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緊急事態に思うこと。ちょっと真面目に。

2020.5.25. ミヤ / MUCC

緊急事態宣言が出てから、ほぼ家にいましたね。どうしても機材を運ばなきゃいけないときとかに事務所に行くことはありましたけど、ずっと家にいました。朝まで作業することもないので、生活が規則正しくなってますね。寝る時間は遅いですけど、ちゃんと朝起きるというか。人間らしくなって(笑)。人と会わないから飲みに行くこともないし、家では飲まないんで、ここ最近全く飲んでないです。そうしようと思ったわけじゃないけど、断酒みたいになってて。健康的ですね(笑)。

音楽をやるうえでは、リハーサルができないんでね。やっぱりうちのバンドは、一緒に演奏をしてライヴの流れとかを作っていくから、リハーサルができないのは大きいです。この前、リモートで配信ライヴをやったんですね。あれはリモートですけど、一人ずつ録音したものを合体させて、一緒にやってるように作ったものだったんです。ネット上でリアルタイムでできるのがいいんですけど、今の技術では無理なんですよね。遅延が発生してしまうから。

これから、配信ライヴをやろうと思ってるんですけど、その準備のリハーサルもできないし。フルアルバム『惡』を出したばかりですけど、そのアルバムの曲のリハーサルもできてないんです。だから、たとえば配信ライヴでアルバム曲を全部披露しましょうといっても難しいですよね。今までは、ライヴではこういうアレンジでいこうっていうのをリハーサルでやってからライヴをやってたけど、今はそういうことができないから。でも、逆にできない状態で配信ライヴをやったらどうなるか、それもちょっと面白いと思ってるんですけどね。

配信ライヴだから、普段のライヴでお客さんが体感しているようなものはもちろんできないから、別の形として割り切ってしまえばいいかなって。次の配信ライヴはリアルタイムでできるかなと思って、場所をリサーチしてるところなんです。最近テレビでアナウンサーとかが離れたところにいて放送したりしてますよね。そんな風に、4人が同じ建物で合奏してるんだけど、みんな別の部屋にいるみたいな。それは逆にちょっと面白いですよね。デジタルの技術もいろいろ発展してるから、そういうものを取り入れるのは楽しいですね。

新型コロナウイルスがきっかけでオンライン化が進むと思うんですけど、すごく前向きに捉えてます。取材も全てzoomだけど、すごく効率的だから、逆にこのほうがいいぐらい。内容的に面と向かってやる取材の必要性があるものだったら会ってやるほうがいいかなという気はしますけど。今のほうが生産性が高い気がしてます。

変化についていけない人たちは淘汰されるんじゃないですか。アーティストは、発信することを制限されてるわけですよね。エンタメは命に関わることに比べると優先順位は低いんだけど、命に関わる仕事をしてる人が休憩時間に聴く音楽にもなるし、それはすごく大切ですよね。この間、配信ライヴをやったときに、医療従事者の人が「お昼ご飯のときに見ます、すごい楽しみにしてます、仕事この後も頑張れます」みたいなリプライをもらったりしたんです。俺らはこれしかできないから、今の状況に抗ってる感じはしますよ。

やっぱり発信していきたいですよね。こういう状況になってから、何も発信してなくて、全然見なくなったなという人もいますよね。2、30年前だったらやりようがなかったと思うんですよ。でも今や、テレビの文化でもないし。映画もドラマもNetflixとかのほうがたくさんあるし。ネット環境が身近なものになってるから、そこを使って遊びたいですね。

もし自分が普通に働いてて、仕事ができなくて家にいなきゃいけない状況になったら、好きなアーティストの配信を見たりすると思うんですよね。だから発信したいとも思うし、発信できないとストレスがたまるんですよ。もしツアー中にこういう状況になって、ツアーが止まってしまってたら、ネット上で新曲を作って発表してたと思いますよ。ニューアルバムの発売があったからよかったし、今はまず新譜を聴いてもらえたらいいですね。

これから、もちろん配信ライヴとかをしていくんですけど、今までやってきた発信方法とは違うんで、やる側も見る側もとまどいがあって、普段とは違う感じになるだろうなというのは懸念点ではありますね。だから、それはそういうものとして楽しんでほしいと思ってるんです。

こういう状況に対して、とまどってはいるんですよ。でも、いつも使わない脳を使って、いつもできないことをやるしかないですよね。休みなく動くタイプのバンドだったんで、オフみたいな感じで見つめ直す時間もなかったから、いい機会ではあるかなとも思ってます。

こういう風になったからこそ見えてきたこともありますよね。何もできないからってただじっとしている人と動いてる人間があからさまに出て来たり、世間の人たちを見てると人間のダメな部分みたいなのも現れてきたり。ある意味、いい機会だったんじゃないかなとも思います。大気汚染も減ったらしいし。50年間に一回ぐらい、神様がウイルスを投下するんじゃないかな。

編集長の日記
緊急事態宣言が解除されました。今日から久しぶりに出勤したという人も多かったかもしれません。
この緊急事態宣言を境に何かが変わるのかはわかりませんが、もっと長い目で見たときに、新型コロナウイルスの流行を境にたくさんのものが変わるのは間違いないでしょう。まだその最中にいる私たちには見えていないだけ。
この期間がいったい何だったのか、のんびり振り返れるときがきたときこそ、新型コロナウイルスの終息ですが、それはまだまだきっと先のことのようです。

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。