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DAISHI×YURAサマ / Psycho le Cému インタビュー

11月2日から、Psycho le Cémuのツアー
「TOUR RESISTANCE~君がいる世界~」がスタートする。
全箇所2デイズの「Day1 少年の右目/Day2 少女の左目」で、
さらなる深い世界が明らかになってくることだろう。
現在のコンセプト”RESISTANCE”のプロデューサーであるYURAサマと
DAISHIの二人に、コンセプトについて深く訊いた。


●まずは、10月2日のメジャーデビュー20周年記念ライヴはいかがでしたか。
DAISHI:思ってるより、ちょっと嬉しかったです(照笑)。

●思ってるより?
DAISHI:あんまり感動しないタイプなんですけど、やっぱりね、デビューした日にまた音源がちゃんと出せたし、ライヴやってて幸せ者だなって思いました。
YURAサマ:Psycho le Cémuらしいライヴになったなと思いました。よくわからないジャンケンが始まって、全部忘れてDが先に帰って(笑)。
DAISHI:あのときのタイミングでハケるっていう段取りがあったから。僕がハケたら全員一緒にハケるのかなと思ってたら、みんなずっと残ってて。僕はちゃんと段取りを守ってただけなんです。
YURAサマ:ライヴの途中でそれは変わったわけなんですよ。
DAISHI:みんなで一緒に帰ろうって決めたやつやろ? あそこでみんなで帰ればよかってん。
YURAサマ:この足並みがそろわない感じ(笑)。それが、サイコらしくてよかったです。

●そこが、らしいわけですね。
DAISHI:いいのか悪いのかわからないけど、ライヴの最後はぐちゃっとしましたね。
YURAサマ:僕はそれがよかったですね。本編はある程度、決め込んでたことも多かったので、アンコールの短い時間でも、デビュー20周年の最後の最後に僕達らしさが出たのはよかったんじゃないかな。
DAISHI:あれはねらって出せないですね。

●20周年ってものすごく長い時間ですけど、変わってないところなんですかね。
DAISHI:最後の場面はそうですね。でも、1本目のMCでAYA君がトラブって、僕とseekがMCでつないだんですけど、何も動揺せずにつなげたのはデビュー20周年だなって、しゃべりながら自分で思いました。僕がしゃべり出したらしたら、すかさずseekがしゃべり出してくれたし、阿吽の呼吸やなって思いました。
 

新曲「もう一度、くちづけを」とライヴテイクから見えてくること

●さて、デジタルシングルに続いて、ミニアルバム『もう一度、くちづけを』がリリースされますが、もともとYURAサマは曲に対してどんな印象を持ってたんですか。
YURAサマ:最初に聴いたときは、ちゃんとバンドで演奏できるかなって思ったし、テンポを落としたほうがいいんじゃないか、みたいな話はしましたね。

●ドラムとしては?
YURAサマ:大変そうだなとは思いましたけど、ドラムソロ的なところをどうしたものかなって悩んだというか、考えなきゃいけないなって引っかかったぐらいですね。あとはまた新しいタイプの曲ができたなって感じでしたね。「愛の唄」でデビューして、20周年に「もう一度、くちづけを」が出て、偶然ですけど、そこにストーリー性が見え隠れするのも素敵だなと思いました。

●ミニアルバムには、「もう一度、くちづけを」以外に、LINE CUBE SHIBUYAでのライヴ音源が収録されますが、選曲はどんな風に?
DAISHI:僕が考えたんですけど、「アカツキ」と一緒に収録した曲とかぶらないように。それで渋谷公会堂のときのメインというか、見どころがあったところを考えて、オープニングと「哀の雨」とか、自分の中の思い入れのある曲を選びましたね。「蒼い星」に関しては、めっちゃ上手く歌えたんで入れました(笑)。

●自分のテイクありき?
DAISHI:ライヴ音源なんでそこは大事ですよね。最近、あの辺のテンポ感の曲が上手く歌えるんです。

●レコーディングした曲とライヴ音源を1枚のミニアルバムにできるところはさすがのキャリアですよね。
DAISHI:そうかな~。この3年ぐらいですよ(笑)。そうなったのはオンラインライヴのおかげです。コロナ禍になってからは、ピッチとかリズムの合い方が全然違って、よくなりました。

●細かくチェックする機会が増えたからですか。
DAISHI:アーカイブで何回も見られるから、歌に対しての神経質さの度合いが格段に上がりました。ミスるとお客さんも何回もそこを見られてしまうから。演奏も絶対上手くなりました。歌ってて感じますもん。オンラインライヴを始めた頃、最初に映像を見たときは震えましたね。これをお客さんに見せるのか、って。もうちょっとスキルアップしないといけないと思いましたよね。

●そこから実際にスキルアップできたと。
DAISHI:なるべく打率を上げていく作業をやってきたんやと思います。ライヴだと、パフォーマンスが先行してもそれがまたカッコいいときがありますけど、オンラインはそれを許してくれないですから。それで、自然とできるようになったのかな。この年になってスキルアップできたことは嬉しいですね。もう伸びひんやろなと思ってたのに、それが伸びましたからね。

●YURAサマはライヴのテイクを改めて聴いていかがですか。
YURAサマ:ドラムなんでね、ほかのパートの人とちょっと違うかな。配信をやる以前から、ライヴDVDとかでそのままのテイクが残る経験をしてるから。改めて配信だからという気持ちの変化はなかったですね。
DAISHI:ヴォーカルしとうときは?
YURAサマ:おもしろいもんで、Dはヴォーカリストやから気にするけど、僕は別に上手く歌わなくていいって思ってるから。

●あ、自分はドラマーだから?
DAISHI:それ、せこいわ(笑)。
YURAサマ:自分の逃げ道を作るのは得意なんで(笑)。
 

RESISTANCEの世界は、少年少女の心模様を描いている

●改めて“レジスタンス”というコンセプトについておうかがいしたいんですけど、もともとどういうところから考えていったんですか。
YURAサマ:LINE CUBE SHIBUYAでやったときは、衣装がもう決まっていたので、この雰囲気で何を伝えようかというところから考えました。お話の作り方でいうと、先に設定がなんとなくできている状態で、先に結末だけは自分の中で作ったので。そこに向かうまでに、前振りをどうするか考えたのがLINE CUBE SHIBUYAなんです。あの日は、とりあえず設定をみんなに伝えようと思ってました。

●それで、それぞれの人物像とか雨が降りやまない世界という舞台が表現されていたんですね。お芝居を入れないというアイデアについては?
DAISHI:『勇者物語』を楠本柊生帝國元帥に書いてもらって、また書いてもらおうかなとも思ってたんですけど、彼が病気で亡くなって、あれが遺作になったんですね。本当にいい作品やったから、むやみに僕らが書いてお芝居をやるのはしんどいかなって個人的には思ってました。新しいコンセプトやし、切り口を変えて、YURAサマが考えてよかったですよね。Daccoでいつもふざけてるから、こういうシリアスなのが書けるのが意外やったけど、すごくハマったと思います。

●DAISHIさんがYURAサマを指名して書くことになったんですか。
DAISHI:自分から言ったんじゃない?
YURAサマ:Dが悩んでるのがひしひしと伝わってきたし、個人的にはこれまで通りだとよくないという気持ちもあったし。それとPsycho le Cémuとして新たなチャレンジをしたい気持ちがバンドの中にあったので、自分のアイデアを試してみようという感じでした。

●お芝居ではなく、曲であるとか、違う見せ方で世界観を伝えることも最初から考えてたんですか。
DAISHI:曲に、より入り込めるようなエンターテインメントという考えはありましたね。YURAサマもそういう作り方で、歌詞をなぞるようなエンターテインメントを考えてるから。
YURAサマ:いろいろ考えたんですけど、バンドを一番カッコよく見せないとダメだなと思ったんです。これまでのPsycho le Cémuのやり方とは違う方法もあるのかなと。僕達はお芝居とかもやってるんですけど、別に得意じゃないんですよね(笑)。得意じゃないことより、得意な部分を伸ばした方がバンドとしていいなと思ったし…。そもそも僕達は生粋のバンドマンなんですよ。やっぱり音楽をやってるときが一番カッコいいんですね。だから、メンバーはただ一番カッコいい姿で音楽をやっていれば、話は進んでいくという作り方にしました。曲をやっていけば物語が進んで、歌詞がストーリーを伝えていくという方法を考えました。

●そういうところから、ライヴ中に楽器隊のセッション的なところとかも生まれていったんですか。ロックバンドであることを改めて感じさせるシーンが印象的でした。
YURAサマ:あれはね、最近、AYA君が音楽で遊びたがるんですよ。
DAISHI:音楽P(=AYA)とエンタメP(=YURAサマ)と二人いる感じですね。

●音楽とか演奏に対する割合を増やしたいという気持ちが出てきてるんですかね
DAISHI:単純に、それができるようになったからじゃないですか。今ならできるから、AYA君もめちゃくちゃ楽しいんじゃないかなと思うし、音楽をやりたいんだろうなっていうのをすごく感じてます。

●もうひとつ、コンセプトについておうかがいしたかったのは、10月2日の新宿BLAZEでのライヴでは、照明で星空を表す演出がありましたよね。“レジスタンス”の世界は雨が降りやまないはずなのにって思ったんですけど、あれはどういうことなんですか。
YURAサマ:あの日は、雨が降り始める前の世界をやらせてもらったんです。

●LINE CUBE SHIBUYAで見せた世界よりも過去なんですね。
YURAサマ:メジャーデビュー20周年でもあったんで、おめでたい感じにしないといけないし、でも世界観としては決しておめでたい雰囲気じゃないんだよなって。悩んだ結果、そこに落とし所をみつけた感じです。

●まだ雨が降ってなかった頃にしようと。
YURAサマ:だから、「もう一度、くちづけを」なんです。「もう一度、くちづけを」したい、なのか、したいけどできない、なのか。あのときこうしておけばよかったっていうような、人が誰でも持っている後悔する心や、その他にたくさんある己の弱い心に反抗する“レジスタンス”をこの世界観として表現しているんです。

●なるほど! 「もう一度、くちづけを」の感情をひとつの世界に置き換えて表現しているということですね。てっきり、“レジスタンス”の世界を舞台に、「もう一度、くちづけを」のドラマがあるのかと思っていました。
DAISHI:普通はそう思います。YURAサマが言ってるのは結構難しい。
YURAサマ:「もう一度、くちづけを」したいのにできない二人の心の世界がもとになっていて、それを表現してます。その心の中は晴れたものではなく雨が降ってると思うし。

●そう感じている二人のイメージが少年と少女なわけですね。
YURAサマ:そうです。僕の中では中高生ぐらいのイメージかな。このコンセプトで最終的に伝えたいメッセージに向けてストーリーを考えたうえで、「もう一度、くちづけを」この曲が“レジスタンス”の世界の始まりにピッタリだと思います。
 

衣装のハーネスに込められた意味

 
●それで、ツアーは2デイズずつになっていて、少年側と少女側、それぞれ違う内容になるんですね。
YURAサマ:少年の右目と少女の左目が合う、まさに「もう一度、くちづけを」しようとしたそのときに、お互いに見えている景色を二日間に分けて表現していきたいと思っています。

●二日間でセットリストはあまりかぶらず?
YURAサマ:かぶる部分もあるんですけど、それはストーリーの中の男の子と女の子が同じ世界に生きてるからこそかぶってくる出来事もあるからですよね。ライヴとしては、わかりやすく違う感じになります。衣装もLINE CUBE SHIBUYAで着た衣装と今の衣装の2パターン着ます。少女の世界でみんながハーネスをつけているのは、何かに縛られている少女の気持ちの表れですね。そこから解放されたいと願う少女の心をライブで表現したいなと思っています。

●現在の衣装についているハーネスですよね?
YURAサマ:5人に共通しているのがハーネスなんです。
DAISHI:前の衣装ではバンダナですね。共通しているものは作ろうと最初に決めてたんです。
YURAサマ:そこに込められた意味を、次のツアーでは出したいと思ってます。

●共通しているものを考えたときはそこまで決まってなかったと思うので、伏線の回収っぷりがすごいですね。
DAISHI:よくやるよね。
YURAサマ:まるで最初から考えていたかのように作っていってるんで(笑)どこかのタイミングで、“これ、すごくない?”って言いたいです(笑)。バンドの動きの大枠の流れはあるけど、絶対そのとおりにはいかないんですよ。その変化に対応しながら、ストーリーを進めていくので、最初にストーリーを決め込みすぎるのもよくないですね。柔軟に対応しながら、自分の思い描いている終わりにどうにかつなげようとしてる状態です。

●ツアーでお披露目すると発表されている「君がいる世界」も、今回のツアーのために作ったわけではないですもんね。
DAISHI:seekが「もう一度、くちづけを」を持ってきたときより、もうちょっと前にあった曲かな。すごくいい曲ですよ。「アカツキ」が先行の曲で、「もう一度、くちづけを」、次に「君がいる世界」という順番で、ツアーごとに新曲を出すというのは早い段階で決まってましたね。

●ツアータイトルでもあるので、今回のツアーのカギになる曲ですね。そして、ツアーファイナルでクリスマスを迎えると。
DAISHI:クリスマスにライヴはあんまりやったことがないんで、珍しいですね。クリスマスやお正月に大きいライヴをすると、みんな忙しいかな、用事があるかなって気を遣っちゃうんですよ。それやったら、5月3日と10月2日っていう自分たちの記念日に盛大にライヴをやれたらなって。

●クリスマスを一緒に過ごしたいファンの方もいると思いますよ。
DAISHI:イブイブとイブにライヴをやるんやろ?、めっちゃ気持ち悪いバンドや(笑)。

●Psycho le Cémuとクリスマスを過ごしたいファンの方はぜひ足をお運びくださいね。では最後に、ツアーに向けて一言ずつお願いします。
YURAサマ:バンドとしてのカッコいい部分と、Psycho le Cémuらしいストーリーのある世界、両方を楽しんでもらえたら。やっぱりPsycho le Cémuってこうだなっていうのを感じてもらいたいと思ってます。
DAISHI:ライヴを重ねるたびにもっと見たいなって思ってもらえるような、後半に向かって盛り上がっていくツアーにしたいですね。

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。