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The Benjaminインタビュー

The Benjaminのニューシングル『Bark in the Garden』。
一新されたヴィジュアルからもわかるように、
これまでとは一線を画す作品に仕上げた真意とは?
コロナ禍でも、演奏を中心とする配信を定期的に続けてきたからこそ、
彼らはアーティストとして前進することをやめない。
5月7日、原宿RENONで行われる7周年ワンマンに向かう、
彼らの本気について行きたい。

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●コロナ禍で始めた毎週金曜日の配信を、ライヴができるようになった今もずっと続けていますよね。
ウスイ“Tacky”タクマ(以下、Tacky):有観客のライヴをするようになって、僕らの中で続けるか考えた時期はありましたね。でも、配信中に観ている人に問いかけたときに、まだライヴに行けない人が、こういうのが見られるのは嬉しいので続けてくださいってコメントしてくれたんです。それだけで俺たちは、じゃあやろうと思いましたよね。喜んで待ってくれる人がいるんだったらやりますよって。

●やる側としても、ライヴとはまた別のものとして楽しめている感じですか。
ミネムラ“Miney”アキノリ(以下、Miney):いい意味で普通。ルーティン化してるから。
ツブク“Mashoe”マサトシ(以下、Mashoe):火曜日はゴミの日、金曜日は配信の日、ぐらいの感じ。

●それぐらい習慣だと。配信は過去の曲を振り返る機会になったと思うんですが、何か発見とか気づきはありましたか。
Miney:その答えが新譜なんです。配信を続ける中で気づいたのは、自分たちのことが好きだなって(笑)。
Tacky:昔の曲もめっちゃ好きだから。カッコいいねって言いながらやってますからね。

●今もカッコいいと思えるのは、クオリティが高いからなのか、好みが一貫してるからなのか、どうなんでしょう?
Miney:久しぶりに箱から出してみたら、この曲はどうだろう?って思う曲もありますよ。半分はそういう気持ちだけど、もう半分は、何て言うんだろうな。俺たちは、解散しよう、活動を止めようと思ったことはなくて、いろんなことがあって止まってたしまってたんですよね。だから、この曲はもう新しい人が聴く機会がないのかっていう寂しい思いはずっとあったんです。だから、昔の曲を改めていろんな人に聴かせる機会があるのは嬉しいですよね。

●今もそう思える曲だということですよね。黒歴史だとか、過去に葬り去るとかではなく。
三人 :それはないね。

●新しく作る曲が常に最高みたいに言うミュージシャンの方もいるじゃないですか。
Mashoe:当時も絶対いいと思って発表してたから、その時点でそれは一位だし、その後に新たな一位が出て来ても、過去の一位が二位になるわけじゃないんですよ。オリンピックでも前回大会の金メダリストがいて、今回の金メダリストがいますよね。過去の金メダリストが銀メダリストになるわけじゃないじゃないですか。そういう感じですよ。

●なるほど。
Miney:あとはね、若かったからとはいえ、“八つ裂きにしろ”とか“殺すぞ”っていう歌詞を一回も書いたことがないんですよ。それもよかったと思います。当時から、大人になったときも聴かせられる歌詞を書こうと思ってたのは覚えてますね。
Mashoe:十年後に、昔の曲が恥ずかしいと思うようなことにならないようにって言ってた。
Miney:恥ずかしいというのは自分が演奏するときの気持ちもだし、メッセージとしても、だよね。たとえば、友達に「いい曲だから聴いてほしい」っていう曲に、“八つ裂きにしろ”っていう歌詞が出て来るんだったら、勧めるのが恥ずかしいから。

●そういう歌詞って、十代の聴き手には刺さったりもしますよね。青さ全開、若さ爆発みたいな、瞬間的なカッコよさもありますし。
Mashoe:表現が違うんだと思います。ストレートな言葉はあまり使わずに、青さとか若さを表現していたんだと思います。
Miney:“八つ裂きにしろ”と書かなくてもほかの言い方があるだろうって。“四つ折りにしろ”、とかね。
三人:(笑)

「Bark in the Garden」の原曲で
みんなすぐに理解できた

Miney_21A_掲載

●さて、配信を積み重ねたうえでの今回のシングルですが、最初、違うバンドの資料をMineyさんが間違えて送ってきたのかな、と思うぐらいビックリしたんですよ。
Tacky:そうそう(笑)。
Miney:その反応で正解です。

●そういう方向性は、制作が始まる段階からあったんですか。
Miney:全然なかったです。12月のワンマンで、コロナ禍で作った新曲だけのセットリストでやったんですね。その後かな。新曲をライヴでやってみたときに、物足りなさとか失いそうになっているものに気づいたというか。それは配信をやってたからですよね。

●配信を中心に音楽活動をして生まれた新曲をまとめてみて感じたと。
Miney:そう。そこで、これから俺たちは何をしていくのか、何を届けたいんだろうと想像したときに、今揃ってるものだけじゃ物足りないし、伝えたいのはそれじゃないと思ったんです。この2年間で、配信で自分たちの音楽の歴史をおさらいしてきて、一周したのかもしれない。自分たちの原点にあるライヴは、もっと激しくてカッコいいものだし、スリリングな楽曲を届けたいんです。またみんながライヴに足を運べるようになったときに、ライヴに行くってすごいカッコよくてスリリングなものだよねって思ってほしい。そう考えたときに、問答無用なヴィジュアルロックというかビートロックが、俺たちもオーディエンスも心を震わせるんじゃないかと思ったんです。

●それは、単にライヴとかロックバンドではなく、ファンの方や皆さんが通って来た、いわゆるヴィジュアル系だったと。
Miney:誤解を恐れずに言うとそうかな。ヴィジュアル系をどう解釈するかにもよるけど。

●それで、新しいアー写もこれまでのイメージとは違うわけですね。ねらったというと誤解を生みそうですけど。
Miney:ねらってんな、こいつらって思われるのはイヤなんですけどね。

●ウケをねらうのねらうじゃなくて、方向を定めてるという意味でのねらう、というか。
Miney:そうそう。それはね、こういう方向でスタイリングしてくれってスタイリストさんにも相談しました。

●次の作品の方向性として、ヴィジュアル系だというのが三人の共通認識としてあったんですね。
Mashoe:まず今回は、方向性を定めるために、作曲はMineyに任せようとみんなで決めてました。

●それでMineyさんが曲を作ったと。
Miney:曲にして聴かせるのが一番わかりやすいだろうと思ったんですよ。言葉で、“ヴィジュアル系で~”とか、“カッコいい衣装を着て~”って説明してもね。
Mashoe:それがLINEで来たら、ん~って考えちゃいますよね。
Miney:LUNA SEAのライヴ映像でも見たのかなって思われる(笑)。だから、曲を聴かせることが一番の説明だと思ったんです。実際、僕が原曲のデモを投げ掛けた瞬間に、みんながパッと理解したんですよね。

●デモを聴いてまずどう思いましたか。
Tacky:俺は、きた~って思いましたよ。新しいCDを出すときで、初期衝動みたいなのがあったから。僕らの原点にはこういうものがあるし、それを今の僕らだったらカッコよくできるなと思ったんです。それも配信を経たからですよね。観てる方に配信でいいやって思われないようなライヴにしたいという気持ちがあるんです。そういう意味でもこの曲がきたときにきた~って思いましたね。
Mashoe:僕はわりと自然でした。僕は、普通にMineyの曲が好きなんで、一番客観視してますね。ただ、シャウトの部分、コーラスをやってくれと言われたので、どうやってやろうかなと思いました。聴いてくれる人みんなにビックリしてほしいから、自分でできる範囲でやるんじゃなくて、振り切らなきゃいけないと思いましたね。

Tacky21A_掲載


●大きな決心をして今回の制作に臨んだんですね。
Miney:もう7周年でしょ。新バンドだな、っていう気持ちですね。
Mashoe:大きいターニングポイントを自分たちで作ろうと思ったんです、楽しくやりたいから。

●レコーディングも、ちょっと違う気持ちで臨めたり?
Tacky:コロナ禍になってからスタジオでレコーディングすることがなかったので、そういうのも含めて気持ちが違いましたよね。曲調も全然違うから、選ぶギターも全然違ってくるし。新鮮でしたね。そういうのはプレイにも出るだろうし、楽しんでできました。
Miney:歌は全然違いますね。今までは、エールを送るとか優しさを包み込むとか、楽しさを共有するとか、そういう気持ちで歌っていたけど、今回はかかってこいとか、この空気を俺が掌握してやるという気持ちですよね。その気持ちをどう表現していくかを考えると、声の目つきっておかしいけど、

●声に顔がついてるとしたら、っていうことですよね。
Miney:そう。目つきが全然違う。

●Mashoeさんはコーラスもあったわけですが、レコーディングはいかがでしたか。
Mashoe:まず、ベースの機材が全部違いましたね。自分のアンプだとちょっとブリティッシュ感が抜けないんで、スタジオでアンプやエフェクターも借りたり、ジャズベースを弾いてみたり。プレイは難しいことをやってるわけじゃないんで、気持ちが入ればOKでしたけど、コーラス録りのほうが不安でしたね。

●Mashoeさんの声だとわからなかったので、誰か入れたのかなと思っいました。
Miney:新メンバー?
三人:(笑)

●いやいや、ゲストヴォーカルみたいな。それぐらいわからなかったんです。
Mashoe:それがねらいなんですよ。これまでにないイメージでビックリさせたかったんです。でも、これしかできないから、それをカッコよくしようとしました。

●歌詞では、“Bark”という言葉もそうですけど、攻撃的なイメージを出したかったんですか。
Miney:叫んでいるんですけど、閉塞感があるんです。足踏みしているけど、勇み足のようにも思えるというか。そういう心情とメッセージですよね。それは、コロナ禍の今の自分たちでもあって。もとに戻りたいという気持ちでもあるし、もとに戻ったところでゼロになるだけだからもっと先の未来を作りたい。でも、では何をすればという思いが詰まってるんですよね。

●未来が見えない、まさに今の状態なんですね。
Miney:でも、一歩を踏み出す気持ちはあるんですよ。その気持ちが大事なんです。今はまだ何に命を賭けていいのかわからないけど、賭ける命は確実にここにあることを意思表明としてみんなに伝えたいんですね。だから、吠え続けるよ、ここで命を燃やしてるよって。まだライヴに来れない子たちや、ライヴで思うように動けない子たちのためにも、俺たちが命を燃やしてるところをちゃんと見せておかないとね。そうでないと帰って来れないんじゃないかなとも思うし、帰ってきたときに意外とつまんない場所だったなとは思わせたくないし。そのためには、やっぱり一歩進んでないといけない。そういう気持ちが、この歌詞にはあるかなと思います。

気持ちは、新バンド

Mashoe_21A_掲載

●カップリングの「ベンガルタイガー」は、「Bark in the Garden」と組み合わせることを踏まえて作ったんですか。
Miney:ほぼ同時にできてるんですけど、カップリングにするかどうかはみんなで話し合いました。ファンのみんなと一緒に作り上げた「文房具」とか、他の候補もあったし。ライヴを考えて、「Bark in the Garden」と同じような色みのものとして「ベンガルタイガー」は作りましたけど、収録するかはどうしようかなと思ってました。
Tacky:最初は、「文房具」にしようかという話でしたね。

●「文房具」だと、作品の印象も意味合いも全然違うものになりますよね。
Miney:そうしちゃうと、「Bark in the Garden」の方向性が企画ものとして終わってしまうんじゃないかとも思いました。
Tacky:その話をした直後ぐらいに、「ベンガルタイガー」のデモをもらって、これでしょってなりましたね。

●まず、このタイトルはどこから出て来たんですか。
Miney:寅年だから。

●ええ?
Miney:俺が寅年だから(笑)。去年は丑年だったんで、「ビーフシチュー」という曲を作ったし。
Mashoe:去年、僕が年男だったから(笑)。
Miney:ふざけてるつもりはないですよ。
Tacky:いい曲になってるもんね。

●曲はカッコいいんですけど、斬新というかインパクトのあるタイトルですよね。
Miney:配信をするときに、「食べ物シリーズ」とか、いろいろ縛りを決めてセットリストを作ってたんです。それで十二支を考えたのがきっかけかな。トラがないと思って、Bから始まる曲のタイトル一覧の中にベンガルタイガーがあったから、「ベンガルタイガー」になりました。

●そこから、歌詞に言葉遊び的なものを入れようと?
Miney:そうですね。でも、ちゃんとそこに自分のメッセージがあることが大事だし、「Bark in the Garden」と伝えたいメッセージ的にはあんまり変わらないです。

●トラという動物のイメージのせいか、「Bark in the Garden」みたいに箱庭にいるというより、もっと外へ遠くへ行けそうな印象があるのかなと思いました。
Miney:ちょっと行動的なのかな、少し人の手を導いてるところまで行けそうかな。

●あ、でも、“じれったい”のか。
Miney:そうそう。“じれったいが…”って言いたかっただけなんですけど(笑)。

●こう言うとふざけた曲だと思われそうですけど、カッコいい曲ですよね。この2曲を聴いたファンから、どんな反応が返ってくるか楽しみですね。
Miney:「Bark in the Garden」は、もうライヴで2、3回やってるんです。曲の前のMCで、“スイッチを入れろよ!”って、前振りはしてるんですね。実際、初めて演奏したときから、彼女らのスイッチの入れ方が半端なかったから、さすがだなって思いました。

●今のThe Benjaminのポップな曲が好きなファンの方も、ヴィジュアル系が好きな人にとっては、わかる~っていう感じでしょうからね。
Mashoe:こういうのもあるよね、っていう風に思われるといいんですけど。

●The Benjaminのファンの方ならそうじゃないですかね。あれ?って思われるとかも考えてましたか。
Miney:ちょっと考えました。ただ、気持ちは新バンドだからいんです。

●新バンド、とまで言っちゃうんですね。
Miney:気合いを見せたいから。コロナだからって腐っちゃいないよって。
Mashoe:キャリアに寄りかかりたくないですしね。

●そういう意味での新バンド。
Miney:そう。まだまだたくさんの人に広げたいんんですよ。過去の曲も愛し続けてるから、ここまで7年間のThe Benjaminの曲ももっと知ってもらいたいんです。そこにつなげたい気持ちもあるから、今回のシングルは自分たちに入るルートを増やしてみたということかもしれないですね。

みんなが帰ってくる場所を守る

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●3月からは、まずイベントツアーですね。
Miney:僕らが所属してるレーベルが今年で10周年になるんです。賑やかにお祝いしたいんで、全所属バンドが派手に動こうという気持ちを持ってるんです。それで、The Benjaminの活動もこれまで以上に力が入ってるんですよね。ツアーも派手にやってやろうと思ってます。

●そして、7周年のワンマンライヴが5月7日に決まっています。ワンコインのビギナーズチケットを設定したのは、初めて観る人にも気軽に来てほしいという気持ちから?
Miney:新バンドなんで、そこは考えました。5周年と6周年の記念ライヴができなかったから、今までのファンの子と7周年をお祝いしたい気持ちはもちろんあります。さらに、より多くの人たちに俺たちを知ってもらうためのビギナーズチケットなんです。

●バンドって楽しいことばかりじゃないのが現実だと思うので、また新バンドだ~って盛り上がれるのはすごいなって思います。経験を積むと臆病になるとも思うから。
Tacky:あくまで気持ちの新バンドだから、本気でやれるし楽しめるし、恐いものがないんですよね。あくまでThe Benjaminの作ってきたものも大事にするわけなんで。新バンドだと言ってやるとなったら、俺たちみたいな人間は本気でやろうってなるんですよ。

●そんな状態で7周年を迎えられるのは素敵ですね。
Tacky:7周年ライヴは有観客でやる予定なので、嬉しいですよね。
Miney:やる気しかないんですよね。あ、間違った(笑)。行動も伴ってるんですけど、いい意味でやる気しかないというか。よほどいい題材を三人で共有できてるんじゃないかなと思います。

●これだけライヴが決まっていますが、毎週金曜日の配信についてはどうするんですか。
Miney:金曜日のスケジュールが空いていれば続けていきます。ライヴスケジュールを入れているのは、油断してるわけでも、もう安全と思ってるわけでもなくて、みんなが帰ってくる場所を維持したいからなんです。配信もライヴに来れない子たちの居場所だし、金曜日が空いているときは配信も続けます。しばらくはディスコグラフィ的に過去の作品ごとのセットリストなんで、The Benjaminを知らない人は、無料で観られるんでぜひ観ていただきたいです。

読者プレゼントのために、CAN MAKE TOKYOのマニキュアから、気になる色をセレクトしていただきました。三人が選んだマニキュア&それぞれのサイン入りメッセージカード(ホワイトデーのお返しのイメージ)のプレゼント応募と、『バレンタイン&ホワイトデーの思い出』インタビューは、以下から。(応募締切は3月13日)

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