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「土に還る」って比喩じゃなかったんだ!

全てのものは「土に還る」……小説などでよく使われるこの表現。
私はずっと「比喩」だと思っていた。

だって、土(粘土)は岩からできると習ったし。

岩が風化し、石→粗い砂→細かい砂→シルト→粘土と、物理的、化学的反応の末に含水鉱物の粘土ができあがる。
炭酸ガスと雨水が結晶の隙間に染み込んで、pHの影響で溶かされたりなんやかんやあって、長い時間をかけて変化し、カオリナイトやモンモリロナイトといった、粘土鉱物になるのである。

細かいことは忘れたけれど、もともと造岩鉱物だったものが、その結晶構造の中にまで水を取り込んだものが「粘土」つまり「土」だと思っていた。

生物が関与する余地なんか、どこにもない。
土は、地球が起こす反応の果ての成果物だ。

ところが。
なんとなんと、森では菌が土を造るらしいのだ。

「キノコの正体は黴の花」
生態系の自然観に基けば、菌類は一切の有機物を分解して無機物に還元する。

愛媛のキノコ図鑑 より

なるほど。
キノコが枯れ木に棲み着き、栄養を吸い取り細胞壁を分解しながら、木を腐食させていくその様子は、確かに菌が土を作っているようである。
粘土とは違う種類の、「ふかふかの土」と評される畑作に適した土は、植物由来の腐葉土と呼ばれるものなのだろう。

例えば、こんなの。

キノコたちは、立派に育った有機物である木の硬い細胞壁を、ぼろぼろの腐葉土に作り替え、昆虫たちの生育環境を作ったり、新たな植物が再利用できるようにしていたのだ。
キノコは、森のリサイクル屋さんだったのである。

そういえば、キノコが地球に誕生する前は、動物も植物も、死んだ後に腐ることがなかったと聞いたことがある。

(ソースはこれ以外にも、いくらでも出てくる)

きのこがまだ存在しなかった今から1億年ほど前の白亜紀以前の地球においては、植物や動物の遺体を分解する還元者(きのこ)がいなかったことで遺体がそのまま化石として残って地下で「石炭」となり、あるいは何らかの化学変化によって「石炭」が液状化して「石油」と言う化石エネルギーの形で残るようになったと言われております。

きのこ豆知識その1・生態系における役割

石油は「炭素」と「水素」が複雑に絡み合う構造をもつ有機化合物だ。
腐食させることで「有機物」を「無機物」に変えてしまう菌たちが産まれる前は、動植物の遺体は、最終的に川の流れによって海や湖などに運ばれ水の底に堆積した。

逆にいえば、大雨が降らないと、その辺には巨木や遺体がゴロゴロ転がっていたということで、とても歩きにくかったに違いない。
ものが腐らない世界が、うまく想像できないが、死骸がいつまでも新鮮なまま残っているということは、肉食恐竜たちにとっては、とんでもなくラッキーなことだったのではないだろうか?

とにかく、そんな世界は、菌が生まれて終わりを告げた。
死んだモノは腐り、分解されて再利用されるようになった。
この先永遠に、自然界で化石燃料が生成される夢は潰えたのである。

代わりにキノコたちは、人間が作ってしまったけれど、壊せずにいる邪魔者を分解する能力もあるようだ。

分解者としてのきのこには、ゴミ焼却時に発生するダイオキシンや洗剤、農薬などの製造に使われた有機塩素化合物(環境ホルモン)など、難分解性の物質を分解する能力を持っていることが知られており、地球環境を維持するために働いているなど、我々の知らないさまざまな秘密や独自の生活様式を営んでおります。

きのこの雑学・きのこの豆知識

うーん、すごい!

環境ホルモンまで、無害なモノに還すなんて。
ナウシカで描かれた世界は、ある意味、真実だったのだ。

「泣いてるの?」「うん、うれしいの。」

森の中で、無くてはならない存在となってしまったキノコ。
なんだか、キノコのおかげで未来が明るくなった気がする。

とってきて食べるだけじゃなくて、何かできそうなことを探した方がいいんだろうな。
山、森、海、セットで循環を考えなくては。

**連続投稿834日目*

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