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ハイダンシークドロシー インタビュー

期待の大型新人バンドの登場だ。その名は、ハイダンシークドロシー。
ex.犬神サアカス團の情次2号(G.)とジン(B.)、
ex.Kraの靖乃(Dr.)という意表をつく組み合わせの楽器陣に、
音楽活動以外に女装モデルとしても活躍する谷琢磨がヴォーカルを務める。9月20日に初ライヴ、そしてアルバム発売とスタートダッシュを切る彼ら。

まずはこのインタビューと、配信されている2曲で、
その姿に触れてみてほしい。
(この記事は無料で公開します。サポートもご検討くださいませ)


■結成のきっかけは、今年の2月にこの4人でセッションイベントに出たことになるんですか。
谷琢磨(以下、谷):女装したヴォーカルの人を集めてやる企画があり、谷が呼ばれたんです。そこで、バックをさがしますんで、せっかくだったら生バンドでやりませんかって、こちら(主催者=所属事務所=アットワークス)から言われたんです。

靖乃:俺は、YURAサマから、興味があったらライヴ出ませんかって言われた。

ジン:僕に話が来たときは、靖乃君は決まってた。

情次2号(以下、情次):僕のところには、谷さんが歌うセッションバンドで、ドラムは靖乃さんでジン兄さんを誘おうと思ってますっていう話だった。

■皆さん、主催者からそれぞれ声がかかったんですね。そのときは何の曲をやったんですか。
谷:カヴァー中心ですね。

情次:(中森)明菜ちゃんとか(椎名)林檎ちゃんとか。

靖乃:あと、「愛の讃歌」。

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■谷さんを軸に決めたということですかね。
情次:楽器はどうにでもなるので、歌いやすいみたいなところを考えて選んだかな。

靖乃:谷君が歌って映える選曲がいいんじゃないかなということですよね。

■そこから実際にバンドとして活動するまでにはどんな流れが?
谷:やってみて感触がよかったのとお客さんの反応ですよね。すごくお客さんが喜んでくれて、反応がとびきりよくて、またやってくれっていう声がすごくきたんですよね。

ジン:評判はとびきりよかったです。すこぶるよかった。

■そこでバンドにしようと?
情次:そこは仲人がいたんです。リハをしたときにもう、一回だけだともったいないなっていう話はしてたんです。企画した人もその場にいて。ライヴ当日のサウンドチェックで、YURAサマが、“これ、もうバンドにしません?”って言ってきたんですよね。ただこの歳になると、いや、“この歳になると”って書かれたくないな(笑)、大人になるとさ、情熱だけでは進めないというか。責任も伴ってくるし、コケてもしょうがないし。

なのでYURAサマに、じゃあそっち主導で進めてって言ったんですよ。お膳立てしてくれれば、去年バンドをやめた3人は乗っかっていけると思うし、谷君の気持ち次第じゃないかなと。そしたら、翌週ぐらいに打ち合わせみたいな場が持たれたんですよね。飲み屋で暴力的な(!)刺身を食べながら(笑)。

ジン:美味しかった(笑)。

靖乃:誰かひとりがイニシアチブを持ってバンドやろうぜって引っ張っていくのは荷が重い感じはあったかな。でもね、バンドが動き出して音を出してみると、なかなかこのメンバーに恵まれることはないなって強く感じましたよね。これは絶対手放したくないと思った。特に俺はライヴにすごく枯渇してたから、このチャンスを逃してはって思ってたけど、それを俺の一存で言っていいのかなと考えてしまうところもあったりしたし。

情次:大人ってそう。一回やってみようぜですまないというか。この年になって付き合えば、結婚を見据えるわけじゃないですか、そういう感じですよ。ここでバンドを組むとなったら、もう一生ものでしょ。若いときに組んだって一生ものなんだけど、それを強く思うわけじゃないですか。特に3人とも長く同じバンドをやってたから。


大人が始める新バンドは不利だから、
圧倒的であることが必要

情次

■実際にバンドをやることになって、じゃあどういう音楽性にしようというのは話し合ったりしたんですか。
情次:セッションのときにやったような曲があればいいんじゃないかっていう話ではあったかな。

靖乃:一個軸ができたら、そこからバリエーションをつければいいのかなっていうざっくりした話でしたね。それで、各々曲を作ってみる?っていう話になったけど、結果的に情次さんだけが作ってきたんです。

一同:(笑)

情次:(笑)誰も書いてこない! メインでは俺が書きますよって言ってたけど、せっかくの機会だから二人も書いてくればいいし、谷君も1、2曲でもいいから書いてきてねって言ったのに、誰も書いてこないから。

谷:気づいたら曲がそろっちゃってて、あ…!って。

ジン:どんな傾向の曲がしっくりくるのかもいまいちわかってなかったから、リハーサルを重ねていって、いい路線が見つかったらそこを増やしていこうという青写真はできてたんだよね。

情次:それで僕が5曲ぐらい、それぞれ違うテイストで、ワンコーラスを作ってきたんですけど、そこでリハーサルに入れなくなったんです。

靖乃:緊急事態宣言が出てね。ただそこで、メインとして軸に据えていく方向だったらこれだと思った曲が、結果的には「メーズ」になるんです。

■まず配信された「メーズ」は、最初の5曲にあったんですね。
情次:「メーズ」は一番最初に書いた曲ですね。まずはこんな感じかなって。クラシカルであり、ちょっと怪しく、ディズニー感のあるような感じ。谷君はファルセットですごく高い音でずっと歌ってて、どんどん転調していってみたいなところからまず作りました。

■そのときは、ほかにどんな曲を作ったんですか。
情次:谷君の歌唱法から、クラシックみたいなところは意識したほうがいいのかなと思ってたので、3拍子の曲とか。とにかくメロディアスなほうがいいだろうって思ってメロディのたったもの、どっちかというとちょっと古くさい感じというか。現代になるとどんどんメロディはなくなっていくわけでしょ、ラップの文化もあるぐらいですから。それよりはメロディを重視した音楽ですよね、クラシック、ジャズ、カントリー、シャンソン、その辺のところにベースがあるものを、ロックに解釈した感じかな。

すごくざっくりいうと、どっちかというとアメリカンなほうの音楽。谷君は、ヨーロッパ、クラシック、シャンソンとかみたいな感じは今までいっぱいやってると思うし。だから、アメリカの古いほうの音楽を意識して作ると新しくなるかなって思いましたかね。

■「メーズ」をハイダンシークドロシーの最初の曲として世に出したのはどういうところから?
靖乃:谷琢磨のポテンシャルがすごく詰め込まれてるし、一曲目としてわかりやすだろうねっていう話はしましたね。

谷:「メーズ」は、歌のアプローチを何パターンか見せられる曲なので、いろんな歌い方する人なんですという自己紹介にはなるかなと。そういう意味でこの曲が最初に出てよかったかなと思ってます。「ページェント」だと、歌い方はもう少し狭いので、歌い方に固定観念ができてしまうから。

情次:狭いと言っても広いんだけどね。

ジン:狭い(当社比)、っていうことだよね。

谷:「ページェント」は3種類ぐらいの声しか使ってないから。

ジン:3種類でも多いからね。

靖乃:「メーズ」を聴いてもらうことで、みんなにわかってもらえたらいいんじゃないかと思います。


■次に配信した「ページェント」は、歌謡的なメロディが特徴的ですよね。
谷:さっき情次さんが言ってた、少し古いっていうところが出てますよね。ちょっと懐かしさを感じるし、我々世代が落ち着くような曲ですね。

靖乃:落ち着く部分と懐かしさ、それからくる哀愁みたいなものを帯びてるので、日本人には刺さりやすいのかなと思いますね。4人が今まで聴いてきた音楽がそこにあるんじゃないかと思います。

■歌を聴かせることを意識されてるとは思うんですけど、シンプルとかキャッチーとはまた全然違いますよね。
情次:大人になって、改めてバンドを組みますなんて言ったりなんかしてるけど、大人がやりますって本当はすごく不利なことじゃないですか。若い可愛いカッコいい人たちがキラキラして新しいバンドを始めたほうが、絶対に注目度も高いし。

だから、このバンドは圧倒的じゃないとダメなんです。そう考えたときに、歌が圧倒的なのはわかってるので、楽器隊がどう圧倒的であるかが重要だと思ってるんですね。それこそベースなんかはかなり難しく作ったし。

ジン:デモに入ってるベースを聴いたら、どの曲も難しいことをやれっていうことだなって思いましたね。デモで入ってるギターがシャラリンぐらいだけだし。これはコードの役割とかはベースがやれっていうことなんだなと。

情次:ギターは最悪ギターソロで見せられちゃうから。でも、ベースにソロを毎回入れるわけにもいかないし。それに最近の楽曲はベースが難しいんですよ。ポップスとかでもね。

靖乃:アイドルの曲とかでもベースがすごいことになってますよね。

ジン:それに、歌を立たせることと楽器が目立つことは両立できないことではなくて。楽器がどんなに派手なことをやってても、ちゃんと歌を支えるんだっていう気持ちというか、そういうつもりでやれば矛盾しないと思います。

情次:帯域的な話をしても、ギターでガチャガチャやるより、ベースが下でいろいろ動いてくれてたほうが歌への干渉は少ないみたいなところですかね。

谷:ヴォーカル側としてもひとつ気づきがあったのは、もとから自分が組んでるバンドはバイオリンもいる6人編成なんですけど、このバンドは4人なので、歌が何でもできるんです。ぶつかる心配がなくて。これまでは、音域だけでなく、圧もいろいろ調整して歌ってたんですけど、このバンドだとリミットが不要なんですね。歌がいくらでもできるので、歌とバンドの相乗効果が出てますね。その点に関してはすごく上手くいっている気がします。

はじめ4人でやるときは谷が、アコーディオンを入れてみたら、とか提案したんですよ。そう言ってたのは、4人で仕上がっていく音の像が見えてなかったからなんです。今は本当に明確に歌えるし、だから「メーズ」が生まれたんですね。もともとは3オクターブも使って歌う予定ではなかったんです。自分がほかにやってるバンドだったら、歌が邪魔、ふざけんなってなっちゃうから(笑)。

情次:僕の中でもあんな歌メロがつくとは思ってないけど、すごいことにしてくれたな、有難いなって思ってます。

谷:あそこまでやっても谷が突出して、浮いて目立ったりしないぐらい、みんなの演奏が技術もあって素晴らしいので、聴き応えのあるサウンドをどんどん作っていける気がします。

情次:ずっとしゃべるな、俺たち。(インタビュアーに)質問が少ないなって思ってません?

一同:(笑)

■いえいえ、話してくださって有り難いですよ(笑)。

ジン


このバンドがダメだったらあきらめられる

■「メーズ」も「ページェント」も曲に世界観があるし、皆さんのヴィジュアルも統一感があるし、いわゆるヴィジュアル系っぽい印象ですけど、その辺りはそれぞれ異なるバンドをやってこられたというところではどんな風に考えていますか。
谷:そこはどうだったのかな。

情次:仲人の考えかな。谷琢磨というキャラクターを、ヴィジュアル系の世界に連れていったらどうなるかを見たいみたいなプロジェクトであると僕は認識してる。だから、ヴィジュアル系であることはすごく自然だったかな。僕とジン兄がヴィジュアル系だったのかは非常にグレーなんですけど(苦笑)、でも活動してきたフィールドのメインはヴィジュアル系だったし、不自然なことではないよね。でも、やってみたら、以前はやっぱり違ったんだなってすごく感じる。

靖乃:アー写を撮ってるときとか面白かったですよ。どうすればいいの?ってなってて。

情次:靖乃君が頼りになるから。

谷:ね~、靖乃君がね。

ジン:個人ショット撮るときは、まず靖乃君を撮ってもらって、それをよ~く見て。撮り終わった靖乃君はカメラマンの横に来て指示を出すんです。

■谷さんは、ヴィジュアル系のバンドをすることに対してはどういう感じなんですか。
谷:毎日勉強ですね。でも、自分らしさである程度やっていこうという気持ちもあって。もちろんトライはするんですけど、心機一転、別人ですっていうよりは、自分の持ったものに少しプラスαしていければなっていう感覚ではあります。そもそも格好が男になるので、そこで新しさは出せるかなって。

靖乃:俺らが、“じゃあここ、一発あおりで”って言ってるところを、谷君がポカーンってなってたりするよね。

谷:そう、専門用語的なのはわからない。

靖乃:それはそれで新鮮で面白いですよね。お立ち台の使い方とか。

谷:今日、勉強しました。

情次:お立ち台にのぼったらそれっぽく見えるのではないかという実験をさっきやってました。意外と雰囲気が出ますね~って僕らの中ではなってる。

谷:使うかどうかはこれから考えます。

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■どんなバンドになるか楽しみです。今、バンドが始まったところで、やってやるぞ、的な意気込みみたいなのはどうですか。
靖乃:武道館! みたいな?

■わかりやすく言うとそういう感じってあります?
靖乃:俺は完全にそこにありますね。さっき話したけど、このメンバーの組み合わせを与えてもらえることはそうそうないんですよ。これは大事にしたいかな。やるからにはちゃんとしたいし、デカいところでライヴできたらいいとも当然思うし。

情次:期待はもちろんしてるし、でも冷静に見れてるところも見れてるし、さっき言ったようにすごく有利な始まりではないと思ってるんです。それは世の中の状況を含めてですよね。大人であることもそう。期待感はすごくあるから、それこそ武道館って言っていいとは思ってるけど、まだちょっとわからない。でも、このバンドをやってみてダメだったら、もうあきらめられるなとは思いますね。もうや~めたって思える。(バンドは)向いてなかったわって思える。

ジン:大きいところを目指すとかはありますけど、今までのセオリーが使えなくなってるんですよ。対バンをしてお客さんを増やして、みたいな。だから、どうやったら大きな活動ができるとか、そういうところに対する自信がいっさいないんですよ。

谷:我々に限らずですけどね。

ジン:今後、10年、20年、人を集めてライヴができないという可能性もあると思うし、それで商業的に立ちいかないみたいなこともあると思うんですけど、だからといって4人で作品を作るのが楽しいことは間違いないので、ライヴをやればやるほど赤字だとしてもやりたいなって。そういうバンドに巡り合えたとは思いますね。

谷:言えば、谷は飛び道具的な立ち位置なので、そういった部分のプレッシャーはあります。一緒にバンドをやっていただけるというのはすごく有り難いし、うれしいし、本当によかったんですか、谷でっていう感じです。

■9月20日には初ワンマンですね。
情次:今のところは、お客さんを入れつつ、配信もやる方向で考えてます。観客を入れると換気タイムも必要になるんで、その間をどうつなぐのかっていうのもあるし。今いろいろ考えてるところなんですけど、幕間にトランプマンを呼びたいよね(笑)。

一同:(爆笑)

情次:ほら、あの人しゃべらないから…。

靖乃:ポジティブな人ばっかりが集まってるので、メンバーも事務所も、この状況で何かできないか考えられる人ばっかりなんで、現状はかなり幸せですね。新しいことが生み出せるんじゃないかと思ってます。

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。