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パーソナルインタビュー2本立て   マコト&KEN(怪人二十面奏)

シングル『癈人録/しにいたるやまひ』をリリースした怪人二十面奏。
2月には東京と大阪でワンマンライヴ『二癈人』を敢行、
さらに3月20日には渋谷wwwで『廿念恩會』と題したライヴが控えている。
長い間バンド活動を共にしてきたマコトとKENそれぞれに、
制作にかける想いを訊いた。

パーソナルインタビュー マコト編

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●怪人二十面奏の曲は独特なタイトルの曲が多いですが、『癈人録/しにいたるやまひ』はどんな風にタイトルを考えたんですか。
「もともとは、2月に東京と大阪でワンマンをやることになったときに『二癈人』というタイトルを先に決めたんですよ。だから、『二癈人』を自分なりに解釈して「癈人録」に落とし込んだのかなと思います。『二癈人』というのは江戸川乱歩の短編小説の作品名なんですけど、それを曲のタイトルにするのはちょっと違うから、別のタイトルをつけたんです」

●『二癈人』をそのままを曲のタイトルにするのはなぜ違うんですか。
「ワンマンのタイトルは、その場限りのものというか、ライヴが終わったらなくなっていくものだと思ってるから、江戸川乱歩とかから引用したりしやすいんですね。でも、楽曲のタイトルは残るものやから、「二癈人」とつけるのはどうかなと思うんです。「しにいたるやまひ」も漢字で表記してしまうとかぶるから、平仮名にしたんです。みんながなじみのあるものを、なじみのない感じ出したいんですね」

●たとえば、これからタイトルを考えようとか歌詞を書こうとするときに、ちょっと本を取り出してペラペラめくったりみたいなことはあるんですか。
「それはないですね。乱歩の何をテーマにしようかなって思ったときに、江戸川乱歩の本を手に取るとかはあります。でも、僕は過去に読んできた乱歩の作品は全部忘れてるんですよ。頭の中にないんです。読んでたのは学校の図書館にあったポプラ社の恐い絵が描いてあった子ども向けの本。タイトルぐらいは残ってるから、どんな話やったかなって本を見てみたりはします。そういう感じなんで、話がそのまま歌詞になってないんです」

●タイトルは使うけど、ストーリーを使うわけじゃないんですね。
「そうそう。歌詞を引用するのにもう一回読んでみたら引っ張られちゃうから、そういうこともしないし。大筋みたいなものを、今の自分の解釈にするほうがオリジナルなものになると思うんですよね。読んでガチガチに影響されるのがイヤなんかな。自分の世界の中で、自分で作ったものを聴いてくれる人に解釈してもらうのが一番いいですね」

●今回の作品で、廃人というものをモチーフにしたのは、やっぱりどこか共感できたりするからですか。
「共感できるし、そういう世界が好きだし。これまでも廃人をテーマにした曲は書いてきましたね。暗いものが好きやし、アングラが好きやし、廃人はモチーフとして書きやすいと思います」

●共感はしないけど好き、っていうものもあるけど、共感もできると。
「しっくりくるんです。怪人二十面奏になってからはあまり明るい歌詞は書けないですね。どこか影がある歌詞しか書いてない。暗い楽曲ばっかりで暗い物語ばっかりだけど、その中でいろんな歌詞やいろんな世界を如何に書けるかをテーマにしたいなと思ってます。あえて明るい曲を書こうとは思わないし、突き詰めたいですね」

●「癈人録」は、歌うのが難しかったそうですが。 
「怪人二十面奏の曲をほかの人が歌ったりすると難しいと思うだろうと今でも感じてたけど、今回の2曲は特に思うかな。ブレスがないし、キーが高いし」

●マコトさんにとっては、難しいほうがチャレンジする気になるわけですか。
「自分にしか歌えない歌だなと思う。上手い下手とかじゃなくて、人の歌を歌うと違和感があるじゃないですか。それがあればあるほど、これは僕にしか歌えない歌なんだと思うし、聴いてくれる人もそう思ってくれるからいいんですね。だからどんどん難しくなってきてて、作品を出すたびにこれが一番難しいんじゃないかなって毎回思えてるんですよ」

●歌の難しさは更新していくけれど、歌詞の書き方やテーマはそうではないと。
「そうですね。今回も新しいことをやったわけでもないし、その辺は意識してないかな。無理して書いてもしゃあないし、今書けること、書きたいことを、書けるだけ書こうと思ってます。よく歌詞を書くときに、“降りてきた”とか言うじゃないですか。そういうのは、僕はないんです。今日、新曲の歌詞を2曲書きますって机に向かって、無理矢理出してる感じなんです。実体験を書くこともほとんどないですし。体験を歌詞に出来る人はすごいなって思う。いくらでも増えるから、一生書けるやんって。僕の場合は、体験がテーマの足掛かりになることはあるかもしれないけど、物語を作るみたいな感じで書いてますね」

●そうなると、既にたくさんの曲を書いてるだけに、新たな歌詞を書くとなると大変そうですね。
「曲とかメロディがあっての作詞じゃないですか。だから、言葉の響きとか歌いやすさとか、母音の気持ちいいところとか、そういうのを組み立てていく作業かなと思ってるんです。小説とはまた違う。だから、歌詞では書きたいことの十分の一ぐらいしか書けてないんですよ。どっちかというとゲームとかパズルみたいなノリに近いかも。それが出来上がってみると、意味がつながるのがみつかったりするとめちゃめちゃ気持ちいいし、もしかして俺が言いたかったことやって後から発見することもあるし。言葉でゲームしてるみたいな感じなのかなって思う」

●そういう意味でこの2曲の歌詞はいかがですか。
「普通じゃないですか。会心の作品なんて今まで一個もない」

●なるほど、そういうものなんですね。
「そういうもんですよ。歌いたいことが歌えた、みたいなことはないです。でもそれをライヴで育てていって、出来上がっていくのかな、とも思う。本当に自分が伝えたいことを書くんやったらメロディに乗せないし、小説家とかコラムニストとか、そういうのになるかも。でも、メロディに乗せないと実際には書けないんですよ。僕、そんな文章を書く人間じゃないから」

●この2曲もこれから歌っていくうちに変わっていくわけですね。
「変わると思います。変えていこうと思ってます」

●『BATTLE FEVER TOUR』でも演奏するんですか。
「やらなあかんかなと思ってるんですけどね」

●あれ? やります! みたいな感じではないんですね。
「タイミング的にはやると思うんですけど、ライヴの時間が限られてくる中で、その日はもっとこれが伝えたいとかそういうことがあるから。この2曲がセットリストにある状態でほかの曲を組み込んでいくのはあんまりしたくないんですよね。でも、3月中はやるんじゃないかなと思います」

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パーソナルインタビュー KEN編

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●『癈人録/しにいたるやまひ』は、コロナ禍という特殊な状況下での制作になったわけですが、何か影響を受けたことはありましたか。
「それは特にないですね。発表する時期が決まってないと曲を作ったりしないんで、コロナだから曲作りをしたいとも思わなかったし、今のこの感情を曲にしようとかそういうことはなかったです。逆にライヴする機会が失われていたので、曲を作る気持ちにはならなかったですね。やっぱり曲を作ったりするのはライヴをやるためっていう意識があるから」

●これまでの人生で一番と言ってもいいほどの特殊な体験であっても関係ないんですね。
「歌詞みたいに言葉を使うんだったら、何か影響があったかもしれないですね。でも、曲に対してという風には左右されないです」

●「癈人録」はこれまでで一番速い曲だそうですが、曲作りの時点ではどういうテンポを考えていたんですか。
「最初、もっと速かったんです」

●え?
「でも、これはちょっとおかしいと思って。それをいろいろ考えていって、このテンポになったんです。だから、最初からテンポ感は速いイメージでしたね。「癈人録」も「しにいたるやまひ」も、かなり前に作ったんですけど、そのときは1回目のサビ終わり、ワンコーラスで止めてたんです。それで今回、この2曲を出したいと思って、完成形にしたんですね。結構時間がかかりました」

●ワンコーラスということは、Aメロ、Bメロ、サビとできていたということですよね。
「そうです。曲全体の中で伏線を張るみたいに、Aメロとか間奏にそれぞれ意味を持たせたいと思うんです。ここがあるから次はこうなるとか、そういうのを考えて最終形にするんで結構時間がかかりました。最終形にするまでに、「しにいたるやまひ」はシャッフルにしたりもしたし。曲の長さも気にしますね。あんまり長すぎてもイヤだし、かといって1分半で終わりたくもないし。そういうことを考えるといろいろ変わってきて最終形になるんです。その中でも一番時間がかかるのは、どのテンポにして、どういうアレンジにするかが定まるイントロかもしれないですね。曲を印象づけるというか、骨格を作るのに気を遣うんです」

●曲がどう始まるかが大事?
「そのリズムパターンが、ライヴのときのお客さんの反応にダイレクトに関わってくるから。コードを作って、歌メロを作って、作曲が終わり、じゃないんです。こういうテンポでこういうアレンジだから、逆にもう一回こういうパターンでダメ押ししようとか、そういうことも考えるし、既存の曲とのバランスを考えたりもしますよね」

●マコトさんから出た『二癈人』というテーマと2曲は、KENさんから見てもマッチしてるなという印象があったんですか。
「そうです、そうです。作曲したときとイメージが重なる感じはすごく感じました。感覚的なものですけど。「癈人録」というタイトルにはいろんな捉え方があると思うんですけど、曲を作ったときに思ったトゲトゲした感じにしたいということとかアングラな感じというか、そういうイメージがすごく合ってました」

●トゲトゲした感じの曲にしたいというのはどういうところから生まれてきたんでしょう?
「もともとそういうのが好きだし、怪人二十面奏で年数を重ねていくうちに、そういう方向性がいいなっていう感じもありますね。そういう曲は、自分もギターを弾いてて楽しいんです。しっかり作り込んで、落ち着いた感じの曲ばっかりやるバンドも好きなんですけど、怪人二十面奏はそういうスタイルのバンドじゃないじゃないですか。そうなると、勢いがあるほうがステージ映えすると思うんです」

●KENさんとしては、怪人二十面奏は世界観があって作り込んでるバンドだという自意識ではないんですか。
「いや、あります。でも、理想としてはもっと極端に作り込みたいんです。MCがないとか、そういうバンドも好きだし。ただ、今の自分たちのステージの方向性はこれがベストかなと思って活動してます。だから、もっとガーッていくようなステージがしたいと思ってるんです」

●「しにいたるやまひ」も、マコトさんが出したタイトルに合う曲ということで出したんですか。
「そうですね。既に曲は作ってたので、このタイトルと合うし、「癈人録」とセットにするのにいいと思ったんです。同じテーマに向かっていったほうが気持ちいいなと思ったし。それに、乗せる歌詞とか言葉によって曲の印象も雰囲気も捉え方が変わってくるんじゃないかってマコトさんがよく言うんですね。僕もそう思うから、「しいいたるやまひ」というタイトルと組み合わせたことで、さらに今までの作品とのイメージの差が出せたかなと思います」

●イベントツアーでは、この2曲は演奏したいですか。マコトさんは、やると決めている風でもなかったんですけど。
「僕はやりたいですね。新しい曲ができたらどんどんやりたくなっちゃうんです。自分も楽しいですし。限られたライヴの時間の中でセットリストを組むのは難しいと思うんですけどね。セットリストは、ステージを作ってるマコト君が一番やりやすいような流れにしてもらうのがいいと思っています」

●KENさんとしては、ライヴでやるイメージは出来上がっていますか。
「それは出来上がってますね。実際には自分の想像どおりじゃなかったり、思ってもなかったノリになったりするのがいいなと思ったりもするし。でも、自分としてはこういう感じのライヴがしたいというのはあります」

●4月にはお誕生日ライヴもあります。特に誕生日を意識することはないとのことでしたけど、お誕生日ケーキとかもなしですか。
「それはあるんですけど」

●あ、そうなんですね!
「それは定番です。ケーキをいただいたりするんで、ステージに出したりするんですよ。でも、誕生日らしいのはそれだけですね」

●ライヴがあるないにかかわらず、誕生日を意識するようなことはありますか。
「年々、あるようでないような。でも、自分に言い聞かせるじゃないですけど、だらだら過ごしてたらダメだなとは思いますね。誕生日は特にそういう風に考えやすいじゃないですか、それだけですね」

●誕生日を自分でお祝いしたりもせず。
「そういうのはないです。最近はライヴをやらせてもらってるんで、おめでとうも言ってもらってるし、それで十分かなと思ってます」

●これからの活動に向けてやりたいことは何かありますか。
「ライヴは止めることなくやらせてもらってたんですけど、新作を絡めたりはあまりできなかったんで、そういうことも含め、今年一年できる限りたくさん活動ができたらと思ってます」

●作品ももっと作りたい?
「それもありますけど、作品を作ることとその曲をライヴでやることはセットなんですよね。少しでもライヴを観てもらいたいし、そうなってくると新しい曲を聴いてもらいたい意識も必然的に出て来るんで。だから今年は、作品を作るのもライヴも頑張らなきゃって思ってます」


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