見出し画像

【詩】鍋

あしたの夕方に
とても大事にしてくれた人がいなくなって
つめたい夜が来るから
豆乳鍋をひとりでつつきながらわたしは
初めて、自分が本当は何をしたいのか考え始める
冬の雨が襲ってきて
濡れたシャツやタオルケットをあわてて浴室に取り入れていて
たぶんもっとあかるく普通になりたいと言うのは
はんぶん本当ではんぶん嘘
母とおとうとを
泣きながら挽き肉機にかける夢をみながら
わたしはハグミーハグミーと叫んでいる
まだ見ぬこいびとだかしんゆうだかマリアさまだか
それとも無表情な父親に
黙ってにっこりとわたしは差し出すだろう
ポン酢をどうぞ






             詩集「スパイラル」 
              モノクローム・プロジェクト刊
                    2017/4/10

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?