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車内報の楽しみ

今でもあると思うが、かつて「法廷傍聴エッセイ」が流行っていたことがある。法律を勉強することになると、避けて通れないのが裁判所を代表とする司法の考え方だ。

裁判はたいてい公開されているから、裁判所に行けば見ることはできるが、写真を撮ったり録音することは許されていない。メモを取ることはできる。それをもとに書いているのだろう。

一般的にイメージされる裁判は、被告が出てきて裁判官が判決を述べるものだけれど、実際の裁判はかなり時間がかかる。いくつかの手続きを経なければ、判決は言い渡されないのである。

その傍聴エッセイはたいてい最後の判決のところしか見ていない。だから、事件の概要もあまり詳しくなく、被告と検察が争う事件の中身は詳しく語られていない。

また、世間を騒がせた事件であれば傍聴権を求めて抽選になったりもするが、ふつうは関係者以外には傍聴しない。

その書き手は、“面白そうな”裁判を傍聴しているだろうから、エンタメとして扱われてしまうのが個人的には残念に感じられて、多くを読もうとは思わなかった。


さて、話は変わって、インターネットが流行り出して、自分のホームページ作りが流行っていた頃、僕もホームページを作ったことがあった。驚くべきことに、そこにはエッセイをかなり載せていた。

中でも、電車内で見かけた人を描写するシリーズが、わざわざメールをもらうほどに人気だったことがある。

大学に通う地下鉄の車内で見かけた“面白い人や出来事”について書いていた。酔っ払い、痴話喧嘩、告白、噛み合わない会話など、長く乗る車内では、ときに緊張感もありつつ、こんなことあってさぁ、と話したくなるような場面が結構あった。

長くなったが、infocusさんの車内でのエピソードを読んで、その時のことが思い出された。読みおえて、サムネイルの写真は果たしてどうやって撮ったのだろうか、と疑問も湧いた。

忘れ物や落とし物は、たいてい元の場所に置いておくのが、なんとなく暗黙の了解のようになっている。この時も、そのように対応しているのだけれど・・あーそうだよねー、と笑ってしまった。

infocusさんの前にも同じような人がいて、きっと遠くでその光景を見ていたのだろうと思うと、車内のモヤモヤした緊張感が伝わってきた。

親切心がなければ起こらないエピソードでもあっただろう。


車内では黙々とスマホを見つめてしまいがちだけれど、顔を上げると面白いことが起こっているかも知れない。

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