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オリジナル小話の詰め合わせ

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数分で読めるオリジナル小話をまとめました。 SFジャンルの小話が多めですが、コメディや温いホラーなどの様々なジャンルの小話が混ざっております。 主に平日午後8時、9時頃に更新して… もっと読む
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記事一覧

小さき天文学者の隠れ家

目薬が染みる。目を閉じたまま考えるのは、やはり仕事のこと。今度は水族館のようなドールハウ…

水月suigetu
2日前
28

一円玉うらしま太郎

十円玉か百円玉か、少し迷って百円玉を賽銭箱に入れた。鈴を鳴らして拍手とお辞儀。昨日始めた…

水月suigetu
2週間前
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連作短編小説「次元潜水士」第9話「ブラックホール・スパゲッティ」

やっと実現する冒険旅行と、これから来るお客さんに胸を踊らせながらスパゲッティを茹でる。ス…

水月suigetu
1か月前
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満ちて欠けて、満ちて朝

夜行バスに乗り込み、自分の席を見つけた瞬間、スマホが震えた。慌てて席に座り画面を確認する…

水月suigetu
1か月前
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万華鏡スープ

お客さんを見送った午後六時、閉店の札を玄関に下げた。今日もスープのほとんどが売り切れだ。…

水月suigetu
2か月前
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クレーンゲームと春休みアイス

初めて見た大型客船にたじろいだけれど、船の中に入ってしまえば、それほど緊張しなくなった。…

水月suigetu
2か月前
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連作短編小説「次元潜水士」第8話「四次元プリンター」

旧式の超立方体型四次元プリンターの充電が完了した。電源ボタンを押すと懐かしい起動音がする。まだなんとか動きそうだ。蓋を開けて中を見ると、外枠の立方体の中に浮かんでいる小さな立方体たちが縮小、拡大をゆっくり繰り返している。何度見ても面白い。発明した時の思い出がよみがえってくる。 あの頃は次元潜水の技術も異次元研究も手探り状態だった。当初から研究を手伝ってくれている境井さんと加納ちゃん、藤野君などの仲間たちがいなければ、このプリンターも完成しなかっただろう。机に置いていた甘いコ

湯煙こぼれ話

地面に這いつくばりながら、マンホールの上はもう絶対に歩かないと誓う。 昨夜降った雪を避け…

水月suigetu
4か月前
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天空へ続くリード

人間のほうが犬に散歩させられている。今の私の状況を見た人は、絶対にそう思うだろう。いつも…

水月suigetu
4か月前
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連作短編小説「次元潜水士」第7話「エウロパの海へ潜降」

窓辺の猫は、窓の外を覗くようにプログラムされている。おお、ちょっと詩的ではないか、と頭に…

水月suigetu
4か月前
43

椿の蜜のいざない

椿の造花の中でうとうとしていると、僕そっくりの仲間も入ってきた。軽く挨拶した後、足と足を…

水月suigetu
5か月前
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アドベントカレンダー予報

家で適当な夕飯を済ませ、ソファでスマホを見ていると、何か忘れているような気がしてきた。 …

水月suigetu
5か月前
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透明なハガキ

今朝、娘から絵ハガキが届いた。美しいレンガ造りの洋風建築物が写っている絵ハガキの隅には、…

水月suigetu
6か月前
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五彩の墨の花園

メトロノームの音に合わせて、黒猫の尻尾が揺れる様子を見ている。もう何時間、経っただろうか。 フローリングの床の上に防水シートを敷いて、水墨画の道具を用意して、自分が正座したまでは良かった。座った瞬間、先月の品評会での出来事がフラッシュバックして、固まってしまったのだ。 じわじわと、足にフローリングの冷たさが伝わってくる。諦めて立ち上がり、棚の上でメトロノームに悪戯しようとしていた愛猫のインクを抱き上げた。 私はまだ駆け出しの水墨画家だ。品評会で大先輩たちに厳しいことを言