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Eins:Vier インタビュー

一昨年、セルフカヴァーアルバムを発売し、全国ツアーを行ったEins:Vier。結成30周年を迎える今年、再び夢の続きが描かれようとしたとき、
新型コロナウイルス感染拡大により、スケジュールは大きく翻弄された。
それでも、7月、8月の新曲の先行配信、
新曲を収録したミニアルバム発売、そして来年5月のライヴと、
今できることを続けながら未来を思い描くことを忘れてはいない。
今はただ素直に、2020年にEins:Vierの新曲が聴ける喜びを堪能したい。
(この記事は無料で公開します。サポートをご検討いただければ幸いです)

■30周年にあたって活動をしようと思ったのはいつ頃なんですか。
Hirofumi:前回の再結成が終わったときに、周りから“30周年もありますね”っていう話を聞いてたんです。でもそのときは、みんなやり切ったから先のことは全然考えられなくて、“そうですね”ってだけで終わったんです。去年ぐらいからまたその話が出て来て、次に動くなら単純に30周年を祝うだけじゃなくて、これをやったるぞっていうのがないといまいち気持ちが盛り上がらないなぁと思ったんで、新曲をやってみようかという話が出たんですね。それと、Yoshitsuguのバースデーに集まってライヴをやったのが大きかったかな。それから、ちょっと本腰を入れてやろうかという気持ちがバンド的に盛り上がったように記憶してます。

■また活動することと新曲は作ることがセットだったんですか。
Luna:セルフカヴァーアルバムを出したから、次にアイテムを出すなら新曲しかないやろうと思ったけど、最初は新曲を作ろうなんてモチベーションはなかったですね。とりあえず新曲作りにチャレンジしてみて、納得のいく作品ができそうな予感がしたら進めましょっていうことにしたんです。もし、何だかなぁで終わったら全部ナシでいいやろ、ぐらいの気持ち。

■それはライヴもしないということ?
Luna:そうそう。そういう感じで、とりあえず新曲作りにチャレンジをしてみて、かなり重い腰を上げて(苦笑)。初めてスタジオに入ったのが、去年の9月ぐらい。手探り状態ですよね。かれこれ二十年一緒にやってないし、それぞれ曲作りのやり方も違うじゃないですか。上手くいくんだろうかと思ってたし、一回目のリハでは、Yoshitsuguも俺と一緒やったと思うんやけど、あんまりピンとこないような気がしてて。

でも、Hiroちゃんだけ、“メチャメチャいいやん、絶対いい”って言って、俺はそうかなぁと思ってて。ヒロちゃんが“絶対すごくいいもんが出来てる”って言うから、もう一回スタジオに入ることにしたら、二回目にだいぶ形が見えてきて、これは何とかなるんじゃないかなと思ったんです。

Hirofumi:すごく初心に返った感じがありましたね。Eins:Vierの最初のやり始めみたいな作り方をしてみようとしたんです。今のLunaの話を聞いて思い起こされるのが、Eins:Vierを組んで曲を作り始めたときも、こうじゃない、いや違うとか言って、結構時間がかかったんよね。でも、俺が見えましたっていう曲をとにかく作り込んでいってたから。そういう部分も初心に返った部分があったのかな。

■30周年でやるEins:Vierというのはまるで見えてなかったんですね。
Luna:全然なかったですね。本当にできんのかなって思ってた。でもやっぱりやり出すとね、何とかなるなって。

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■Yoshitsuguさんはいかがでしたか。
Yoshitsugu:久々に三人で曲を作るとなって、どういったものになるか全然想像がつかなかったですね。どうしたもんかなと思ってたんですけど。形になってよかったです。

■最終的に5曲もできたというのは、1曲作ったら作れたということなんですか。
Luna:最初に3曲作って、だいたいの形ができてから、2曲追加されました。最初の3曲はスタジオでああだこうだ作ったんですけど、いろんな作り方を試してみようと思って、2曲はYoshitsuguの家に行って作ったりしたんです。そういうやり方で何か出てきたら面白いなって。そしたら2曲追加されたということですね。それをHiroちゃんに聞かせたら、それもめっちゃええやんって(笑)。

Hirofumi:聴いたときに新鮮な感じというか、歌って疲れる感じがなくて楽しい感じが初めにきたし。歌っててもう一回歌いたいと思う曲は俺の中ではいい曲やから、そういう単純な判断で、いい曲やって思ったんです。

■Hiroさんは新曲作りとか30周年の活動とかにも前向きだったみたいですね。
Hirofumi:一番初めはチャレンジすることは何か意味があると思ったんですよ。Eins:Vierの30周年で、新曲をやれたらすごく面白いなっていうイメージまではたどりついたわけじゃないですか。出来なさそうやからやめるというよりは、チャレンジしてみようって、ダメでもいいというか。チャレンジしてみることが今後の自分らにも生きてくるというのが、自分の中にすごくあった。

だから、何しかやってみようよって。やってみてほんまにつまらんかったら無理やったねっていう結果が生まれるわけやから。やってみないことには何にもわかれへん。そう思ってやってみたら、音楽を続けてきただけあって、スタジオで何か産もうとするエネルギーがやっぱり出て来た感じがあったし。だから、仕上げたほうがいいって。それで進んでったんです。

感染拡大でスケジュールが翻弄されて

■そこで新曲ができたから、30周年の活動が決まったんですね。
Luna:やる方向で進めましょってなってから、いろいろ考えていったんです。再結成してからワンマンしかやってなかったからイベントがやりたかったんですよ。それで、「KATHARSIS」3デイズをまずやって。流れちゃったけど。それから何かアイテムを出して、秋にワンマンをやることを決めたんです。そしたら、延期や、キャンセルやって…

●今年の春から秋のスケジュールが決まったものの、新型コロナウイルスの感染が広がって、一度延期したイベントも中止になってしまったと。
Luna:4月1、2、3日の3デイズに予定してたんですけど、3月下旬ぐらいまではやるつもり、ぐらいだったんですよね。

Hirofumi:実際、ライヴはやってたもんね。

■やるかやらないかの判断が、それぞれに委ねられてた時期ですもんね。
Luna:それが一気に無理になって、7月ぐらいだったら大丈夫やろうって延期にしたら、全然大丈夫じゃなくて。それで「KATHARSIS」は中止になりました。やりたかったんですけどね。

■通常のバンド活動とは違って、今年やることに意味がある活動だけに難しいですよね。
Luna:ミニアルバムの発売時期はどんどん後ろにずれるし、レコーディングも密と言えば密やから、全員では参加できなかったりするし。残念なことは山ほどありますけど、俺らだけじゃないし、仕方がない。あとはやるかやめるかしかない。そうなると、やめる選択肢はないですよ。キャンセル料もかかるわけやしね。

Hirofumi:何とかギリギリ、緊急事態宣言が出るまでに歌のレコーディングができたのはよかった。すべての計画が変更を余儀なくされる状況下で、それでもやれるときがきたらやろうぜ、来年でもいいやんという気持ちになったのは、新曲が録れてたからやと思うんです。これが録れてなかったら、もう30周年のお祭りは中止かなという気分になってたと思うんです。来年のことも今はまだわからんような状態やけど、それでも絶対にやるんやって思えるのは、新曲が録れてるからやと思う。

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■そこでライヴについては、新宿LOFTで配信ライヴがありましたけど、配信という形は実際やってみていかがでしたか。

Luna:配信するのはいいけど、無観客というのがね。ライヴしてる気にならないですよね。終わってみたら、ライヴした気が全然しなくて。ソーシャルディスタンスで30人でもいたらだいぶ違うやろうけど、本当に誰もいないから。さすがに要領がよくわからんかったかな。

Yoshitsugu:やっぱりライヴとは違うもんですよね。撮影してる感じでした。終わってからの疲れ方も全然違うし。何とか楽しめてはできましたけど。

Hirofumi:その瞬間のものを聴かせる、見せるという意味では、ライヴという文字通りのことなのかもしれんけど、やっぱ自分の欲するライヴの形ではないですね。あの一本は、今LOFTはずっと配信でライヴハウスを支えようと頑張ってるというのと、全ての計画がとん挫しちゃってライヴを見せる機会がないのとが合わさったからこそ意欲が沸いたって感じです。

先のことは考えず、今を生きる

■7月、8月と新曲「three stories」と「100年の幻想」の先行配信があって、ミニアルバムはその後に発売ですね。
Luna:秋の深い頃に。

■あ、深いんですね。
Hirofumi:深いです。秋じゃないんちゃうかっていう噂もあるぐらい(笑)。MVも撮らないといけないんでね。晩秋です(笑)。

■これからMVを5曲撮るんですね。
Hirofumi:MV集は予定になかったことで、後で付け加えたものなんです。今年、ライヴがなくなったじゃないですか。音源を出すのは時期はズレたけど予定どおりじゃないですか。時間ができたんで、予定どおりじゃないものを盛り込んでいきたいと思ったんですね。それで全曲MVを作って含めようということになりました。

これはコロナがあったからこその出来事ではあるんで、無観客ライヴもそうやけど、こういうことがなければ発想しなかった動きとかもあるから、そういうもので自分たちの気持ちも含め、待ってくれている人たちも気持ちを切り替えて現実と向き合ってくれたらええかなって思います。悪いことばっかりじゃないよって。

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■新曲ができてみて思うのはどういったことですか。予想通りなのか、新鮮なのか。
Hirofumi:やっぱり俺らやったらこうなるんやって思った。Eins:Vierみたいになるんやって。それでも、今までに全く同じような曲はないし。だから新鮮味もあるし、全然タイプは違うけど、これはEins:Vierやでっていう感じやから面白いな。

Yoshitsugu:作ってみて思ったのは、この3人で音を出すと、何かこうなんねんなっていうのはすごく再確認したかな。「three stories」はEins:Vierらしさを俺は意識したかな。3人で曲を作るときに、どういったものを作りたいかが見えてなかったし、みんなやりたいことが違うから。どこかで融合できるところを探さないとできないなって思ってて。だから、そこは意識して作った。まず、そこからでしかできないかなと思ったから。でもいろいろ作っていったら、そうでもないこともわかったけどね。

■ミニアルバムのお話はそれこそ秋ぐらいにできればと思いますけど、改めて30周年を迎えたことについて思うところとか、感じるところとかがあれば。
Hirofumi:それはないですね。

Luna:感じる場所がない。

Hirofumi:30周年を指折り数えてたわけじゃないから。俺らの場合、ライヴが基本じゃないですか。ライヴに付随するものとして、新曲にチャレンジしたりしたから、ライヴがないというのは何もモチベーションを保てなくなるところなんですよね。でも、ライヴはなくしてないから。そのうえでじゃあどうするか考えて、MVを撮ろうとか、てんこ盛りにして初回盤を発売しようとか、そういうアイデアを楽しんでいかないと、ライヴをやれるであろう来年までもたないですよね。みんなのワクワク感も途切れさせたくないし。みんなも生活がいろいろ大変な現状だから何もないと途切れてしまうし、ストレスを解消できるのも音楽じゃないですか。ライヴがない中で久々に聴いた新曲がよかったら、日常を忘れる瞬間もできると思うし。そういうものを提供できればいいですよね。

■ライヴとしては、来年のGWに決まっていますが、それが30周年の活動の締めくくりになるんですか。
Luna:それはわからないですね。未知です。

Hirofumi:中途半端な形では区切りをつけたくないんです。どういう形で、やり切ったと思えるかが見えないんです。振替があったりして、30周年のひとくくりとか関係なくなってるわけじゃないですか。だから、気持ち的にやり切れるところまでやり切ればいいと思ってます。ミニアルバムを出す以上はちゃんと知ってもらいたい。そこに付随して来年があるわけやから。それで気持ちよく、脱力できるまでやりたいですね。

5月のワンマンが現状では目指すところやけど、だいぶ先になっちゃうんで、そこまでにアイデアが出てきたらそれも面白そうですねってなるかもしれんし。来年の5月もどうなってるかわからん現状やから、将来的なことはあんまり考えんようにしてますね。計画は1個1個組み立てていくけど、それがそのときどうなってるかなんて、あんまり考えんほうがいい。それぞれが今を生きればたどりつく、みたいに思ってます。

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。