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DAISHI×seek / Psycho le Cému インタビュー

10月2日、メジャーデビュー20周年を迎えるPsycho le Cému。
同日、デジタルシングル「もう一度、くちづけを」をリリースし、
新宿BLAZEでワンマンライヴを行う。
これまでの彼らのイメージを一新するようなこの曲は
どんな風に生まれたのか。
DAISHIと作詞作曲を手掛けたseekにたっぷり話を訊いた。
2022年現在の彼らを感じる機会は、
11月2日発売のミニアルバム『もう一度、くちづけを』、
全国Tour RESISTANCE〜君がいる世界〜と続く。
たくさんの人に、新たな気持ちで彼らに触れてみてほしい。

●「もう一度、くちづけを」は前回のツアーの初日からライヴで演奏されていますが、曲ができたのはいつ頃なんですか。
seek:コロナ禍に入ってから曲作り期間を設けたんですね。そのときにアルバムができるぐらいの曲数が集まって、プリプロみたいな作業を一通りやった後に、もう一発、ザ・シングルですって思えるような曲を書くことになったんです。それが去年の2月で、そのときにできました。
DAISHI:それはよくやる作業なんです。みんなで曲出しをしてから、もう一回おかわりでさらにシングルを書いてきてって言うんです。

●曲作りをした後にさらに作るとなると、これまでと違うことをやろうという気持ちが出てきたりするんでしょうか。
seek:この曲に関してはそれに尽きますね。一曲しか出されへんのなら、自分の中でまずテーマを作らなあかんのかなと思ったんです。
DAISHI:seekは一曲しか出さんかったっけ? ほかのメンバーは、2、3曲書いてきとったやろ?
seek:そうそう。これぞっていう一曲のはずやのに、話ちゃうやんって思いました(笑)。
DAISHI:俺もそういう風に伝えたつもりやねんけど、どの曲もよかったよね。
seek:曲調がみんなまったく違ってたのが面白かったですね。
DAISHI:Lidaさんは、シングルっぽい曲とかそういう風に書かないんでね。言い方は悪いですけど、seekはわりとビジネス的に書ける部分があるかもしれない。
seek:そう言ってもらえるのはありがたいけど、今回そうできるようになったのかも。今回は、どういう曲を書くか、まずテーマを考えたんです。俗に復活したバンドっていう風に見られると、ファンの方は過去の曲に思い入れがあると思うんですね。それはわかるけど、僕らはアップデートしていきたい。今のPsycho le Cémuの新しい武器は、DAISHIさんの声の熟成してきている感じとか声の色気が増してきているとこやと思ったんです。だから、それを生かした曲にしたいと。それと、ここのところイベントでもバラード曲をするようにしてるんですけど、バラードにはしたくなくて。そういうのを試行錯誤してこの曲ができました。自分が書きたいと思ったものをちゃんと形にできたのは、今回が初めてやと思います。

 「もう一度、くちづけを」がシングルになったカギはBメロ!

●皆さんが持ってきた曲の中から、この曲がシングルに選ばれたのはどういう流れだったんですか。
seek:そもそも、先に「アカツキ」が出てますよね。曲出しのタイミングは同じなんですけど、姫路市文化センターのライヴ終わりに流れる曲、ツアーに行くぜっていうタイミングを考えると、やっぱり「アカツキ」が一番合ってたと思います。
DAISHI:seekが「アカツキ」でいきたいって言ったんちゃう? 俺は、プリプロの段階ではあんまりええ曲じゃないと思ってたんで。

●まさか!
seek:言うてましたね(笑)。
DAISHI:全部音を入れてみたら、ごっつええ曲やんと思ったんです。ワンコーラスしか聴いてなかったりすると、結構あるあるですね。逆もありますよ。原曲を聴いてめちゃくちゃサビがいいから全部作ってみたら、そんなでもないかなとか。

●そういうものなんですね。
seek:DAISHIさんは、音楽的に説明できるわけじゃないんやけど、絶対変えたほうがええとか、よく言うんですよ。
DAISHI:感覚でね。僕だけ音楽理論がいまひとつわかってないし、楽器もしないし、コードの流れとかもわからないから。でもね、昔の曲のあそこが気持ち悪いねんって言うと、AYA君がさぐってくれるんです。そしたら、コードがぶつかっているのがみつかるんですよ。
seek:AYA君はここ数年すごく勉強してるからね。

●DAISHIさんはなんとなく感じ取ってるんですね。
seek:だから、耳はええんやなって言ってます。
DAISHI:頭は悪いけど(笑)。

●そんな(笑)。DAISHIさんが、「もう一度、くちづけを」を最初に聴いた感覚はどうでしたか。
DAISHI:すごくよかったですね。僕、Bメロはいらんってよく言うんですよ。A、サビ、大サビみたいな曲のほうが絶対売れると思うんです。LUNA SEAさんがそういうのが多いんですよ。「ROSIER」は、♪揺れて揺れて~のところがサビな感じがするけど、実はサビは、♪ROSIER愛した君には~じゃないですか。そういうのを意識してほしいとは常々言ってます。この曲も、♪もう一度くちづけを~がサビなんですけど、♪二度三度~っていうところがサビっぽく、ぐっと上がってくる。
seek:でも、もともとBメロは低かったんです。それをDAISHIさんが、この譜割やったら、そこで上げたほうがいいと言ってくれて、もともとのメロの上ハモのラインにしたんかな。そうしたら、ちょうど声的にも張れる高さになったんです。
DAISHI:そうできないならシングルにしたくないぐらいに思ってたんですよ。自分が美味しく歌えるキーのところに乗ってなかったから。美味しいところで歌えるメロが決まったんで、シングルにいいなと思いました。

●これがシングルとなると、新しい一面を打ち出したいのかなという風に感じられますが、その点はいかがですか。
seek:これまでのイメージと違うものをというのは、作ってる段階で意識してました。MVを撮るのもそうやし、結果的にはこの衣装もそうやし。
DAISHI:この歳になって出すシングルという感じはしますね。大人の匂いがしますよね。
seek:それがたまたまメジャーデビュー20周年記念シングルになったから、こうきたのかっていう感じがする。

●結果論ということ?
seek:ほぼ結果論に近いかもしれないですね。もともと、メジャーデビューする10月2日に新宿アルタ前でゲリラライヴをやったから、同じ日に新宿でライヴができるのはいいよねって思ってたら決まって、11月2日からツアーが始まるのも決まって。そのうえでどこにリリースを入れたらいいか考えると、デジタル配信は曜日が関係ないから10月2日にできるし、ツアー初日が水曜日やったから盤の発売日にするのがいいんじゃないかって。
DAISHI:20周年という節目にリリースができるっていうのは幸せなことですよね。

もう一度、ライヴでファンに会いたいという気持ちも重なる歌詞

●特に曲調やリズム、歌詞の世界観曲が新鮮に感じたんですけど、DAISHIさんとしてはいかがでしたか。
DAISHI:サイコのイメージとしては新しいかなと思うんですけど、個人的にはこういう曲調をよくやってたんで、むしろ得意な雰囲気ですね。ただ、メロディを聴いたときは、姫路バンド臭がするなって思いました。

●へ~。
DAISHI:僕らが受け継いできた姫路バンドのメロディ臭がするんですよね。MASCHERAとかILLUMINAとか、そういう皆さんの匂い。やっぱり僕らにも先輩バンドの血が流れてますからね。

●ほかのメンバーさんはどんな風に受け止めていましたか。
seek:みんな結構とまどってました。
DAISHI:Lida君に関しては、引き出しゼロやったって言ってましたよ。こういう曲調はあんまりしないんじゃないですか。
seek:どうしたもんかな~感はありましたね。YURAサマが言ってたのは、seekがやりたいことはわかるんやけど、その感じがプレイで出せるんかなって。
DAISHI:俺も気にしてた。新しさより、テクニック的に成立させられるんかなって。
seek:今の形になるまで、いろいろやってみましたね。AYA君がコードを変えたり、ドラムのリズムパターンもプリプロで何テイクかやってみたり。一番デカかったのは、レコーディング前にツアーで演奏したことですよね。
DAISHI:ドラムは今までで一番レコーディングが長かったですよ。5時間ぐらいかけましたからね。僕、ドラムの後に歌入れしたんで、えげつない時間にバトンタッチされましたから(笑)。逆に僕はサクサク録れました。

●ベースは最初からアップライトで考えてたんですか。
seek:それは決めてました。原曲のベースのフレーズをAYA君がアレンジしてくれて、それを比較的忠実に弾いてます。だから、俺の曲なんやけど、AYA君の曲っぽいと思うときもあります。俺らコンビは、二人のパズル感というか組み合わせで曲を作ってますね。

●歌詞については、DAISHIさんの声の色気を意識したので、大人の恋愛みたいなものがテーマになったんでしょうか。
seek:僕はそういう意味合いだったんですけど、意外と受け取り手によっては違うみたいで。YURAサマは大人っていう風には考えてなかったり。僕は、大人の恋愛、今の年齢の恋愛観を出したいと思ってましたね。
DAISHI:僕も大人な感じでしたけど、YURAサマは具体的にすごくイメージを広げてたんです。僕はちょっとどろっとしてるようなイメージで歌ってました。サビの最後の言葉が、今のご時世だとメッセージ性を強く感じさせますよね。ファンタジーなバンドの僕らでも、コロナがあって戦争が起きてる今、考えさせられてぐっとくる現実的な歌詞が出てくるのかなと思います。

●ただの物語ではなくて、リアリティのある事柄と引き寄せて考えられるわけですね。
DAISHI:この内容は、ファンの人とライヴで会ったりすることとも受け取れると思うんですよね。こういう状況の中でライヴができて、それをもう一度っていう気持ちはロマンチックでもあるし、深い意味も出てくるかなって。
seek:受け取り方がそれぞれ違うのが面白いですね。懐かしさもあったり、新しいところもあったりするし、長く応援してくれてる人の印象と最近知ってくれて聴く人の印象とまた違うかもしれないし。

●このアー写と曲だけで判断すると、これまでのイメージとはまるで別のバンドだと思われそう。
seek:“レジスタンス”というキーワードから決めた衣装なんで、「もう一度、くちづけを」を出すから大人でシックな感じの衣装にしようぜではなかったんです。でも、今のこの瞬間だけを切り取って見ていただくと、バンドが変わったん?っていう印象になるかもなとは思います。

●まして、それがメジャーデビュー20周年記念のリリースですからね。
seek: “レジスタンス”というコンセプトが出てきたときのキーワードが、もっと勝負していける、もっとチャレンジしていける何かをっていうことやったから、それがここで明確に形として出てるのかなと思います。

年収3000万でライヴハウスより、年収300万で武道館がいい

●メジャーデビュー20周年を迎えますが、当時はここまで先のことは考えてなかったですよね。
DAISHI:考えてないです、考えてないです。何も考えてないです。
seek:日々を生きることで精いっぱいやったから。いろんなことを経験させてもらってたし、それについていくだけで精いっぱいでした。
DAISHI:売れたいという漠然としたものだけを追いかけてたよね。
seek:今日が終わったら、世の中が変わってんちゃうかなぐらいに思ってた。テレビに一発出たらめちゃくちゃ有名人になるんちゃうかなとか。
DAISHI:当時は『ミュージックステーション』と『HEY! HEY! HEY!』に一回出たら、世界が変わると思ってた。
seek:明日から街歩いたら、顔さされるんちゃうって。顔が銀色やし、絶対わからんやろうけど(笑)、デビューというものに対するドリーム感はありましたね。そういうのが持てたのは、僕らがギリギリ最後の世代じゃないかな。
●デビュー日である2002年10月2日のことは特別な思い出として残っていますか。
DAISHI:アルタ前でやったライヴの映像もたまに観ますけどすごいですね。
seek:前日に台風が来てたんですけど、YURAサマと大宮のアルシェのサテライトスタジオでラジオに出てたんです。アルタ前のライヴはゲリラやから事前告知はしたらあかんけど、アルシェのスタジオで、「明日、新宿●●に集合」ってホワイトボードに書いて、その場に来てるファンの人たちに見せたんです。わ~ってなったのはすごい覚えてます。
DAISHI:全然覚えてないわ(笑)。
seek:デビュー前夜、みたいなのは明確に覚えてる。台風が来てたから、明日晴れるかな、できるかなって思ってた記憶がある。

●それから20年経って、今もPsycho le Cémuとして5人が存在しているのは、本当にすごいことですよね。
seek:あの頃は、ヴィジュアル系の先輩方を見てこういう風にやっていけばいいというのがあったんです。20年経って、たくさんいたバンドも減っていくし、これが正解という道筋がなくなってきて。それに加えてコロナ禍で、バンドを続けていける道を自分らでみつけないといけなくなってるんです。そこが当時とは感覚的に違います。自分たちで道を作っていこうとちゃんと思える5人やからサイコをやっていられるんやろうなっていう気がする。
DAISHI:同じ世代で初期メンバーのままバンドがあるって、僕らぐらいじゃないですかね。

●確かに、復活してもメンバーが全員揃わないこともありますしね。
seek:20年間というのは、形が変わるのに十分な時間なんだと思うんですよ。
DAISHI:変わるほうが自然やね。
seek:ずっと共有できるメンバーは当たり前じゃないと思うし、サイコのメンバーはやべえ奴が多いとも思うし。

●逆に、これだけ時間が経つからこそ、一緒にいられるというのもあるんでしょうか。
seek:それもあると思います。今はこの5人じゃないとダメだという感覚はすごくありますね。

●メジャーデビューという点で考えると、20年前にいわゆるプロのミュージシャンになって、音楽を仕事として続けられたというのもすごいことですよね。
seek:本来のミュージシャンという意味で言うと、やっとプロとしてやってると言える感じもありますけどね。俺は逆に、20年続けさせてもらえたから、プロとしてやっと自分が音楽をつくれるようになったと思います。ベースにしてもそうで、続けてきたから勝てるみたいなところがあります。僕よりベースが上手い奴とか、僕よりええ曲を書ける奴は山ほどおったと思うから。でも僕は続けてこれたから、今こういう状態になれてるんです。

●DAISHIさんは、プロのヴォーカリストとして今も歌い続けていることはどんな風に思いますか。
DAISHI:音楽とかバンドを仕事として思ったことがないんですね。売れたいって考えるときはビジネス的な脳で考えてますけど、基本は一番楽しい遊びをやってる感覚でバンドをやってるから。

●好きなことをやり続けてきたと?
DAISHI:そうですね。若いときはバンドマン同士で、年収300万で東京ドームでライヴができるアーティストと、年収3000万やけどライヴハウスでしかライヴができひんアーティストとどっちがええ?っていう話をよくしてたんです。東京ドームができてお金少ないほうがいいっていう感覚だったんですけど、ビジネスマンからしたらバカじゃないですか(笑)。3000万もらえるんですよ、ライヴハウスだって楽しいじゃないですか。でも、東京ドームがいいんですよ。
seek:究極の二択やな。
DAISHI:貧乏してでも東京ドームでライヴをしたいと思うのがバンドマンじゃないんですか。その辺のネジがはずれてますよ。
seek:それはあの時代やからかな、今は逆やと思う。あの頃は、メジャーの契約が切れたら終わりやって言われてたから、年収300万で東京ドームでライヴのほうがいいっていう気持ちでやってた気がするな。

●どちらを選んだら20年続くかもわからないですよね。
seek:東京ドームの景色を見たことで変わることもありますもんね。俺らもそうですけど、「VISUAL JAPAN SUMMIT」で、ステージからあの景色を見られたかどうかで人生が変わることもあると思うんです。俺らにとっては、「SWEET TRANCE」がそうやったんです。先輩方のイベントに出させてもらって、満員の代々木第一体育館とか武道館に興奮して、初めて武道館でやってみたいと思ったんです。この景色をもう一回見たいと思えた。その執念みたいなのがその後も続いて、この20年になってるんですよね。

●20周年当日である10月2日のライヴに関しては、記念日的な内容になるんですか。
seek:“レジスタンス”というコンセプトの流れの中のことをやるつもりでいるんですけど、記念日なんでね。デビュー時代から見てくれてる方々に当時を思い出してもらえたり、ドキドキしてもらえるようなことは入れていきたいと思ってます。

●どんな気持ちで10月2日のライヴに臨みたいですか。
DAISHI:5月3日の結成記念日と10月2日のデビュー記念日は特別な気持ちになりますね。再結成して、年齢を重ねてからのほうが大切にするようになりました。やっぱり数を重ねるからかな。20年ってくると重みがあるので、それに相応しいライヴをしたいです。


Major debut 20th Anniversary Digital Single
2022.10.02 Digital Release
「もう一度、くちづけを」
作詞・作曲:seek 編曲: Psycho le Cému

Major debut 20th Anniversary Mini Album
2022.11.02 Release
「もう一度、くちづけを」  
POCS-1899 ¥2,000(税込価格)¥1,819(税抜価格) 

Major debut 20th Anniversary Live
RESISTANCE〜もう一度、くちづけを〜
10月02日 (日)新宿BLAZE
前売¥8,800
https://l-tike.com/st1/plc2022lrtour-hp

Psycho le Cému RESISTANCE~君がいる世界~
Day1 少年の右目 / Day2 少女の左目
11月2日(水)HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3 開場18:00/開演18:30
11月3日(木・祝)HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3 開場15:30/開演16:00
11月12日(土)柏PALOOZA 開場17:00/開演17:30
11月13日(日)柏PALOOZA 開場15:30/開演16:00
11月22日(火)新横浜NEW SIDE BEACH!! 開場18:00/開演18:30
11月23日(水・祝)新横浜NEW SIDE BEACH!! 開場15:30/開演16:00
11月25日(金)浜松窓枠 開場18:00/開演18:30
11月26日(土)浜松窓枠 開場15:30/開演16:00
12月10日(土)OSAKA MUSE  開場17:00/開演17:30
12月11日(日)OSAKA MUSE  開場15:30/開演16:00
12月17日(土)名古屋ELL  開場17:00/開演17:30
12月18日(日)名古屋ELL  開場16:30/開演17:00
12月23日(金)Veats Shibuya  開場18:00/開演18:30
12月24日(土)Veats Shibuya  開場15:30/16:00
前売 ¥8,800
https://l-tike.com/plc/
一般発売:10月16日 10:00〜

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。