テレビがYoutubeに負ける日。”テレビの強み”とは....
「最近、テレビつまらないな~」と思うこと、あると思います。
よく言われているのは、「規制が増えて尖ったことができなくなった」とか、「制作費が減らされて大きなことができなくなった」という話。
でも、私はそれは言い訳だと思うわけです。
それはなんでか。
だってYouTubeが面白いから。
予算が少ないどころか0円で作っているであろう動画でも面白いものはあるし、テレビ的な制限に全く引っかからない動画でも再生数は回っている。
じゃあ、テレビはYoutubeに負けているのか?
これはアキネイター的な回答でいえば「部分的にそうである」となる。
それはなぜか?
30代以下の若い世代においては、テレビ<Youtube
40代~50代においては、テレビ≑Youtube
60歳以上においては、テレビ>Youtube
となっているからである。
あくまで負けているのは、30歳以下の若い世代について語る時だけだ。
ここまでは4~5年前から分かりきっていたことだと思う。
しかし近年、ある変化が起きている。
それは、これまで”テレビの強み”とされていたものすらYoutubeに負けているという現状だ。
ここからは、それらついて解説していきたいと思う。
テレビは興味の無かったことに関心をもてる?
テレビの良さを語る上で必ず出てくるのは、「テレビは自分で調べた情報じゃないから、興味の無いことにも関心が持てる」という話。
しかし、今年発表された「全国メディア意識世論調査」では、16歳~29歳の男女が「興味のなかったことに関心をもつ」ときに役に立つメディアとして1位にあげたのがYoutubeだったのだ。
いまや、グーグル先生のビッグデータの集積により、我々の趣味趣向はきめ細やかに分析され、新たに興味を持ちそうなことすら適切に提案されてしまうのである。
ちなみに、この調査では16~29歳の男女が「最も感動したり楽しんだりする」メディアとして1位にあげたのも、倍以上の差がついてYoutubeだった。
上記のリンクから結果は見られるので、興味のある人は是非のぞいてみて欲しい。
テレビの方が番組の質は高い?
続いて、テレビとネットメディアを比較したときに言われるのが、「ネットは”数打ちゃ当たる”を地でいけるのに対し、テレビは枠の制限がある」という話。
現に、テレビは東京だと地上波が最大11チャンネル。(NHK、NHK教育、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京、東京MX、テレビ神奈川、千葉テレビ、テレビ埼玉。)
BSだと無料で13チャンネル。(NHKBS1、NHKBSP、BS日テレ、BS朝日、BS-TBS、BSフジ、BSテレ東、放送大学、BS11、TwellV、BSよしもと、BS松竹東京、BSJapannext)
テレビは合計24チャンネルであるのに対し、Youtubeは100万人以上の登録者がいる日本のチャンネルだけで521チャンネルもある。(Yutura調べ)
※チャンネル数はテレビ・Youtubeともに2022年10月現在の数
ここでよく聞くのが「テレビの方が質が高い」意見。果たして本当にそうなのだろうか。
確かに、テレビ番組は取材・撮影・演出・編集など時間と労力がかかっているものは多いイメージがある。
ただ、時間と労力をかけたからクオリティが高いかと言うと別の話だろう。
例えば、ニュース番組で言うと、”一眼レフでカメラマンが撮った美しい景色”よりも”一般人がスマホで撮った事件が起きた瞬間”の映像の方が何百倍も価値があるし、スポーツ番組でいえば”編集された選手インタビュー”より”出場した選手のYoutubeチャンネルの解説”の方が価値がある。
では、動画コンテンツにおいての「質が高い」とはどんなことを言うのか。
私は、多くの人に見られたものこそが正義だと思う。
もちろん、”再生数が多い=質が高い”というわけでは決してない。
しかし、動画コンテンツが“商品”である以上、再生数はクオリティを測る指標とならざるをえないのである。
現にテレビは「視聴率」という”どれだけ多くの人に見られたか”という指標をもとに広告費を稼いできたし、映画も観客が買ったチケットの数で入場料を稼いできた。
ビジネスモデルの違いこそあれど、いわゆる”再生数”が稼ぎに影響を与えているのである。
映像コンテンツの中では映画が最も芸術性が高いと言われながらも、市場規模においてテレビに遅れをとっているのは、コンテンツの数が少なく、見ている人の絶対数が少ないからであろう。
あくまで商業としての視点で考えた場合、売れるものこそ正義であり「人に見られる=再生数が多い」ものこそ商品のクオリティが高いと判断されてしまうのだ。
では、その再生数を見ていこう。
上記は、テレビ番組の見逃し配信アプリ「Tver」の再生数ランキング。
2022年1月~3月で再生数が1000万回を超える番組は8個もある。
しかし、これらはあくまでシリーズなので1回当たりの再生数となると、
最高はフジテレビのドラマ「ミステリと言う勿れ」の平均282万再生となる。
一方でYoutubeは、2022年9月の1ヶ月で最も再生数が多かったのは、HikakinTVの「ヒカキンおにごっこ 2022年夏」で1013万回再生。(2022年10月現在は非公開)
次いで、おまんじゅうの「結婚発表メイキング『写真編』」の666万回再生とランキング1~10位全てが300万回再生を超えている。
また、テレビの視聴率と比べると、2022年9月19日~26日の間で最も個人視聴率が高かったのは、ビデオリサーチの調べによるとNHK総合の「ニュース7」で平均11.6%。
これは、単純計算で日本人1億2475万人(2022年9月1日現在)のうち1447万人が見ていることになる。
まだまだテレビも負けていない!と思える数字である。
しかし、2019年3月の「放送研究と調査」によると、「ニュース7」の視聴率は60代男女で15%、70代男女で25%近いのに対し、40代以下においては5%以下となっている。
現在、日本の60代の人口は1499万人、70代以上は2871万人。(2022年9月1日現在)
これをもとに計算すると、先ほどの1447万人のうち987万人は60代以上なのである。
今後の日本の人口推計を考えると、爆発的に視聴者数は減少していく可能性が高いだろう。
テレビの方が情報に信頼性がある?
また、多くの人がネットよりテレビが優れている点としてあげるのが、情報の信頼性だろう。
テレビの信頼性が高い根拠としては、テレビの場合は間違えた情報を流した場合には、放送の訂正を請求することができると放送法で規定されているからである。
これに放送局が反すれば、事業者免許を取り上げられる可能性すらあるのである。
では、Youtubeはどうか?
結論から言うと、テレビと変わらないというのが実態である。
Youtubeも間違えた情報を流した場合は、運営サイドに報告され、チャンネルや動画をBANされる可能性がある。
また、コメント機能がYoutubeにはあるため、コメント欄で誤った情報についての議論が沸き起こり、自然と情報の真偽について確かめることができる。
ただ、テレビの場合、制作に多くの人が関わっており、何人もの人がチェックをした上で放送されている。
これを踏まえると、テレビの方が間違いは少なくなりそうではあるが、近年はテレビの重大な放送事故やBPO案件も少なくない。
テレビもYoutubeも謝った情報を流した場合は、ペナルティをくらうという点ではどちらも大きな違いはないと思われる。
おわりに
デバイスとしての性能を比べたときに、テレビはスマートフォンに圧倒的に負けている。
しかし、テレビ番組というコンテンツで見たら、まだまだ負けたとは言えないだろう。
ただ、ここまで述べてきたとおり一切油断できる状況にない。
いちプラットフォームでしかないYoutubeに負ける日が刻一刻と近づいているのだ。
YouTubeが創業した17年前、ただの動画投稿サイトにテレビが負けると思った人は少なかっただろう。
「所詮は素人の動画だ」とたかをくくっていただろう。
ニコニコ動画が衰退したとき、Youtubeも二の足を踏むと思われただろう。
テレビの市場規模は、2021年度で地上波が1兆3698億円。(日経テレコン調べ)
一方、動画広告市場は2025年に1兆円に到達すると予想されている。
いまや背中はすぐそこである。
人々のメインデバイスがテレビからスマホに取って代わった時に、テレビ局はコンテンツの波に乗り遅れた。
次なる波に乗り遅れないためにも、テレビ番組制作者はあらゆるコンテンツについて学習し、技術を磨いておかねばならないだろう。
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