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2024年4月の読書日記

読んだ本の数:25
読んだページ数:8980

今月も広く薄く数だけ多く読めました。
おおすめ本を五冊紹介します。


悪い夏 (角川文庫) ・・・生活保護をモチーフにした骨太の作品。必読の書です。

トータル・リコール ディック短篇傑作選 ・・・映画化もされた表題作他、優れたSF短編集です。

方舟 ・・・ミステリーの傑作、ラストがいい。

幻夏 (角川文庫) ・・・免罪について考えさせられる傑作・

犯罪者【上下 合本版】 (角川文庫) ・・・骨太のミステリー、めっちゃ面白かった。


以下、読んだ本の感想。



四月になれば彼女は (文春文庫 か 75-3)感想
愛とは何かを問いかける小説なのですが、これだという解答はなかったように思う。10年くらい前までは、恋をして結婚して子供ができて最後まで寄り添うのが幸せとか愛とか信じられていたが、少なくともそういう価値観は否定されたのかなと思う。何も努力なく生きているだけで愛が続くと言うのは幻想なのかと感じた。ハルと弥生という二人の女性の恋に対する気持ちが現在と過去という形で示されていて、最後のハルのパートにはギュッとくるものがあった。あの手紙を読んだ弥生が逃げたくなるのはわかる。
読了日:04月01日 著者:川村 元気

岩波文庫的 月の満ち欠け感想
人は死ぬと、天国に行き、それから現世に生まれ変わるという話しがある。本書では、この生まれ変わった時に、自我が残存するというのである。それは彼女が、彼を深く愛したからであり、その愛が本物だからだ。ミステリー風にはじまった本書、語り手は幼女とその母、聞き手は幼女の前のつまり前世の娘、その子は何度も何度も、この生まれ変わりを繰り返している。その話しが、この物語になります。直木賞作品なので読ませる力作ですが、ちょっと非現実的に思えます。好きですけど・・・。
読了日:04月03日 著者:佐藤 正午

夏空 東京湾臨海署安積班感想
今野さんの人気シリーズ東京湾臨海署安積班シリーズの短編集。初期の作品と少し雰囲気が違い、今の時代が犯罪に反映されていた。お年寄りの運転の問題、外国人の犯罪の問題、ユーチューブバーの悪行、警察小説の面白さが凝縮されていた。びっくりしたのは刑事は覆面バトで現場に直行と思いきや徒歩、電車、バスって・・・。 これはおじさんには面白いのだが、一般読者受けはどうなんだか。「犯罪者ってのは、驚くほど勤勉なだ。欲望を満たすためにはどんなことだってする」 ってところがなるほどと感じた。これからの時代、警察は大変だ。
読了日:04月05日 著者:今野 敏

自分をよろこばせる習慣感想
ありがちな自己啓発本なのだが、悦るというワードは初見。ポリアンナ物語の良かった捜しや、ポジティブ思考と似ている考え方。朝日を浴びるとか、深呼吸するとか、良かったこと、ここでは悦になることをやるとか、まぁ、どこにでも書いてあることなのですが、ビビったらGoなど新しいワードもあり楽しめます。
読了日:04月06日 著者:田中 克成

スイス時計の謎 (講談社文庫)感想
探偵火村と助手の有栖川有栖が出てくる短編集。どの短編も秀逸なのですが、表題作である スイス時計の謎 この作品のすばらしいの一言。あなたたちの中に犯人はいる。と言って後の素晴らしい推理、緻密で正確で細部まで洞察していてすごかった。さすが有栖川有栖さんの作品です。
読了日:04月07日 著者:有栖川 有栖

犯罪者 上 (角川文庫)感想
下巻に感想
読了日:04月08日 著者:太田 愛

犯罪者 下 (角川文庫)感想
結末が嫌だ、でも、この小説には、これでいいのかもしれない。無差別通り魔殺人事件で何人もの人が殺害された。だが、何かおかしい。薬中毒と思われていた犯人。生き残った彼には、そうとは思えなかった。別人かも・・・。刑事、記者、生き残り、食料品会社の社員。彼らの立場と考えが、一つの線に集約されていき、一つの事件に共同して立ち向かうことになる。なかなか面白い内容でした。
読了日:04月08日 著者:太田 愛

幻夏 (角川文庫)感想
いい作品だった。子供の時に親友が失踪した。その日、その子の犯罪者の父が死んでいた。その事件から数十年後、あの事件と同じメッセージが見つかる。殺人事件だ。それも連続殺人。誘拐事件が発生した。前作で組んだあの三人が事件に立ち向かう。 今回のモチーフは司法制度だ。冤罪がいかにして起こったのかが突き詰められている。最後までハラハラドキドキの連続だった。推理ものというよりもエンタメとして読みほうがよさそうです。前作よりも、この作品のほうが優れていると思います。
読了日:04月09日 著者:太田 愛

方舟感想
典型的なクローズド・サークルミステリー。閉鎖空間で起こる三件の殺人事件。最後の謎解きも秀逸で楽しかったが、本作の魅力は想像すらしていなかったラストのどんでん返し。これは必読ものですよ。たくさんミステリー作品を僕は読んでますが、ここまで凄いどんでん返しは経験したことがなかったです。とにかくすごいの一言でした。
読了日:04月10日 著者:夕木 春央

禁じられた遊び ふたたび感想
ペットセメタリ―と貞子の融合のような作品で、前作は映画化もされていて面白かった。それの続編です。それなりには楽しめますが、美雪を生き返らせる少女の出生のエピソードがドン引きするほどありえなくてリアリティの欠片もそこにはなくて、それが物語そのものの評価になってしまう。これは読まなくていい作品かも。
読了日:04月11日 著者:清水カルマ

ブラウン神父の童心【新版】 (創元推理文庫)感想
推理小説の古典的な作品ということですが、ちょっと古臭いし無理もあるし、新しいミステリーに慣れているというのもあるが、これではしんどい。古典でも、アガサやコナンドイルならいけます。ただ、見えない男の話しはなかなか興味深かった。これは盲点だと思います。
読了日:04月12日 著者:G・K・チェスタトン

人は見た目が9割 (新潮新書 137)感想
ルッキズムの話しかと思いきや違った。意志伝達方法として僕たちは言葉の大切さを確信しているが、それを否定する内容だった。9割は別の伝達方法で・・・という内容なのだ。見た目もあるのだが、それ以外のケースもあった。映画ならセリフよりも主人公の行動のほうが意志が伝わる。女性に交際を申し込む、NOという言葉よりも頭を激しく横にふるほうが伝わる。つまり、言葉という聴覚刺激よりも視覚刺激が有効だという話しなのだと思う。色で伝わる意志、相手との距離感、言葉の間など事例がたくさん紹介されていました。
読了日:04月13日 著者:竹内 一郎

あいにくあんたのためじゃない感想
コロナ禍のことは最近忘れていたが、これを読むとそうだつたなと思い出した。ちょっとエレルギーッシュで独特の視線、切り口で語られる短編集。めんや 評論家おことわりが良かった。出禁のラーメン店とか傲慢だと途中まで、このラーメン専門家の視線で見ていたら、いきなり激しく転調。ここからSNSなどで写真を勝手に掲載することの罪が問われてくる。なかなかパワフルで良かった。トリアージ2020も好きです。ある長寿ドラマのファンの交流。コロナの時代の出産の大変さと、SNSで知り合った人の母に助けられるといういい話し。
読了日:04月14日 著者:柚木 麻子

私たちの世代は感想
コロナで自粛していた時代に小学生だった二人の少女の物語。パンデミックを契機にひきこもりになった女の子と、母親が夜の仕事をしていたためイジメられていた女の子。学校給食がなくなり飢えて不安になっていた少年。あの当時の社会問題を凝縮したような話しである過去と、その子たちが成長し就職活動をしている未来の物語。今まで読んだ瀬尾さんの作品に比べると明らかに劣化しているし面白くなかった。こういう使い古されたワードをパッチワークみたいにつなげた小説は僕はあまり好きでない。
読了日:04月15日 著者:瀬尾 まいこ

悪い夏 (角川文庫)感想
生活保護とは何なのだと感じた。不正受給をする人々、社会福祉事務所の人たち、それに群がる悪しき人たち。本当に必要な人が受給できなくて追い詰められて自殺する。ヤクザが事務所の人間を脅迫し不正受給に関与させる。このドタバタの愛憎劇を染井さんは見事に描いている。面白い。とても面白い。その理由は完結だ。登場人物全員が・・・自殺した親子は別なのか・・・悪だからだ。まさかの主人公まで悪に落ちていくのが面白い。
読了日:04月17日 著者:染井 為人

鎮魂感想
半ぐれ集団の面々が一人ずつ殺害されていく連続殺人事件を描いた物語。犯人に関してはわかりやすかった。この人しかいないと思う。前半の一人一人が殺害されていく場面は少しゆっくりした感じだが、中盤から後半にかけての動的な動きは面白かった。これは復讐の物語である
読了日:04月19日 著者:染井 為人

心配事の9割は起こらない: 減らす、手放す、忘れる――禅の教え (知的生きかた文庫 ま 41-7)感想
著者が僧侶ということもあり、仏教をベースにした自己啓発の内容になっていて、だいたい、この手の本はよく似ているのですが、やはり、それが数千年蓄積された英知なのでしょう。仏教は学ぶところが多く考えをポジティブにしてくれます。いい本だと思います。
読了日:04月20日 著者:枡野 俊明

闇に願いを感想
母が罪人で刑務所で育った。彼らは罪人であり、13の年まで出所できない。〈闇に生まれた者は、かならず闇に帰る〉という総督の方針があるからだ。罪人の子は罪人という思想である。そんな彼が刑務所を偶然脱走し寺に匿われ修行し・・・、ここで不思議な能力を持つ師匠であるチャム師と出会う。このチャム師が死んでからは、何か二流のファンタジーみたいな展開になってしまいました。教訓は善意からにしても力を持つということは人を変え、社会を窮屈にし、あまり良くないことになるということでした。
読了日:04月21日 著者:クリスティーナ・スーントーンヴァット

家族解散まで千キロメートル感想
家の倉庫に仏像があった、それもニュースで盗まれたと騒がれていたそれだ。神主が今日中に返したら罪に問わないと言う。で、返しに行くという物語。尾行してくる変な車、不自然なパンク。犯人は誰かという推理。返すとあっさりなかったことにしてくれる神主。犯人の動機は、その背後にある思いとは何か。家族とは何かを考えさせられる物語。最後のほうはかなり色んなことを考えさせられました。ただ、これを読むと家族という単位に対する不信感が芽生えるのではと思ってしまう。姉の主張はわかるのだが、まだ、時代が追いついてない気もする。
読了日:04月24日 著者:浅倉 秋成

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)感想
下巻に感想
読了日:04月26日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)感想
上下巻で二重構造になっています。それが本書の特徴です、ある町で家政婦が死んだ。その後、その主人が首無し死体で発見されて、それを名探偵が解き明かそうとする。家政婦を殺害した犯人が告げられたところで上巻は終わる。そのミステリー小説の作家が死んだ。結末がわからないのだ。編集者が作家を殺害した犯人を推理する。そして、原稿の結末を探り出す。この構造はかなり斬新だ。今までにない形なのは確かだ。この作品は今までに読んだことのない形であるのは確かだが、面白かったというと普通だった。ごちゃごちゃしすぎだと思う。
読了日:04月26日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?感想
大型プロジェクトはたいてい失敗する。それはどうしてなのかを専門家が解説したのが本書です。たいていのプロジェクトは納期があるので、早く考え、ゆっくり動くことが多い。すると、工期の間に予期せぬブラックスワンが到来し、とんでもない費用増大や工期の延長などが発生する。東京オリンピックや大阪万博を見ればわかります、じゃどうすればいいのかというのが本書の内容。一番大切なのは、ゆっくり考え、すばやく動くこと。計画は緻密で時間をかけ、実際に建物を建てる時はすばやくです。熟練の棟梁とチームを雇うことも大切ということでした。
読了日:04月27日 著者:ベント・フリウビヤ,ダン・ガードナー

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)感想
読みやすいのに、まったく先がよめなかった。最後の最後まで犯人はわからなかった。わざとらしい犯人隠しや誘導はなく読者に対しフェアーな態度で書かれていた。ホーソーンという探偵の助手に、作者がという設定もいい。最初にホーソーンに正直に書くように促されているからだ。本書の読み方としては、犯人を想像しながらがいいと思う。老婦人は自分の葬儀を申し込んだその日、何者かに絞殺されてしまった。という導入も良かった。そして、犯人と思っていた人が第二の殺人の被害者になり僕は混乱した。面白い作品でした。
読了日:04月28日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

トータル・リコール (ディック短篇傑作選)感想
トータル・リコールやマイノリティ・リポートなど映画化されている作品が気づいただけでも二作品もある。ディックはSFの金字塔などと言われている作家です。本作は短編集。10作品が入っています。発想がどれも面白かった。好きなのは、訪問者だ。これは世界観もオチも秀逸。核戦争後の世界と思えるが、やっと地上に出たし人類は仲間を探す。空気が汚染している。人類は貴重な種になっていた。出会うのはアリとか、韋駄天とかのミュータント人間ばかり、そして、強烈なオチ。オチでいうなら地球防衛軍や出口はどこかへの入口、吊るされたよそ者も
読了日:04月29日 著者:フィリップ・K・ディック

体育館の殺人 (創元推理文庫)感想
謎解きじたいはかなり面白い、ミステリー好きは読むべき作品だとは思うのですが初期の作品というのもあるのか読みにくい。キャラも鼻につくし、展開も何となくイライラする感じで、前提の追い詰め方というのが下手な感じがしたが、回答編はさすがに良かった。この人の作品は他にも読んでみたいが、もうちょっと洗練されないときついかもしれない。
読了日:04月30日 著者:青崎 有吾

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