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The Benjamin インタビュー

アルバム『BELIEVE』は、The Benjaminにとって
特別な意味を持つ3枚目であり、1枚目でもある。
“BELIEVE”=信じるという意味を持つタイトルのこの作品に、
どんな思いでたどり着いたのだろうか。
結成から7年目、まだまだ進化し続ける途上の彼ら。
その可能性をアルバムから感じ取りたい。


●3枚目のアルバム発売はいつ頃から考えていたんですか。
ミネムラ”Miney”アキノリ(以下、Miney):5周年を迎えたときには、3枚目のアルバムを作ることを考えてましたね。僕ら3人がこれまで一緒にやってきたバンドは4年半以上続いたことがなかったし、アルバムも2枚しか出したことがなかったんです。5周年を迎えて4年半のジンクスを超えたとき、次は3枚目のフルアルバムを出すのが目標であり憧れになりました。

●3枚目とは言っても、3月に発売した「Bark in the Garden」でバンドは大きく変化してますよね。
Miney:はい。その辺りは前回の取材でお話しましたけど、気持ちのうえでは新バンドになったから、早く曲をいっぱい作って、新しいThe Benjaminの形を作り上げていこうと思って、アルバムに向かっていったんです。

●そういう意味では1枚目でもあるわけで、たとえば新曲だけにすることも考えましたか。
Miney:それはもちろんありました。だから、入らなかった過去の曲はありますよね、「ボートが揺れた」とか「Bonnjoruno」「ビーフシチュー」とか。

●あ、「文房具-Be Alright-」もですね。
Miney:そう、「文房具」も。途中まではそれらを入れてアルバムを作る進行だったんですよ。でも、BATTLE FEVERのツアーとかで、以前の俺たちと今の俺たちが混ざっているセットリストをしていく中で、今のThe Benjaminでカタチにできる曲だと思ったものだけを入れようと思ったんです。

ツブク”Mashoe”マサトシ(以下、Mashoe):「文房具」をどうするかは話をしたよね。「Bark in the Garden」を出したときから、「文房具」の扱いをどうするのかは話してました。ファンの皆さんと作った曲なんで大切に扱いたいけど、このアルバムに合うかなという気持ちはあったかな。今は、新しいThe Benjaminを表現するほうがいいんじゃないかっていうことになりました。「文房具」は機会があれば録り直したいですね。

●選曲の過程の中でアルバムタイトルは決まったんですか。
Miney:もっと前から決まってました。”BELIEVE”という言葉は、僕たちにとって思い入れがあるんです。過去にビリーというバンドをやっていたときに、ローディとかを含めた仲間の集まりを“ビリー部”と呼んだりしていて。言葉に思い入れがあるからこそずっと使えなくて、使うんなら今じゃないかなと。

●その言葉がMineyさんから出てきてどうでしたか。
ウスイ“Tacky”タクマ(以下、Tacky):ついにきたかって。
Mashoe:使うなら、ここか最後の作品か、だから。

●使うタイミングを図ってるんですね。
Mashoe:パッと見て意味がわかるような言葉は、僕が曲を作るときは避けてますね。
Tacky:ここぞ、というときにですよね。
Mashoe:そういう言葉はパンチ力があると思うから、ちょっとした散弾で使っちゃうのはもったいないし。ここか最後かどっちか(笑)。

●それがここだったのは、3枚目かつ最初みたいな特別なアルバムというのもあってですか。
Mashoe:ん~、やっぱり大きいですよね。The Benjaminを始めた当初から見てくれてる方からしたら、バンドがガラッと変わってるじゃないですか。でもそこで、僕たちを信じてほしいというか。これまでのマインドは忘れてないし、皆さんと作ってきたバンドだと思ってるから。信じてほしいという気持ちもあるんです。

●”BELIEVE”という言葉は、前向きというか肯定的な印象を受けるので、「Bark in the Garden」での変化からは少し意外な気もしました。もっと攻撃的だったり、影のあるものになるのかなと思っていたので。
Miney:「Bark in the Garden」みたいな闇を提示するにしても何かしらのメッセージがあるわけで、その答えがどこに向かうかをちゃんと作りたいんですよ。その到達点として”BELIEVE”にいきたい。人間としては当然どちらの面も持ち合わせてるし、”BELIEVE”があるからこその闇でもあるし。

●目指すところは”BELIEVE”なんですね。
Miney:そうですね。ただ、最初から信じろよって言っても、こんな世の中で信じられるかなと思うし、ただ単純に信じろよっていうほどしらじらしくもできないし。闇の部分や怒りもありつつ、ちゃんと経過があって、“BELIEVE”にたどりつくから説得力があるんです。

●個人的になんですけど、根拠がなくても「信じろよ」って言い切れる強さがあるのがThe Benjaminだし、そこが魅力かと思ってたんですよね。そうではなく、違う面も出したほうが説得力があると。
Tacky:そうじゃないですかね。もともと僕らは陽属性だったわけじゃないですか、今おっしゃったみたいに。これまで見せてなかった部分を出したほうが説得力もあるし、今まで陽属性が眩し過ぎてとっつきづらいと思ってた人たちにも共感されるかもしれないですよね。

始まりは裏切り。葛藤を経て、『BELIEVE』へと変化する

●新曲はすべてMineyさんの作曲ですが、これは今のThe BenjaminとしてはMineyさんの曲がふさわしいという判断があってのことですか。
Miney:The Benjaminを6年間やってきて、何となく上手にバランスがとれてたわけだけど、それは変わるかもしれないという話はしてました。Mashoe:僕はThe Benjaminになってから曲を作り始めたので、今の感じのサウンド感とか曲調とか、そういうのを書いたことがないんです。青春時代にガチガチにヴィジュアル系が好きだったわけでもないし。だから第一弾として、世界観をまっすぐ作ってもらったほうがわかりやすいだろうと思ったんです。僕も個人的にはプレイヤーのほうに振れるので、それはそれで面白いなと思って臨みました。

●Mashoeさんとしてはベーシストとして制作に臨んだと。
Mashoe:ベーシストとしてライヴで派手にいける方法とか、もっとベースに耳が行く方向に振り切ろうかなと思ってましたね。目立たなくていいけど、でも耳に残るようなところは一曲に対してひとつでも置いていけたらいいなと思ってました。

●それでは、収録曲についておうかがいしていきます。「ブルータス、オマエもか」は1曲目として作った曲ですか。
Miney:そうですね、1曲目と思って作りました。でも、エンジニアさんは、これ1曲目?って言ってましたよ。

●ええ?
Miney:飛び道具すぎるからじゃないですか。
Tacky:まぁ、そうでしょうね。

●とは言え、これは一曲目だろうと思ったんですけど。
Tacky:これは、変態的なギターソロを弾いてほしいって言われて。
Miney:自分で言ったんだよ、変態的なのを弾くって。
Tacky:そうだっけ?
Mashoe:自分で言ってたよ。3つぐらい、変態レベルを用意してるって言ってた。ライトな変態っぽいやつと、もうちょっと変態なのと、振り切ったのを用意してるって。
Tacky:でもやってみたら、あんまり変態じゃないって言われて。Mineyは本物の変態なんで、僕みたいに偽りの変態では刺激が足りなかったみたいです。そこはレコーディング中に変えたりして、結果よくなりましたね。

●2曲目は「Babel」。この歌詞の世界観も、The Benjaminにとっては新鮮というか。
Miney:神話のバベルの塔、人間の欲望が強すぎるあまり神様の怒りに触れて共通の言語を失うっていう物語をなぞって、人の価値観がこんなにバラバラなのもすべて欲望につながってることを描いてます。

●1、2曲と、題材になっているのが西洋的なものなのは何か理由があるんですか。これまでは、どちらかという日常的なものを取り上げることが多い印象でしたが。
Miney:今までは使えないと思ってたんですよ、俺らっぽくないから。

●なるほど、これまでのほうが意識して、結果避けてたんですね。
Miney:何か違うって感じるものがあるんですよ。「Bark in the Garden」のときも、barkという言葉を使うのがどうかなと思ったり。でも、もともとは好きなんですよ。
Mashoe:今なら表現できそうっていうのがあるんじゃないですか。自分たちの気持ちも含めて、The Benjaminとしてこれが表現できる、そこのスイッチがちゃんと入ったというか。だから作れたんじゃないかなって思いますね。

●3曲目の「Bisque Doll Magic」の怪しげな雰囲気がありつつ、誰から誰に呼びかけてる歌詞なんでしょう?
Miney:7月に入ってから作ったので、参議院選挙のニュースを眺めながら書きました。結局、人に騙されたり騙したり、操ったり操られたりだなって。

●大衆に向けて呼びかけてるということ?
Miney:うん、そういうことでもあるし、自分が信じてるものに実は操られてるのかもしれないなとか。本当に信じるべきものは何かとか、騙してるつもりなのか騙されてるのか、立場によって違うなって。

●4曲目はMashoeさん作詞作曲の「バリケード」。書いたのは2年前ですよね。
Mashoe:コロナ禍に入って最初の誕生日で、ライヴができない状況のときだったので、そういう歌詞になりましたね。ライヴでやっていくうちに、ギター陣のアレンジが相当変わったんです。レコーディングでは、ライヴでやってたアレンジからさらに変わってよくなりましたね。
Miney:もっとシンプルなロックというか、パンク寄りみたいなギターワークだったんですけど、少し色を鮮やかにしていったんです。ディレイのかけ方とか。
Tacky:フレーズごとまるっと変えましたね。ライヴで変わっていった部分を、レコーディング前に一回見直してアレンジをガラッと変えて、さらにMineyにエフェクトのかけ方とかをアレンジしてもらったんです。だから、アルバムのための進化系がちゃんとできたのかなと思います。
Miney:改めて歌詞を読んで、歌詞の閉塞感をどれぐらい空気づけするか、サウンド作りを工夫しましたね。

●コロナ禍が今でも続いて、この曲がリアリティを持って響くというのはちょっと複雑ですね。
Mashoe:コロナ禍が明けてたら、歌い方も違ってたかもしれないですよね、もうちょっと明るかったかもとか。もしかしたらアルバムに入ってなかったかもしれないですよね。

●次が、「ベージュなMOON」。
Miney:昭和歌謡にありがちな、大人な歌詞ですよね。エキゾチックな雰囲気でいきたくて、妄想の世界に誘うみたいなイメージです。

●ベースのフレーズが印象的で、耳に入ってきました。
Mashoe:原曲の段階でああいう感じのフレーズだったので、それをベーシストである自分が整理していったような感じです。全体のサウンド感が面白い曲だと思ったんであまり無理をしないように、丁寧に綺麗にしていけば曲として成り立つんだろうなと思いました。
Miney:「ブルータスよ、オマエもか」のベースソロもそうなんですけど、ベースはバキバキ前に出てもらおうという考えはありました。ステージでベーシストにスポットライトが当たるようなシーンをわかりやすく作ろうと。

●「Bark in the Garden」が6曲目。
Miney:この前までが、要はアンチテーゼみたいな感じなんですよ、”BELIEVE”に対する。ここまでは、信じられないという世界。「Bark in the Garden」から葛藤が始まります。

●信じられない、葛藤、信じるの3つに分かれるということですね。この曲は最近のライヴでずっとやり続けてきて何か変化はありましたか。最初にライヴで聴いたときは、頑張ってるというか、今までやってきたこととの距離を埋めなきゃみたいなのが感じられて。
Mashoe:変えよう変えようっていう感じが出てたということですよね。

●はい、それがなくなってナチュラルになった感じがします。
Tacky:ああ、そうですよね。それはやってても感じます。余裕も出て来ただろうし。

●7曲目がTackyさん作詞作曲の「バズーカをぶっ放せ」です。
Tacky:これを書いたのもコロナ禍ですよね。どうにかこの状態をぶっ壊そうなところで書いたと思います。

●アルバムでは、ライヴで聴いていた印象よりシリアスに仕上がっているなと思いました。ライヴでのTackyさんのキャラ的なものもあるのかもしれないですけど。
Miney:そうですか? 俺たちから見たらTackyは一番攻撃的だから(笑)。Mashoe:(笑)
Tacky:ライヴでも気持ち的にはそのまんまですよ。レコーディングでもライヴの感じで歌ってます。

●8曲目の「Bifurcation」は、Mashoeさんの作詞作曲。ベースとかオルガンの音が耳に残りますよね。
Mashoe:イメージした感じに出来上がりましたね。ベースがリズムを引っ張っていくような曲を作りたかったんです。そんなフレーズを弾きながら歌うんだって思われそうな、ちょっと小憎い感じにしてみました。

●タイトルは分岐という意味ですね。
Mashoe:そろそろコロナ禍が終わるかなと思ってつけたんですよね。

●英語だけじゃなく、Mashoeさんは歌詞に難しい言葉を使うなって改めて思いました。
Mashoe:最初のサビを作った段階で語呂ができてくるんで、字面と発音で何か近い言葉がないかなぁって探すんです。歌詞を書いている時間より、調べてる時間のほうがたぶん長いですよ。

●「Bifurcation」もそんなに耳にする単語ではないかも。
Miney:ちょうどここがアルバムの分岐になります。

●上手くできてますね。そして9曲目が「バウムクーヘン」。タイトルもそうですし、歌詞にバウムクーヘンが出てくるのも驚きでした。
Miney:The Benjaminだから。

●?
Miney:木を連想させたかったんです。それに、積み重ねた年輪に人の歴史とか思いを重ねられるといいなと思ったし。キャンディーでもケーキでもパンケーキでもよかったんですけどね、甘いものを食べると幸せになれるじゃないですか。
Mashoe:甘いものはたまにがいいですよね。
Miney:ケーキ類って分け合うじゃないですか。それもすごく大事なことだし。それに、Bで始まらないといけないから(笑)。

●10曲目の「Bridge of Rainbow」では、虹が見えて雨があがってる状態ですよね。そもそも、「Bark in the Garden」の後に「Bridge of Rainbow」ができたのは、何か思うところがあってですか。
Miney:できることしかできないと思ったのかもしれないですね。「Bark in the Garden」で何かを変えなきゃ進まなきゃってやってみたけれど、慣れない自分になろうとするのはとても難しいんですよね。歌詞を書くと自分自身も考えることになるから、できることを全力で信じて進まなければいけない、そしたら先に見えてくるものがあるかもしれないなって思ったんです。できることは人それぞれだけど、僕らはここで一生懸命歌い続けることや曲を届けることが、未来への懸け橋になるんじゃないかなって。

●11曲目で、雨が上がって「ブーツを脱いで」。過去の音源の中でもこの曲を入れようと選んだのはどういう理由からですか。
Miney:ライヴで強かったし。「Bridge of Rainbow」からの流れを考えたら断然ありだなって思ったし。

●これはMashoeさんが作詞作曲して、Mineyさんが歌った初めての曲ですね。コロナ禍でリリースされた最初の新曲でもあります。
Mashoe:コロナ禍で閉鎖的になってたときに、一歩を踏み出すような、前向きに持っていけるような歌詞がよく書けたなって今改めて思います。「バリケード」より前に書いたんですけど、コロナを軽く見てたのかも。

●最初の緊急事態宣言が明けたぐらいでしたよね。
Mashoe:やっと家から出れるわって感じだったのかもしれないですね。

●とてもきれいな流れで、最後が「BELIEVE」。
Tacky:これが、”BELIEVE”ですよね。突き抜ける感じもそうだし、サビのポップさもいいなってすごく思いました。新しくやろうとしていることはちょっと暗めなんですけど、こういう曲は大切だと思います。
Mashoe:テンポが速いです。8分とかで弾いてると相当速くて。でも、ベースは派手にもっていきたいなって思いながら考えました。

●これは、ストレートでわかりやすくメッセージを届ける歌詞にしたかったんですか。
Miney:これが一番伝えたいことなんだろうと。いろんな生き方や暮らしがあるけれど、俺たちにとってはライヴしかないということですよね。そういう、間違いがない、信じられる、信じてもらいたいものはこの中に入ってるし、みんなにとっても信じられるものがこの歌詞に入ってると思ってもらえると思います。

●アルバムの最後の最後まで美しくしめくくってますよね。
Miney:“I Believe”ってね。“どうする?”、“いいよね?”、“こういう終わり方、カッコいいもんね”って言いながらやりました(照笑)。
Tacky:めちゃめちゃこだわってたよね。

Tacky&Mashoeの誕生日と初ホールワンマン

●念願の3枚目のアルバム、そして今の自分たちを表すアルバムを作り上げていかがですか。
Miney:ひと作業終えたっていうところはありますね。「Bark in the Garden」を出したときに、どうしたんだろう?って思った人はいたと思います。『BELIEVE』を作ったことで、あのときの変化を納得してもらえるんじゃないかなと思います。

●Mashoeさんの誕生日から始まって、Tackyさんの誕生日で終わるツアーが控えていますが、どんな誕生日にしたいですか。
Mashoe:ライヴなかったら普通に仕事してるんで、みんなでわあ~っと出来るのは楽しいし、ありがたいですよね。

●Tackyさんは40歳の記念すべき誕生日ですしね。
Tacky:40歳というのは、あんまり意識しないようにはしてます。

●つまり意識していると。
Tacky:40歳になるまでこうやってバンドができて、誕生日に渋谷PLEASURE PLEASUREでライヴができるなんて、すごく幸せなことだと思うんで、恩返しをしたいと思います。全部応援してくれる人ありきだから、いいライヴをしなきゃなって思うし、もちろん気合いが入ってます。


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