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地方局で働く、ということ。

 テレビ局っていうと、フジテレビやTBSなどの東京にある局のことを指すケースがほとんどですが、全国127局のうち多くが「地方局」です。

 でも、地方局のことって話題になることは少ないし、若い人に至っては地方局のことを知らない人もいる。

 そんなマイナーなテレビ局で働くとは、どういうことなのか?という話を少しだけ書き留めておこうと思う。


1.番組は「ニュース」と「情報番組」がメイン

 地方局は、番組をあまり作っていません。
 お金がないのもありますし、そもそも枠も少ないからです
 地方局はキー局と「ネットワーク協定」を結んでいて、「午前7時から午前10時、正午から午後10時まではキー局の番組を流してね」みたいな約束があるのです。
 そのため、地方局が独自に編成できる枠は限られていて、そこに自社制作番組や購入した番組を放送するわけです。

 番組を自社で作る場合は、オリジナルのバラエティーというよりは、「ニュース」や「情報番組」といった『地域の情報を届ける』ことを目的とした番組がメインです。

 これは、地方局の設立意図が、「地域の情報をくまなく届ける!」というものなので、仕方ないことだと思います。
 あと、クリエイティブ性の高い番組を作る予算も人材も乏しいですから、ディレクターや記者、カメラマン、照明、音声など1クルーだけでロケが完結できる情報番組などがコスパ的にもやりやすいということなんだと思います。演者もいたとしても局アナウンサーなので、芸能人などと違ってギャラもいらないし、なんとなくフォーマットもありますからね。やれば誰でも作れるようになります。

 こうした報道や情報番組に3年も携わると、その辺の地元民より地域に詳しくなれます。その地域を愛してる人にとっては最高の仕事だと思います。
 ただ、「地方局に入社して、地域独自のバラエティ番組を作ってヒットさせる!」という気概を持って入社しても、その夢を叶えることは難しい..というのが実情です。
 各局しのぎを削り合っていますから、大阪•名古屋、せめて札幌•福岡くらいの規模がないとインパクトのある番組を作るのは難しいだろうな…というのは感じます。
 現に、キー局がネットしている地方局の番組の多くは、大阪•名古屋の番組ばかり。
 「水曜どうでしょう」(北海道テレビ)をはじめ、「ゴリパラ見聞録」(テレビ西日本)、「ジンギス談!」(北海道放送)のように多くの地域で放送されている番組もあるものの、全国ネットになる番組はなかなかありません。
 バラエティ番組を作りたいなら、規模の大きな局に就職することが大事です。

2.会社は超アットホーム

 社員数が少ないこともあり、人間関係は超絶ウェットです。
 学生時代なら、段階を追ってからじゃないとされないような質問もズバズバしてきます。
 例えば、「彼女いるの?」とか「どこ住んでるの?」みたいなプライベートなことまで何食わぬ感じで聞かれます。

 私が勤めていた地方局は、社員が150人くらいだったので、3年もすれば、ほぼ全員が顔見知り。いろんな噂も入ってきます。
 街も東京や大阪に比べたら狭いため、誰かとデートでもしようもんならすぐに誰かに見つかります(笑)
 
 ある意味、村社会ですね。
 ただ、悪いことばかりではなく、みんな勝手知ったる仲なので、認められてしまえば仕事はかなりしやすいです。
 
 地方局の場合は基本的には転勤もないため、一度居心地が良くなると、ずっと楽しく仕事ができる良さはあります

 ただ、互いに助け合える一方で、そこに甘えが生じる可能性もあるので、定期的に「自分はプロなんだ」と言い聞かせる必要性は感じました。

3.自由度は高い

 いかんせん人手が足りないため、一人一人の裁量が大きいです。ニュースのクルーを1つとっても、キー局なら「記者•カメラマン•音声•ドライバー」という単位で動きますが、地方局によっては、全部1人で賄っているところもあります。記者やディレクターが自らカメラを回し、リポートもし、車も運転し、原稿も書く。
 裁量がでかすぎて最初は大変ですが、かなり鍛えられるのは間違いないですね。
 地方局経験者がキー局にいくと、仕事が細分化されすぎていて、「え?これしかやらなくていいの?」となると良く聞きます。ただ、キー局の人たちの仕事が楽かというとそうではなく、より高いクオリティを求められる大変さがあります。地方局の番組に慣れるとキー局の番組作りは、別次元に感じられますね。

 番組の企画もキー局だとなかなか通らないと言いますが、地方局だと「いいじゃん、やってみなよ!」と挑戦させてもらえることが多いです。見ている人が少ないからこそ、やり方によっては挑戦的なこともできますし、マンパワーや制作費さえ賄えれば、自分で番組を作るどころか新たな事業を立ち上げたりすることもできます。私が前にいた地方局では、アナウンサー自らが公式のYouTubeチャンネルを立ち上げたりしていましたね。

4.地元愛がためされる

 前にも触れましたが、「地方局で働く」ということは、その地方に住む人のための情報を届けるということになります。
 そのためには、その地方に住む人たちの興味•関心がどこにあるのか、常に考える必要がありますし、その地域の歴史や地理、文化、経済、政治など多岐にわたって知り尽くすことが求められます。
 自分がその土地に縁があればよいですが、知り合いもいない、行ったこともない地域のために本当に自分の人生を費やすことができるのか。ちゃんと考える必要があります。私は、地元ではなかったのですが、出身県の隣県だったので、まだ馴染みがあり、なんとか楽しく仕事ができましたが、それでも5年ほどで辞めてしまいました。ただ、関東出身者で大学も関東、「テレビ局で働きたいけど地方局しか受かりませんでした…」という人が定着するのはなかなか難しい印象でした。
 それは採用する側も分かっているため、地元出身や隣県出身、県内の大学生から採用するケースが多いです。(私のいたテレビ局では、なぜか同期に地元出身が1人もいませんでした…。)ただ、アナウンサーなど全国津々浦々で試験を受けて、テレビへの情熱を見込まれて採用される人たちも一定数いるので、そうした人たちには、本当に地方で働く覚悟があるのか見つめ直してもらいたいですね。
 まぁ、今となっては転職市場が活況なので、合わなければ辞めて転職するなりすればいいと思いますが…。

おわりに…

 ここまで読んでくださりありがとうございました。
 私も地方局に5年ほど勤めたのですが、働いていると色々感じる部分があり、まだ記憶が定かであるうちに書き残そうと思いました。
 まだまだ言語化できていないことや、書ききれていないこともあるので、暇なときにまた続きを書いてみようと思います。


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