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怪人二十面奏 インタビュー

11月2日に、3rdアルバム『人生』をリリースする怪人二十面奏。
自分たちにとって特別だという三作目にあたる作品に
どんな風に向き合い、制作に臨んだのか。
11月3日から、単独公演巡業二〇二二「素晴らしき哉、人生」がスタート。
彼らにとって特別なツアーになることは間違いない。
ファン一人ひとりにとっても、人生を振り返る機会となりそうだ。


●3rdアルバム『人生』は、前作から3年以上経っての発売ですね。
KEN:コロナの関係で発売が遅れていたので、どうしても今年に出したいというのは去年から話してました。
マコト:バンド結成時から、2年に1枚はアルバムを出そうと決めていたんです。本来であれば2021年に3枚目を出したかったんですけど、こういう状況なんでいろいろ変わって。1年延びたということですね。

●アルバムという形でこそできることがあるという意識は強い?
マコト:シングルも出してるけど、すべてはアルバムに向けてっていう感じなんで、活動のすべてがアルバムというか。アルバムを出したら、次の日から次のアルバムに向けて動きたいんです。

●そうなると、シングルを作るときはどれぐらい次のアルバムのことは考えているんですか。
マコト:そんなに考えてはないですけど、アルバムを出す時期に向けて逆算してる感じです。ただ、シングル曲が必ずアルバムに入るとは限らないし、シングルはシングルという意識です。
KEN:アルバムのテーマに沿わないシングルだったら入れなくてもいいですよね。今年のシングル2枚については、アルバムを見越して作った感じです。

●今年は「癈人録/しにいたるやまひ」と「幻創大東亞狂榮圏」と2枚シングルを発売しましたが、その時点でアルバムをイメージしていたということですか。
マコト:これまで、6月にアルバムを発売してきているので、3枚目も今年の6月で考えてたんです。それで、1月に「癈人録/しにいたるやまひ」をレコーディングしたときは、シングルカットという感じで作ってたし、「幻創大東亞狂榮圏」は7月に出したので、それがアルバムに新曲として収録されていたかもしれないんです。でも、アルバム発売を11月にすることになってちょっとずれてしまった感じですね。

●それで結果的に、「幻創大東亞狂榮圏」はシングルとして出したということですね。
マコト:もしアルバムに新曲として入れてたら、アルバム全体的にそういう雰囲気になったかもしれないし、アー写も白塗りの軍服やったかもしれないし。そのタイミングじゃなくなったんで、今回の形になりました。

●『人生』というアルバムタイトルについては、いつ決めたんですか。
マコト:いつやろ? 7月には発表してたから、夏ぐらいですね。3枚目のアルバムであることをすごく大事にしてるんで、思いを込めたタイトルになっているというか。

●The Benjaminのアルバム取材をしたときにミネさんもおっしゃってましたけど、3枚目というのは特別なんですか。
マコト:ほんとそうなんですよね。世代的な話かもしれないですね。僕らが好きなアーティストの3枚目のアルバムのイメージというか。僕らにとって3枚目は完結編みたいな感じなんで、ちょっと大げさでシンプルなタイトルをつけたかったんです。曲のタイトルはややこしかったりするんですけど、アルバムのタイトルはすごくシンプルにしようと。自分の中で一番よく使うワードだったり、テーマだったり、一番ベタな言葉にしようと思って、『人生』にしました。イメージ的にもハマるからいいのかなって。
KEN:マコトさんからアルバムタイトルが来たときに、たとえば『幻創大東亞狂榮圏』というタイトルにしたいって言われてたら、ん?って思ったと思うんです。すごくテーマが限定されてしまうので。でも、『人生』やったら広く捉えられるテーマだし、アルバムのタイトルとしていいなと思ったんで、それでいきましょうって。

●KENさんも、3枚目のアルバムだから、っていう思い入れの強さはあったりしました?
KEN:僕もそれはめちゃくちゃありました。怪人二十面奏としてこれまで一貫した内容のアルバムを作ってきたから、そのダメ押しの三作目という感じですよね。アルバムの構成も、インストゥルメンタルで始まるとか、一貫したいと思ってるんです。
マコト:僕らだけじゃないかもしれないですけど、アルバムのフォーマットはできてきますよね。僕らの場合は、1曲目にインストがあって、最後の前におとなしい曲があって、みたいな。それは怪人二十面奏の1枚目から、なんやったら前のバンドからずっとそのパターンでやってます。自分の中で、アルバムとはこういうものだっていうのがあるんです。流れががっつり決まってるというか。その流れにきれいにハメていく作業ですよね。
KEN:その流れに向かって作ったような感じがありますね。

●曲順の型に向けて曲を考えるには、まずテンポ感やノリみたいなところから決まるんでしょうか。
マコト:ノリかな。ノリが決まればだいたい歌詞も決まってきますね。

●作曲するときは、7曲目を作ろうとかそういう感じで作るんですか。
KEN:今作だと、それを考えて作ったのは、「人生-インストルメンタル-」と「ヰ書」と「然らば、人生」ですね。「溺れるパラレル」は、マコトさんと話してる中でブラスを入れるような曲がほしいっていうところから作りました。どこでもハマればいいかなって。

●前半は勢いある感じが続きますけど、そういう流れもすでにあったもの?
KEN:振り返るとそうですね。だんだん暗くなっていくんです。
マコト:12曲で40分です。若い子たちは倍速で映画を観たりするっていうから、短く。

●1曲3分というのはずっとおっしゃっていることですが、時代の先を行ってたと?
マコト:そうなんです! Z世代に向けてるんです(笑)。だから、『人生』もあっという間に終わります。2分台の曲も多いから。それをねらってるというより、僕らはずっとそうなんで。

●それぐらいが自分たちのアルバムとして理想のボリュームなんですか。
マコト:あっという間に終わってもう一周聴きたいと思ってもらいたいんですよね。それと、ライヴ感を感じてほしい。これを聴いてライヴに来てほしいんです。生で観るもの、聴くものがすべてやと思うんで、アルバムでもライヴ感を出したい。作品としてゆったり聴いてもらいたいというより、ライヴを観てる感覚で聴いてほしいです。 

すごく前向きな、みんなを元気づけるJ-POP(?)


●9曲目の「透明」は過去に会場限定音源に収録された曲だそうですが、今回入れることにしたのはどういうところからだったんですか。
KEN:ほかの会場限定のシングルの曲を入れる方法もあったんですけど、その代わりに何か入れようかっていう話をする中で出てきたんです。
マコト:あえてここで、初期の曲を再録して復活させるのは、このアルバムの流れの中ですごく特殊な感じがしたんで、そういう要素も入れたいと思ったんです。
KEN:ファーストアルバムに入っててもおかしくない曲なんですよ。それが3枚目のアルバムに入ってるのがいいのかなと思います。
マコト:歌録りをしてるときに、ブースの外のKENさんに、「これ、入れる?」って最終確認しました。いいと思いますってなったから入れることにしたんですね。そこで迷いがあったら、この曲のレコーディングはやめてたかもしれない。自分の中ではすごく迷いがありました。

●ライヴでもやり続けてきたから、自分たちにとって過去の曲みたいな認識ではないんですか。今と作風が違うように感じるとか。
マコト:ああ、どうやろ。あんのかな。なんだかんだで、今だとこの歌詞は書かないなとは思いますけど、曲としてはほかの曲となじんでると思います。
KEN:今、アルバムに入っててもおかしくないかな。

●歌詞はちょっと最近の作品と違うのかなという印象でしたが。
マコト:この歌詞はもう書けないですね。今回収録するにあたって、アレンジもして、歌詞も変えて、タイトルだけ残すのでもよかったんですけど、結局オリジナルには勝てないんですよ。お客さんには最初に聴いた思い出もあるから、最初のバージョンには勝てない。だから、できるだけ大幅なアレンジはせずに、構成もそんなに変えなかったです。

●今だったら、「透明」というタイトル自体なくないです?
KEN:ああ~。
マコト:今までは、「透明。」やったんですけど、ちょっと変えたろうと思って「透明」にしました。

●そして、唯一と言ってもいい聴かせるタイプの曲が、「ヰ書」ですよね。
マコト:さすがにアルバムなんでね。聴かせるというか、ちょっと一回落ち着いてもらうような流れは作りたいかな。

●個人的には、ここで終わるのかな、みたいな聴き心地を感じましたが。
KEN:3枚目じゃなかったらそれもありかな。

●こういう大きい感じでどーんと終わるアルバムってあるじゃないですか。
マコト:ああ、わかります。それはね、相当大物アーティストじゃないと。僕らはここで終われないんです。僕らはそんな落ち着いてられないです、いい年やけど(笑)。最後にもう一回押したいんです。

●そこで「然らば、人生」がくると。
KEN:ラストに向けた曲を何曲か作って渡した中の曲ですね。
マコト:一番疾走感のある曲を最後にしました。最後の曲なんで、人生の総まとめ的な歌詞を書いて。
KNE:この曲は、アルバムの最後にしようと思って一番力を込めて作りました。曲を作る段階で、マコトさんがこういう歌詞を書いてくれたらいいなっていう風に思ってました。

●本当に感じていることとして歌詞にしたわけですか。
マコト:自分にとって人生のエンディングテーマみたいな感じではありますね。最終的にはいい人生やったと思いたいし。歌詞を受け取った人が自分の人生と重ねてほしいかな。リスナーそれぞれが意味を解釈してほしいから、自由に思ってもらえたらいいです。ただ僕も、たった一度の人生やから、後悔はしたくないですよね。そういう気持ちをラストの曲に持ってこれたのはよかったかなと思います。

●怪人二十面奏の作風というか、表現の方向性としては、もう少し斜に構えた感じもあるのかなと思ったりしたんですけど。
マコト:これまでに出した「生命力」も「其の証」もそうやし、自分の人生とかみんなの人生とか、人間が生まれてきて死ぬまでとか、そういうのをテーマに書いてるんですよね。だからそれは三部作としての流れですよね。ただ、人生についていろんな解釈がそれぞれにあると思うし、答えはひとつじゃない。でも僕は、人生は美しいものだと思ってます。

●そういう意味では素直に受け取っていいんですね。
マコト:そうです、そうです。これはすごく前向きな、みんなを元気づけるJ-POPなんで。

●ええ?
KEN:(笑)
マコト:「素晴らしき哉、人生」っていうツアータイトルと『人生』というタイトルが先にあったんですね。そこから、「然らば、人生」は生まれたんですけど、“ありがとう 素晴らしき哉、我が人生”という最後の2行から、歌詞を書き始めたんです。だから、これがすべてなのかなっていう感じですね。

ツアーファイナルの渋谷では1曲目に注目!


●3枚目のアルバムを作り終えた感覚は、1枚目や2枚目を作ったのとは違ったりするんですか。
KEN:やりきった感はありますね。これで怪人二十面奏が完成した感じがします。「然らば、人生」が最後の曲になってもいいと思って作ったし、この歌詞がのって、すごくいいなと思ったんです、歌詞と曲がリンクしてて。そういう面でもすごくやりきった感じがあるし、今までの二作と感覚は違うかもしれないですね。
マコト:アルバムを作ったときはいつも全部出し切った感覚がありますね。今のところ、活動してきた7年のすべては入れることができたかな。

●やり切ったから満足したし納得したし、違うことをしたいとか?
KEN:ツアーをやりながら違う未来が見えたらいいなって思ってます。

●ツアーに向けて、どんなライヴを思い描いていますか。
マコト:いつものライヴの流れの中に、「ヰ書」と「然らば、人生」が入ったら、また全然違うと思いますね。その違いはなんとなく想像できるから、面白いものになるんじゃないかなと思ってます。あとは単純に、4曲新曲が入るので、必然的に何かを削らないといけないんですよね。僕らは、ワンマンの曲数は20曲と決めてるから。会場ごとにセットリストはガラッと変えるので、いろんな曲はできると思います。もちろん『人生』の収録曲はやるんですけど、いきなりバラバラの曲順でやります。

●それ、言っちゃっていいんですか。
マコト:ライヴの1曲目に必ず、「ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム」がくるとは限らないです。それは裏切りというか、こうきたかって常に思わせたいから。アルバムツアーの一か所目の一曲目はたいていアルバムの一曲目じゃないですか。でもそこもはずしていきたい。

●ファイナルの渋谷に戻ってきたとき、どうなってるんでしょうね。
マコト:1曲目はどうなるか、とかね。こうきたかって思ってもらえるようにはしたいです。これ、覚えておいて、渋谷の1曲目を楽しみにしておいてください。言ってもうた(笑)。

●めちゃくちゃそこが注目されちゃいますよ。
マコト:期待してていいし、その期待をさらに僕は上回るから。

●楽しみにしてます。このツアーで今年は締めくくる感じですか。
マコト:まだ年内にもうひとつ考えてることはあるんで、楽しみにしててほしいですけど、まずはこのツアーに全力を注ぎたいです。このツアーで今後が変わってくると思うんで、いいテンションで最終日を迎えたいと思います。

●ファイナルはぜひおうかがいさせてください。
マコト:1曲目を楽しみに。
KEN:(笑)

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。