泣いたらいい。嬉しい時には喜べばよい。それが、人の営みというもの。それも、学が良い。朝霧」







天照大御神様は消えた。







替わりに、小さな龍が大きなあくびを目の前でした。

コロコロとしていて、可愛い。
だが、恐ろしく美しい蒼い龍だ。
この世のどこにも見たことが無い、
七色の輝きを放つ鱗を持つ龍。





自分はいつの間にか、自分になっていた。






何を言っているか分からないだろうが、
朝霧という別の人格は何処かへ行ったようだった。








放心をしていると

気まずくなったのか、正気に戻ったのか、はっとし、

しかし皆どうしていいか分からず、何を言っていいか分からず、

混乱の中一瞬沈黙した。





そして、まるで示し合わせたかのように、中央に座る応神天皇様を見上げた。





彼も戸惑いながらも咳ばらいを1つし、居住まいを正した。








「だ、そうだ」








その素晴らしい笑顔とあっけらかんと言い切る彼に、
全員がズッコケた。

―流石神だぜ…。

神楽はある意味尊敬の念を抱いた。


ご興味頂きましてありがとうございます。書き始めたきっかけは、自分のように海の底、深海のような場所で一筋の光も見えない方のために何かしたいと、一房の藁になりたいと書き始めたのがきっかけでした。これからもそんな一筋の光、一房の藁であり続けたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。