見出し画像

突然野球が好きになった

1年半ぶりの投稿。ずいぶん空いてしまった。
この1年半の空白を埋めるべく、2022年の私について書いておこうと思う。

2022年初夏、突然雷に打たれたようにプロ野球観戦にハマった。それまで野球はおろか何のスポーツにも、オリンピックにさえ興味を持ったことがない人生だったので、周囲の私を知る人々は私のあまりの熱狂ぶりに困惑していた。

きっかけは1冊の本だった。スポーツ記者の鈴木忠平氏が2021年秋ごろに出版したノンフィクション。

ノンフィクション好きの友人から電話があり、「落合の本を読んで」と勧められたのが2月頃だったと思う。野球なんて何人でやるスポーツかも分からない私に、この人は何故こんなに勧めて来るのか。私の何が見込まれているのか不可解だった。なお私はこの時「落合って、生きてる人ですか?」と聞いて怒られている。

とはいえ信頼のおける人に勧められた本はやはり読んでみたい。電話を切ったその足でアマゾンへ向かい、すぐに電子版をダウンロードして読み始めた。初めは「ブルペン」などの知らない単語が多すぎてGoogleと二人三脚の読書だった(ここで1~2か月かかっている)けど、記者の文章の上手さと文学的な表現に引き込まれ、そして何より落合氏の人間としての興味深さに心を掴まれて、次第に夢中になって行った。少しも興味のなかった野球というスポーツに、気づけば胸を熱くし涙を流していた。読み終わった頃にはシーズンが始まっていて、私はCS放送を契約し、近鉄電車に乗ってバンテリンドームナゴヤで中日ドラゴンズ対広島カープ戦を観戦した。はじめて真剣に見た野球だった。ここにいる選手やコーチやスタッフひとりひとりに、どんなドラマやストーリーがあるのか。もっと野球を見たいし野球選手を知りたいと思った。

まあそんなわけですっかり野球に興味を持ってしまった私は、日々CS放送で観戦しながら甲子園や京セラドームや、時には横浜スタジアムなんかにも足をのばし、喜んだり落ち込んだりイライラしたり、職場の野球ファンと新たな親交を深めたり、自分の職場とチーム打線を重ね合わせたり(サラリーマンしぐさ)して野球観戦を楽しんだ。

球場には子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、まさに老若男女が揃っている。独りで気配を消している人もいれば仲間とパーティー状態の人もいる。上品なワンピースのご婦人もいればケバケバのマスクをしてワンカップ片手に大声を出している人もいる。その混沌が私にはとても心地良かった。球場では誰も私のことを見ていない。アノニマスな存在でいられることが心地良かった。

沖縄のホテルからみた景色

先日、沖縄へ行った。プロ野球チームは冬のシーズンオフの間、暖かい地域でキャンプ(練習合宿みたいなやつです)をしていて、ファンに無料で見学開放している。

あの突然の電話からちょうど1年後。電話主の友人とふたり、北谷のホテルのベランダで海を眺めながら、「思えば遠くまで来たなあ」としみじみした。
大人になってからこんなに大きな楽しみを知られたことは嬉しい驚きだったし、私に何かを見込んでその楽しみに引き込んでくれて、日々それを共有できる友人がいることは私の財産だ。

1年で立派な野球ファンに急成長した私がこれからどうなるのか、自分でも分からない。数十年後には、甲子園のライト外野でケバケバのマスクをして、ワンカップ片手に大声を出しているかも知れない。

そういえば今春からは球場での声出し応援やトランペット応援が解禁された。私の知らない、本来の熱い応援が戻ってくる。まだまだ楽しみが尽きない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?